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マンズワイン株式会社
マンズワイン小諸ワイナリー醸造責任者
西畑徹平さんに学ぶ
「初志貫徹する真っ直ぐな心」
(全8回)

第4回「ボルドー大学にてワイン醸造士国家資格取得」

掲載日:2022年4月20日

ボルドーの名所・ブルス広場

田口 ボルドー大学時代のお話を聞かせてください。お住まいはどの辺りだったのですか?

西畑 当時はぺサックに住んでいました。シャトー・オー・ブリオン(※1)の畑のすぐ近くでした。オー・ブリオン自体が街中といえば街中なのですが静かでいいところでした。

求められる高いレベルのフランス語

田口 大学では学生は国内と海外からの方とどういった方が多かったですか?

西畑 フランスの学校なのでヨーロッパ系が多かったですね。イタリア、スペイン、レバノンの人とか仲良くなりましたね。アジアの人は少なかったです。求められるフランス語のレベルが高かったので、アジア人は殆んどいなかったのだと思います。

田口 入学にはどれくらいのレベルのフランス語が求められるのですか?

西畑 お互いに緊張しないでネイティブスピーカーと 自然かつ流暢にやりとりができるくらいのレベルと言われています。

田口 それは大変ですね。西畑さんは渡仏の1年前からフランス語の勉強を始められたとのことですから、私には想像がつかないくらいご苦労されたこととお察しします。


ボルドー大学ISVV(ブドウ・ワイン科学研究所)
日仏文化協会HP『ボルドー大学ISVV(ブドウ・ワイン科学研究所)』(株式会社 日仏文化協会)より出典

猛勉強した日々

西畑 色々大変でしたけど、ボルドー大学ではワイン造りに直接関わらない勉強が難しかったですね。醸造技術や栽培技術でない部分です。マーケティング、経済、歴史、生物学的な分析、これが何より大変でした。
 
例えば、或る冬の1日をお話しますね。冬は日が短くて、朝8時から夕方6時まで学校がありました。学校に着いてもまだ暗かったり、朝日が出てきたなっていうところだったり。夕方出てくるともう暗くなっています。
 
1日6時間、経済の授業なんていう時もありました。6時間ずっと寝ないで話を聞いていても、フランス語の壁があって理解するのに苦労しました。帰宅した後は、娘が小さくて邪魔しにくるから、娘が起きている時は仮眠して、寝たら勉強していました。休みの日は朝から晩まで勉強やっていたり。

田口 西畑さんは本当に真面目な方なんですね。

西畑 卒業できなかったらやばいなと思って必死にやっていただけです(笑)

田口 やはり深夜2時3時まで勉強されていたのですか?

西畑 いえ、もっと酷かったです。あまりにも寝ない日が続いて調べたら「1日4時間半眠れば大丈夫」という記事をインターネットで見て。それで安心してずっと勉強していました。テスト前は1か月ワインを飲まないこともありました。飲むと勉強できなくなってしまうので。久しぶりに口にしたワインがテイスティングのテストだったり。
 
行っていた時は本当に辛くて、自分が本当にワイン好きだったのかなと疑問視してしまう時もありました。でも日本に帰ってくると辛かったことは忘れてしまって、楽しいことしか覚えていない。自分は都合のいい人間なんだなと思います(笑)


ワイン醸造士国家資格証明書(西畑さんより提供)

シャトー・ラ・ラギューヌでの研修

田口 ボルドーではどこかのシャトーで研修されることはあったのですか?

西畑 シャトー・ラ・ラギューヌ(※2)で研修しました。有機栽培の圃場が約120ヘクタールあるシャトーです。

田口 現地では1日のサイクルはどんな感じだったのでしょう?

西畑 研修は7月頃から12月までの約半年間で、その間は基本的に毎日シャトーへ行き研修をします。その間に修士論文を書くための実験や分析を行いデータを集め論文を書きます。
 
朝、シャトーの入り口の門をインターホン越しに連絡し空けてもらい中へ入るのですが、ちゃんと通じるか不安で毎日そこが一番緊張しました!
 
研修中のワイン造りに関する作業自体は日本ですでに経験があったのでそれほど難しくなく、いろいろな改善、起こった問題に対する対策の考案などもメンバーの輪に入り出来ていたと思います。4〜5人の醸造のメンバーと休憩時間にカフェを飲みながらショコラティン(パン オ ショコラ)を食べたりするのが日課でした。
 
昼は醸造の人も栽培の人も一緒に食べましたが、皆はテレビでクイズ番組を良く見ていて、私はほとんど判らなかったのを覚えています。
 
昼休みも充分な時間があったので、隣接の畑を散歩したりシャトーの敷地内の森の中でヘーゼルナッツを拾ったり、キノコを探したりもしていました。
 
日の出や夕暮れのメドックの景色を見たり、いろいろな畑へサンプリングに行ったり、メドックのあちこちをうろうろできたことも今思えば夢のような経験だったと思います。

田口 ところで、修士論文ももちろんフランス語で提出されたのですよね?

西畑 はい、そうです。修士論文を書くためにシャトーと一緒に研究をするんです。シャトーが新しい試験をするからそれを一緒にやりましょうという感じです。論文の内容と言うよりもフランス語で文章を書くことが私にとって非常に難しい難題でしたが、シャトーの方や現地で知り合った友人などに非常に助けられ、おかげさまで無事に卒業することができました。
 
しかし、論文提出が確か年明けすぐの1月5日という感じだったので人生で一番重たい年末、年始を過ごしたような気がします。

(つづく)

※1 シャトー・オー・ブリオン(Château Haut Brion)…ボルドー地方のグラーブ地区に位置するシャトー。メドック地区外のシャトーだが、当時からその評価が圧倒的であったため、唯一の例外でメドック格付1級に認定された。

※2シャトー・ラ・ラギューヌ(Château La Lagune)…ボルドー地方のオー・メドック地区に位置するシャトー。メドック格付け3級。

この記事の著者 / 編集者

田口あきこ(日本ワインなび編集長)

ホームパーティが好きなことから、より良いおもてなしをするためにワインを学び始める。2015年にワインスクール『レコール・デュ・ヴァン』のインストラクター養成講座にて講師に抜擢。
2018年 ワイナリー経営者を育成する学校『千曲川ワインアカデミー』にてブドウ栽培・醸造・ワイナリー経営について学ぶ。
2020年『日本ワインなび』を開設し、編集長として運営を行う。
2021年 JETROに附置する農林水産省・食品の輸出・プロモーション機関の事業で日本ワインの認知業務に携わり、海外向けに日本のワイナリー紹介記事を執筆。
ワインスクール『レコール・デュ・ヴァン』講師紹介ページ
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