日本ワインなび

日本ワインの魅力を総合的に発信するサイト

日本ワインを支える人たちを訪ねて
心熱きプロフェッショナルに学ぶ人生の道しるべ

マンズワイン株式会社
マンズワイン小諸ワイナリー醸造責任者
西畑徹平さんに学ぶ
「初志貫徹する真っ直ぐな心」
(全8回)

第7回「先人の試行錯誤の結果を踏まえて、より良く造っていく」

掲載日:2022年4月20日

マンズワイン小諸ワイナリーのメルロ(2021年7月18日)

ソラリスの畑を眺めながら

西畑 小諸ワイナリーではメルロ、シャルドネ、カベルネ・ソーヴィニョン、信濃リースリング、ソーヴィニョン・ブラン、その他色々と育てています。メルロとシャルドネが主力です。では畑に行ってみましょう。

田口 暑い中ありがとうございます。よろしくお願いします。

西畑(ワイナリー隣の畑に着いて)一枚畑としてはここが一番大きくて、1.4ヘクタールあります。ちょうど除葉の作業が終わったところです。

田口 わぁ、メルロがたわわに実っていますね。紫に色づく前もきれいですね。

傾斜の上の方がより濃いワイン、強いワインに

西畑 もともとここは段々畑の田んぼでした。一枚畑と言っても傾斜の下の方は樹勢が強く、上の方が弱いんですよ。

田口 養分や水分が下の方に流れていくからということですよね。樹勢に反比例してブドウの実にも差が出るということですよね?

西畑 上の方が房も粒も小さくなるので、より濃いワイン、強いワインにになります。それが飲みやすいか飲みにくいかは別の話ですけど。

凝縮感のある果実を求めて

西畑 (ブドウの房を指さしながら)昔はこういう風に大きくなったら切り詰めて、凝縮感があるブドウを収穫しようと試みていました。でも、落とし過ぎると残ったブドウの一粒一粒が大きくなってしまうことが分かりました。

田口 凝縮感を得るのであれば、基本的に粒は小さい方がいいわけですものね。現在はどうされているのですか?

西畑 一枝に一房ずつにして、房の肩の部分は熟しにくいので落とします。でも下の方を落とすほどには切り詰めません。

田口 一房一房の残し方にも細かい工夫や配慮がなされているのですね。

先人の試行錯誤の結果を踏まえて、より良く造っていく

西畑 切り詰め過ぎると粒が大きくなってしまうというのは、今までやってみたからわかったとです。ソラリスが造られ始めて20年。できることは全部やって品質をあげていこうという考えた方でした。今はその結果を見て、よりよく造っていこうという考えです。

田口 ソラリスには20年の歴史があるのですね。そのずっと前からブドウの樹は植えられていたでしょうから、樹齢が高い樹があるのもこちらの強みですよね。

西畑 小諸のマンズレインカットを使用した契約栽培のブドウはほぼ樹齢30年以上です。自社畑のシャルドネには40年以上のものもあります。こういったかけがえのない財産を今まで管理してくれていた先輩達に感謝しています。

ブドウ栽培の苦労 ー長い梅雨で根が窒息する事態にー

田口 こちらの畑からはどれくらい収量がありますか?

西畑 多ければ10トンとれます。でも去年は5トンしかとれませんでした。

田口 何が原因だったのですか?

西畑 去年は梅雨が長くて、根が窒息してしまったんです。水はたくさんあるのに吸い上げられない状況でした。

田口 水はたくさんあるのに…どういうことですか?

西畑 通常でしたら、梅雨の時期でも時折晴れ間があって、土が乾きます。でも去年は全く乾きませんでした。ブドウの根はある程度空気を或る程度吸っているので。掘ってみたらそこに水が溜まっているという状況でした。

田口 それで窒息状態になったということですね。ブドウの果実にも影響が出ますよね?

西畑 根っこから水を吸えないので、ブドウの実の中にある水分を葉が吸ってしまうんです。すると、ブドウが萎んでしまうんです。急に暑くなったりしてもそういう状況になることがあります。

田口 ブドウが窒息するほどの梅雨は今までもご経験されたことがありましたか?

西畑 いえ、初めてのことでした。今年はとりあえず梅雨が明けてよかったです。まあ、でも大なり小なり毎年何かあります。花が咲くのが遅かった房は病気になりやすかったり…これからの季節こわいのは雹ですね。当たってしまうと粒が傷ついてしまいます。雹がある程度通りやすいところはわかるのですが、絶対にここが通らないということはありません。

田口 このまま無事に色づいて、収穫の時期を迎えられることを祈ります。

(つづく)

この記事の著者 / 編集者

田口あきこ(日本ワインなび編集長)

ホームパーティが好きなことから、より良いおもてなしをするためにワインを学び始める。
2015年 ワインスクール『レコール・デュ・ヴァン』の講師に抜擢。
2018年 ワイナリー経営者を育成する学校『千曲川ワインアカデミー』にてブドウ栽培・醸造・ワイナリー経営について学ぶ。
2020年『日本ワインなび』を開設。
2021年 JETROに附置する農林水産省・食品の輸出・プロモーション機関の事業で日本ワインの認知業務に携わり、海外向けに日本のワイナリー紹介記事を執筆。
2024年より千曲川ワインアカデミー倶楽部公式HP『生産者ストーリー』執筆。
同年 北海道余市町登に3.4haの農地を取得し、vineyard開設中。
日本ワイン検定出題作成委員
LDV日本ワインLover講座主任
ワインスクール『レコール・デュ・ヴァン』講師紹介ページ
Facebook
note

この記事をシェアしませんか?

LINE
日本ワインを支える人たち
株式会社ヴィラデストワイナリー代表取締役 兼 日本ワイン農業研究所株式会社「アルカンヴィーニュ」取締役 小西 超さんに学ぶ「志を高く持って生きる」(全8回) 株式会社テールドシエル代表取締役 池田岳雄さんに学ぶ 「自分の意思を貫く生き方」(全10回) ヴィンヤード『carraria(カラリア)』 トラストアンドアソシエイツ株式会社 代表取締役 中村大祐さんに学ぶ「自分の人生を大切に生きる勇気」(全7回) ヴェレゾンノート 東山ワイン研究所合同会社 櫻山記子さんに学ぶ「如何なるハードルにも正面から挑むタフな精神力」(全6回) 駒園ヴィンヤード株式会社 取締役社長 近藤修通さんに学ぶ「愛情を持って、謙虚に相手の声に耳を澄ます」(全10回) 株式会社ジオヒルズ ジオヒルズワイナリー醸造責任者 富岡隼人さんに学ぶ「未来へ繋げる視野と行動力」(全7回) 農地所有適格法人 株式会社 自然農園グループ ドメーヌ・イチ 代表取締役 上田一郎さんに学ぶ 「自分らしく、自然体で生きる」(全8回) 株式会社ショーナン 代表取締役 田中利忠さんに学ぶ「チャンスを受け入れる力・夢を描く力・実現する力」(全5回) マンズワイン株式会社 マンズワイン小諸ワイナリー醸造責任者 西畑徹平さんに学ぶ「初志貫徹する真っ直ぐな心」(全8回) 前小田原市長 加藤憲一さん率いる小田原ワインプロジェクトの皆さんに学ぶ「人の力」(全6回) 合同会社たてしなップルワイナリー工場長 井上雅夫さんに学ぶ「一期一会の精神でチャレンジする」(全8回) 日本ワインを支える人たちを訪ねて 国登録有形文化財 児玉家住宅 児玉寧さんに学ぶ「逞しく生きるための術」(全6回) テールドシエルワイナリー 栽培醸造責任者 桒原一斗さんに学ぶ「謙虚な姿勢で、一生勉強」(全8回) 有限会社萬屋酒店 高橋 憲・里栄ご夫妻に学ぶ「造り手の気持ちを伝えたい」(全8回) Domaine Bless 本間裕康・真紀ご夫妻に学ぶ「夫婦で力を合わせて『あったらいいな』を実現」(全9回) ドメーヌ・モン代表 山中敦生さんに学ぶ「人に優しく、自分にも優しく」(全7回)
テイスティング 日本ワイン×お家レシピ 日本ワインの基礎知識