第8回「その土地のことを感じ取って感動できるワインを造りたい」
掲載日:2022年4月20日
その土地のことを感じ取って感動できるワインを造りたい
田口 西畑さんが目指しているのはどんなワインですか?
西畑 ブドウが育っている産地とか、その土地のことを感じ取って感動できるワインを造りたい。そして、造っている側も楽しくやりがいをもって取り組みたいです。
ワイン造りに関してはシンプルにいきたいと思っています。テクニカルなことを突き詰めて…とは考えていません。できるだけ畑で仕事をして、ブドウに今年の天気や土地の記憶を溜めて、それをそのままワインにできたらと。昔も今も変わらない健全なブドウの粒だけを入れるというこだわりは繋いでいきたいですね。
栽培においては、有機じゃないといけないというよりは、もっといい栽培方法を見つけていきたい。私達が有機栽培や減農薬栽培を実践することで慣行農法じゃないやり方を契約農家さんたちにも知ってもらえたらと考えています。
ソラリスのワイン造りにおいても、自分がこうした方が良いと思うことははっきり意見を言うようにして、みなさんの協力を得ながらやっています。
僕にとってワイン造りとは
田口 西畑さんにとってワイン造りとは?
西畑 自分の生活そのものです。ワインに携わるようになってから人の輪がすごく広がったと思います。
田口 ワイン造りを通して、西畑さんのお友達の輪が世界中に広がったわけですものね?
西畑 はい。ワイン造りは、人生を変えてくれたものですね。普通に考えたらありえないというか。どんどん新しい方と出会えるし。ビールや日本酒とも違いますよね。ワールドワイドという意味でワインてすごいなと思います。
田口 ワインを1人で1本空けることはあまりなくて、だいたい誰かと一緒に飲もうと思いますもんね。
西畑 そうですね。山梨に居た頃は独身だったというのもあって、現地の造り手の方たちと週に5日くらいワインを一緒に飲んで、色々なことを教わりました。夜中まで話したこともたくさんありました。
地球温暖化対策に取り組んでいきたい
田口 今後のワイン造りで新しく取り組んでみたいことはありますか?
西畑 新しく取り組みたいというよりは、「地球温暖化対策をみんなでやっていかなきゃ」ということを発信できたらと考えています。自分に大したことはできないかもしれないけれど、そういう声をあげる人が1人でも多くいるべきだと考えています。
ボルドーでも温暖化のために新しい品種がAOCに登録されたりしていますけど、それは受け身な対応ですよね。イメージとしては、「今までと同じ品種を造れる地球であること」が大切なんじゃないかと。温暖化した後の産地に適する品種を探すんじゃなくて、そうならないための対策をする。このまま温暖化が進んだらワインなんて造っている場合じゃなくなるかもしれませんから。
最近では豪雨に見舞われることが多いですよね。それも温暖化が原因だと言われています。自然災害じゃなくて人災です。自分たちがやってきたことの結果、こういう災害が起きています。何をやらなくてはいけないのかを正確に考えてスピーディーに取り組まなければいけないと思っています。
(おわり)
編集後記
学生時代にソラリスを飲んで感動したことがきっかけで、今や小諸ワイナリーの醸造責任者となった西畑さん。現在の地位に辿り着くまでには、ワイン造りに携われずに悶々とした日々、1日4時間しか眠らずに勉強した日々…たくさんの紆余曲折と限界を超える努力があったことを知りました。
「西畑さんは努力家なんですね」と、何度言っても、「そんなことないです。僕は勉強が好きではありませんから…。」と笑っていらしたのが印象的です。
何事にも手を抜かず、結果を出すために際限ない時間と労力を費やし、西畑さんは大きな目標を達成されてきました。お話していると、私も自分の背筋を正したくなるような気持ちになりました。
長時間の取材を通して、「初志貫徹する真っ直ぐな心」で目標に挑み続けることの大切さを教えていただきました。
SOLARIS(ソラリス)とは、ラテン語で「太陽の」という意味。陽光をたっぷり浴びて育つ良質のぶどうだけを使う、というマンズワインの品質主義への思いを込めた言葉だそう。
太陽のようにパワフルで大らかな西畑さんがリーダーとなり、マンズワインや契約農家のみなさまとこれからどんな素晴らしいワインを生み出していかれるのか…楽しみでなりません。
コルクについて説明してくれる西畑さん
この記事の著者 / 編集者
田口あきこ(日本ワインなび編集長)
ホームパーティが好きなことから、より良いおもてなしをするためにワインを学び始める。
2015年 ワインスクール『レコール・デュ・ヴァン』の講師に抜擢。
2018年 ワイナリー経営者を育成する学校『千曲川ワインアカデミー』にてブドウ栽培・醸造・ワイナリー経営について学ぶ。
2020年『日本ワインなび』を開設。
2021年 JETROに附置する農林水産省・食品の輸出・プロモーション機関の事業で日本ワインの認知業務に携わり、海外向けに日本のワイナリー紹介記事を執筆。
2024年より千曲川ワインアカデミー倶楽部公式HP『生産者ストーリー』執筆。
同年 北海道余市町登に3.4haの農地を取得し、vineyard開設中。
日本ワイン検定出題作成委員
LDV日本ワインLover講座主任
・ワインスクール『レコール・デュ・ヴァン』講師紹介ページ
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