日本ワインなび

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駒園ヴィンヤード株式会社
取締役社長 近藤修通さんに学ぶ
「愛情を持って、
謙虚に相手の声に耳を澄ます」
(全10回)

第2回「多くの失敗と経験を重ねて」

掲載日:2021年6月1日

甲州種の展葉(駒園圃場)

独学で始まったワイン造り

田口 ワイン造りという全く新しい世界で働かれてみて、初めのうちはいかがでしたか?

近藤 入社したワイナリー(A社)では、その時ちょうど醸造責任者の方が他社に移籍してしまいまして。指導してくれる技術者が居なくなってしまったんです。僕は全く知識や経験がありませんでしたので、山梨県のワインセンターで本を借りるなどして、独学でワイン造りを学び始めることになりました。

今だから笑える失敗エピソード

田口 独学でワインを学ぶところかスタートされたとは…きっと多くのご苦労があったことでしょう。

近藤 手探りのワイン造りから多くの失敗と経験を重ねました。

田口 失敗のエピソードをお伺いしてもいいですか?

近藤 例えば、澱下げの工程をやらずにワインを白濁させてしまったことがありました。澱が出ることも知らなかったんですよ。今はそういうこともインターネットで色々と調べられるじゃないですか。でも当時はありませんでしたから。
日本では当時(2000年前後)、ワインを加熱して瓶詰するのが主流でした。タンパク混濁といって、ワインは加熱すると直後に白濁します。タンパク処理という工程をやらなかったことが原因で濁ってしまったわけです。今で言う「澱下げ」ですね。卵白、ベントナイト、二酸化ケイ素などを使ってタンパク質を吸着させて澱にしてろ過する工程です。

田口 加熱したことによって白濁してしまったということですね。

近藤 はい。加熱せずに生で詰めていたら美味しかったと思います。あの時は、そういう知識を知らなかったので、「何で濁るのかな…」って不思議に思いました(笑)

駒園ヴィンヤード ワインショップ前の花菖蒲

山梨大学ワイン科学センターでの学び

田口 その後に山梨大学でワイン造りを学ばれたのですよね?

近藤 はい。入社から6年後、山梨大学ワイン科学センター(※1)が、ワイナリーで働いている一般の人を対象にワンシーズンの講座を開講してくれました。そこでようやくワイン科学を専門的に勉強させていただきました。

田口 山梨大学にはどのくらいの期間通われていたのですか?

近藤 週に3日、半年くらい通いました。大学の先生方には科学的な基礎から教えていただきました。僕は一期生でした。最初の年だったので周りは各社の醸造責任者ばかりで。「うちはこうやって造っているよ」という話をみなさんから聞いて、とても勉強になりました。

田口 近藤さんは山梨大学に通われた後、ワイナリー(A社)の醸造責任者になられたのですよね。

近藤 多くの失敗と経験を重ね、科学的知識を得て気が付いたらワイン造りが好きになり、醸造責任者になり、ワイナリーを任されていた、という感じです。

山梨・日本のワインの品質向上とその背景

田口 ワインに関する微生物学や醸造学の基礎研究を行ってきたことや、ワイン科学センターを新設して、更には一般向けにも授業を開講したことなど、山梨大学は日本のワインの品質向上にとって一つの大切な要といえる役割を果たされているのですね。

近藤 はい。それから日本ワインコンクール(※2)がスタートして(2003年)、長野や北海道など他産地の高い品質に刺激を受けました。

田口 他産地と切磋琢磨することになったわけですね。やはりコンペティションも日本ワインの品質向上にとって不可欠ということですね。

近藤 はい。対外的な評価ってある意味で必要じゃないですか。

田口 ワインの品質が上がった背景には具体的にどんな事が挙げられますか?

近藤 例えばブドウ栽培に力を入れるようになったことです。当時、「ブドウは買えばいい」というスタンスが主流で、自社畑を増やそうとしている会社は殆どありませんでした。でも変わってきました。次の世代の人たちが「このままじゃいけない」って思ったのですね。

田口 そのあたりの時代から、自社畑に力を入れるワイナリーが増えてきたということですね。

近藤 はい、それから品質が上がった背景の一つとして、メルシャンさんの功績が大きいと思います。メルシャンさんがリーディングカンパニーとして色々な事を教えてくれています。

田口 ワイン造りを学べる機会を設けてくださるのですか?

近藤 セミナーで講師をしてくださいます。個人的に聞いても、今も可能な範囲で教えてくれます。教えてくださるのは昔からで、経営が何回変わってもそこは変わらないですね。山梨の強みは大手のメルシャンが身近にあることです。そういう大手企業がリーディングカンパニーとして存在することが、日本ワインにとってはすごく大きい。

(つづく)

※1 山梨大学ワイン科学センター…果実酒を専門に研究する我が国唯一の研究機関。我が国のワイン産業の発展に伴い世界的視野に立ち、先端的な細胞工学、遺伝子工学技術を駆使した基盤研究から最新のブドウ栽培並びにワイン醸造の実用研究まで学べる。

※2 日本ワインコンクール…国産ブドウを100%使用して生産されたワインを対象としたワインコンクール。2003年に初開催され、2014年までは国産ワインコンクールという通称を用いていたが、2015年に変更された。

参考文献
山梨大学ワイン科学研究センター公式HP『センターの歴史』
http://www.wine.yamanashi.ac.jp/iev/history.html

日本ワインコンクール公式HP『日本ワインコンクールとは』
https://www.pref.yamanashi.jp/jwine/jwcmain/jwcinfo.html

この記事の著者 / 編集者

田口あきこ(日本ワインなび編集長)

ホームパーティを開催することが多いことから、より良いおもてなしをするためにワインを学び始める。2015年にワインスクール『レコール・デュ・ヴァン』のインストラクター養成講座にて講師に抜擢。
2018年春からワイナリー経営者を育成する学校『千曲川ワインアカデミー(長野県東御市)』にてブドウ栽培・醸造・ワイナリー経営について学び、講師業の傍ら、超新規ワイナリーの立ち上げ・畑仕事のお手伝いにも出掛ける。
2020年『日本ワインなび』を開設し、編集長として運営を行う。
ワインスクール『レコール・デュ・ヴァン』講師紹介ページ
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