日本ワインなび

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心熱きプロフェッショナルに学ぶ人生の道しるべ

駒園ヴィンヤード株式会社
取締役社長 近藤修通さんに学ぶ
「愛情を持って、
謙虚に相手の声に耳を澄ます」
(全10回)

第10回「国際的に認められる産地を目指して」

掲載日:2021年6月1日

僕が目指すワイン

田口 近藤さんが目指しているのはどんなワインですか?

近藤 山梨のテロワールが国際的に評価されるワイン造りをしていきたいです。カリフォルニア、チリ、アルゼンチン、ニュージーランド、オーストラリア、今はどこも国際的に認められている産地になっています。そこの個性やテロワールが評価されている。日本ワインもそうなりたいなと思います。

産地として評価されるように

近藤 「僕のワイン造り」というよりも「産地としての山梨、日本」、そういう風に評価されるようになったらいいなと。みんなで助け合って頑張って良くしていこうという考えです。そうじゃないと地域個性は成り立たないですよね。1社だけが突き抜けているというのはあり得ないと思います。大枠で目的意識を共有するという意味で、切磋琢磨をしないといけない。お友達じゃなくてライバル。この世界、ついお友達になりがちなんですけどね(笑)

十人十色、色々な考え方や手法が有って、正解が無いのがワインだと思います。自分と違うコンセプトを持つ栽培者や醸造家のお話を聞く事も大切ですね。

「一期一会」を大切にすることで表現できる

田口 駒園ヴィンヤードのコンセプトは「一期一会」とのことですが、近藤さんのワイン造りへの想いと共に詳しくお聞かせいただけますか?

近藤 ワイン造りは自然が相手です。同じ畑であっても毎年ブドウの個性が違います。ワイン造りに正解はありません。そして、ワインは人のエゴや科学で作り込む物ではなく、「ブドウの個性を最大限に活かす事」、「科学的な栽培や科学的な醸造では得られないワインの美味しさと個性」は、その年のそのブドウとの出逢い「一期一会」を大切にすることで表現できると考えています。

田口 山梨の中だけでもそれぞれのテロワールがありますものね。それらを感じられるワインを日本の消費者も求めるようになってきているのではないでしょうか。

近藤 山梨は一番低くても標高250m、高いところだと富士五湖の辺りは1,000m超えていても平らなところがあったりと、山梨は起伏に富んでいます。そしてそれぞれの土壌も違い、それぞれの個性があります。

ワインはレプリカではない

近藤 外国の科学者や技術者の方が来ると、「こんなところで良いワインができるわけない」って言われがちです。でもテロワールってそういうものではありません。僕はそう思います。駒園、川窪、竹森、西野、山梨…、日本中どこへ行ってもブドウは育ちます。その土地の個性を生かしたワイン造りをしたいと僕は思っています。

ワインはレプリカではありません。どれだけ好きなワインがあったとしても、同じものは造れないじゃないですか。好きなワインを真似しようとした時期もありました。音楽でも絵を描く人でも、コピーする時期がありますよね。

田口 はい、何かを習得する時には、誰かの模倣をする時期がありますよね。

近藤 基礎があって、コピーして、オリジナリティ。コピーしている時期にしっかりとした技術を覚えて、その後はオリジナリティを出すのか。それとも僕みたいに「自然に任せちゃえ」という風になるのか、色々だと思います。

僕にとってワイン造りとは

田口 それでは取材の最後に聞かせてください。近藤さんにとって、ワイン造りとは?

近藤 息子にも経験させてあげたい仕事です。「農家は大変だからサラリーマンになった方が良い」、とか「役所に勤めた方が良い」と一般的に農家の方たちはよく仰るじゃないですか。でも僕は、「面白いからやってごらん」って思います。
仕事は何をやっても大変ですけど、なかなか良い仕事だと思います。車の仕事をしていてわかったことですが、好きなことを仕事にすると理想が高くなってしまって苦労します。でも仕事自体を好きになれば楽しくなる。「ワインにもともと興味がなかった」と言うとみなさん驚かれますが、そんなもんかなと。今はワイン造りが大好きです。面白いですよ、ワインは言う事聞かないですから。

(おわり)

編集後記

秩父方面から吹き降ろす冷たい風、鳥のさえずり、揺れる草花、逞しく育つブドウの樹々。
「ゆっくりでもいい、時間をかけて成長してくれたら」と畑で微笑む近藤さん。

ありのままが美しく、生命力が漲っている——–。
まさに、「ブドウの個性を最大限に活かし、科学的な栽培や醸造では得られないワインの美味しさと個性」 を生み出す世界がそこに広がっていました。

取材を終えて、「成功に近道はない」「愛情を持って、謙虚に相手の声に耳を澄ます」という2つの大切なことを教わりました。

多くの失敗と経験を重ね、ブドウ栽培とワイン醸造の一つ一つの工程を誠実に取り組んでこられた近藤さん。だからこそ、「極力自然に任せたワイン造り」の境地に立つことができたのでしょう。そして、対外的にも高い評価を得るということを成し遂げられているのでしょう。

いえ、近藤さん風に言えば、「ワイン造りにおける成功」というものは、目的地ではなく、「前進し続けるプロセス」のことなのかもしれません。

そして、相手のことを知るには、愛情と謙虚さを持って、静かに相手の声に耳を澄ますことが必要。傲慢になると相手のことが何もわからなくなるというのは自明の理。
近藤さんに出会うまで、そんなことをじっくり考えたことはなかったかもしれません。

近藤さんのような真摯な姿勢を心掛けたら、
私にもいつかワインの声が聞こえるようになるだろうか。

この記事の著者 / 編集者

田口あきこ(日本ワインなび編集長)

ホームパーティを開催することが多いことから、より良いおもてなしをするためにワインを学び始める。2015年にワインスクール『レコール・デュ・ヴァン』のインストラクター養成講座にて講師に抜擢。
2018年春からワイナリー経営者を育成する学校『千曲川ワインアカデミー(長野県東御市)』にてブドウ栽培・醸造・ワイナリー経営について学び、講師業の傍ら、超新規ワイナリーの立ち上げ・畑仕事のお手伝いにも出掛ける。
2020年『日本ワインなび』を開設し、編集長として運営を行う。
ワインスクール『レコール・デュ・ヴァン』講師紹介ページ
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