第6回「小諸ワイナリー醸造責任者に抜擢」
掲載日:2022年4月20日
マンズワイン小諸ワイナリーとソラリスの畑
ようやく本腰を入れてワイン造りができる
田口 帰国後2018年から、小諸ワイナリーのソラリスの栽培・醸造責任者に抜擢されたそうですね。ソラリスに関わりたくてマンズワインに入社されて、遂にご自身が責任者になるなんてすごいですね。当時はどういう心境だったのでしょう?
西畑 ようやく本腰を入れてワイン造りができるな、という心境でした。正直なところ、フランスに行く前は行くか行くまいか悩んだこともありました。当時は小諸に来て3年が経ったところでした。2010年、2011年、2012年と醸造して。そこで一度現場を離れてしまうと、その経験が途切れるような気がしたんです。
ワイン造りというのは繋がりがあります。日本を離れるということは、仕込んだワインを瓶詰までできずに行くことになります。自分がいない間、気候がどうだったとか、産地の様子のことも完全に抜けてしまいます。
そんな時、色々な造り手の方たちに相談しました。ヴィラデストワイナリーの小西超さんにも話を聞いてもらったりして。「行けるなら、行かせてもらった方がいいんじゃない?」なんて背中を押してもらいました。
田口 渡仏を決められる時にはそんなエピソードがあったのですね。
改めてスタート地点に立つ気持ちで
田口 小諸ワイナリーの醸造責任者になることは、改めてスタート地点に立たれるような心境だったということですね。
西畑 そうですね。それから、焦りがありました。他の人に比べて経験が少ないわけですから。
田口 3年間、フランスでワイン造りを学ばれて、ボルドーで醸造士の資格まで取得されて、一般の方からみたら、「ワイン造りのエリート」のように思っていましたが、ご自身はそんな風に思われていらしたのですね。
西畑 仕込みは1年に1度しかできませんから。毎年同じブドウがとれるわけじゃなく、年によって違うので違う対応をしなくてはならない。
田口 2021年の今現在はどんな心境でワイン造りをされているのでしょう?
西畑 楽しいです。ワイン造りに関していえばかなり充実しています。しかしいつの間にか年をとってしまい、管理職になると部下の面倒もみなきゃいけないなぁとかそんな事も最近は考えたりしています。
田口 西畑さんは部下の面倒見も良さそうですね。
西畑 いえ、僕はそういうのはあまり得意ではないんですけど、頑張ろうとは思っています。
田口 西畑さんは現場の仕事をしていたいタイプなんですね。初志貫徹する方なんですね。
西畑 はい、決めたらやりきりたいですね。
オフ日の過ごし方
田口 取材でみなさんに伺っていることなのですが、お休みの日は何をされているのですか?
西畑 自宅の周りも畑にしているのでその世話をしています。
田口 え?ご自宅でもブドウ栽培をされているということですか?
西畑 はい。ドイツで交配された耐病性が強い品種を今年植えたところです。実験ですね。
かなりマイナーな品種で、ドイツでは50年前に植えられていたけど、あまり広がっていないみたいです。
田口 ストイックですね…。見習います。
西畑 ブドウ造りにおいては消毒など病気の世話が大きな手間になっているので、手間があまりかからないブドウが見つかれば、環境にも影響が少なく、もっとブドウ造りがやりやすくなるだろうと思いました。それで自宅で実験的に栽培しています。
田口 この地に合った育てやすい品種が見つかると良いですね。西畑さんはお休みの日も現場のことをやっていたいんですね。
西畑 そうですね。僕は会社員なので、いつか現場を離れなきゃいけない時がきます。その時にモチベーションを保てるように…。そんな意味もあって畑をやっています。そういう意味で現場からは一生離れられないのかもしれないです(笑)
(つづく)
この記事の著者 / 編集者
田口あきこ(日本ワインなび編集長)
ホームパーティが好きなことから、より良いおもてなしをするためにワインを学び始める。
2015年 ワインスクール『レコール・デュ・ヴァン』の講師に抜擢。
2018年 ワイナリー経営者を育成する学校『千曲川ワインアカデミー』にてブドウ栽培・醸造・ワイナリー経営について学ぶ。
2020年『日本ワインなび』を開設。
2021年 JETROに附置する農林水産省・食品の輸出・プロモーション機関の事業で日本ワインの認知業務に携わり、海外向けに日本のワイナリー紹介記事を執筆。
2024年より千曲川ワインアカデミー倶楽部公式HP『生産者ストーリー』執筆。
同年 北海道余市町登に3.4haの農地を取得し、vineyard開設中。
日本ワイン検定出題作成委員
LDV日本ワインLover講座主任
・ワインスクール『レコール・デュ・ヴァン』講師紹介ページ
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