第5回「川窪圃場・竹森圃場」
掲載日:2021年6月1日
駒園ヴィンヤード公式HP『産地/VINEYARD』より出典
https://comazono.com/%e7%94%a3%e5%9c%b0-vineyard/
駒園より更に川に近い川窪圃場
田口 川窪圃場についてお伺いしたいと思います。こちらは標高440m、70aということで、駒園圃場の倍近くの広さですね。こちらの圃場にはどのような特徴がありますか?
近藤 川窪は駒園圃場よりもっと川に近いので、更に砂が多いです。駒園と同じく苗がなかなか育たなくて、樹が成長するスピードがゆっくりです。それで凝縮感が高いワインができます。
田口 駒園圃場は甲州のみでしたが、川窪ではピノ・ノワール、シャルドネ、サンジョベーゼ、バルベーラ、ビジュ・ノワールなど、さまざまな品種を栽培されているのですよね?
挑戦したい2つの品種
近藤 現在、改植しているところです。もともとはブラック・クイーン、アリカント、カベルネ・ソーヴィニヨン、メルロも植えてありました。カベルネ、メルロ、シャルドネに関してはリーフロール病(※1)にかかってしまっていたので、いつか更新しないといけないなと思っていました。それで2019年にオーナーが変わったタイミングで植え替えました。シャルドネとピノ・ノワールに関しては僕の造りたい品種です。
田口 どうしてシャルドネとピノ・ノワールを造りたいと思われたのですか?
近藤 それらをトップセパージュと言って良いかはわかりませんが、ブドウを栽培したりワインを造ったりしていると、自然と挑戦したい品種になるんですよ。
それから、せっかく植え替えるのならば、日本ワインでも扱いやすい金額のワインのシリーズを造ろうと思っています。もちろん上のグレードもしっかり造っていきます。
駒園ヴィンヤード公式Instagram『川窪圃場(2020年5月7日)』より出典
https://www.instagram.com/p/B_3vH1ZgsnL/
定植したばかりの竹森圃場
田口 竹森圃場についてお伺いしたいと思います。こちらは標高600m、16a、土壌は森林褐色土、まだ苗を植え始めたばかりとのことですね。他の圃場に比べて標高がだいぶ高いようですが、やはり冷涼な地域を求めて新たな地を開拓されたということでしょうか?
近藤 最近、ワインメーカーがブドウ畑を広げる時、確かに冷涼な地域に広げる傾向がありますよね。それも一つの考え方だと思います。でも竹森圃場の場合はそういう背景があったわけでなくて。
田口 と言いますと?
近藤 ワインメーカーは山間部の耕作放棄地を紹介されることが多いんですよ。そうすると自然と標高が高いところになるわけです。
田口 そうなんですね。お年寄りが「もう農作業はできなくなったから」、という理由で畑を貸すケースもありますよね?
近藤 そういうケースはたくさんありますが、そういう場合、畑自体がすでに出来上がっていてそのまま使えるので、新規就農したい方に話がいくようです。それに、そういう畑は生食用ブドウを植えている場合が殆どです。ワインメーカーが借りるとワイン用ブドウに樹を植え替えてしまうので、貸す方もさみしいですよね。
田口 せっかくなら自分が育てていたブドウを生かしてもらいたいですものね。なるほど、それで手を入れるのが大変な山間部の耕作放棄地が自動的にワインメーカーさんに紹介されるというわけですね。
近藤 はい、間違いなくそっちの傾向です(笑)
1年中電圧を流しておかないといけない害獣対策
田口 竹森圃場は16aということで、他の圃場に比べてかなり小さな区画なのですね?
近藤 はい、小さな区画なのですが、害獣対策のために電気柵で年間25万円から30万円かかります。
田口 外獣対策でお金がかなりかかるとよく聞きますが、かなりの金額ですね。電圧は収穫の時期だけ流しておくのですか?
近藤 いえ、一年中流しておかないといけないのです。
田口 冬でも電圧を流しておくということですか?
近藤 はい、そうです。冬のうちから流しておかないと、ハクビシンなどの小動物がどんどん圃場に入ってきてしまいます。冬の間も草刈りをするので、草が生えてくるんです。草刈りとは、「剪定」なので、刈られたら本能的にまた伸びようとするわけです。だから冬場になると、「餌がある場所」という風に認識されてしまいます。
田口 それで冬でも電圧を流しておく必要があるのですね。
近藤 はい。ちなみに流しているのは6,000ボルトの電圧です。動物が電柵に触れた時、鼻先にピリッとくる程度です。動物って鼻先からいくじゃないですか。鼻先が一番敏感な部分でもあるので、ピリッとなると驚いて近づかなくなります。
(つづく)
※1 リーフロール病…ブドウのウイルス病。秋になると葉巻症状が見られ、有色品種においては葉が赤く変色する。果実の着色が悪くなる、糖度が低くなる、収穫量が減るなどの被害を引き起こす。
この記事の著者 / 編集者
田口あきこ(日本ワインなび編集長)
ホームパーティが好きなことから、より良いおもてなしをするためにワインを学び始める。
2015年 ワインスクール『レコール・デュ・ヴァン』の講師に抜擢。
2018年 ワイナリー経営者を育成する学校『千曲川ワインアカデミー』にてブドウ栽培・醸造・ワイナリー経営について学ぶ。
2020年『日本ワインなび』を開設。
2021年 JETROに附置する農林水産省・食品の輸出・プロモーション機関の事業で日本ワインの認知業務に携わり、海外向けに日本のワイナリー紹介記事を執筆。
2024年より千曲川ワインアカデミー倶楽部公式HP『生産者ストーリー』執筆。
同年 北海道余市町登に3.4haの農地を取得し、vineyard開設中。
日本ワイン検定出題作成委員
LDV日本ワインLover講座主任
・ワインスクール『レコール・デュ・ヴァン』講師紹介ページ
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