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駒園ヴィンヤード株式会社
取締役社長 近藤修通さんに学ぶ
「愛情を持って、
謙虚に相手の声に耳を澄ます」
(全10回)

第3回「樹齢80年の甲州が生き続ける駒園圃場」

掲載日:2021年6月1日

樹齢80年以上の甲州(駒園圃場で最長寿)

田口 近藤さんは2013年からフリーランスになられて、2015年から五味葡萄種に携わられたということですが、どんなきっかけがあったのでしょうか?

近藤 2015年にオーナーの五味さんが体調を崩されたので、手伝って欲しいと連絡がきたのがきっかけです。

田口 そうでしたか。そして2019年にオーナーさんが変わり、社名が「五味葡萄酒」から「駒園ヴィンヤード」になったということですね。

樹齢80年以上の甲州

田口 駒園ヴィンヤードには4つの圃場(駒園、川窪、竹森、西野)があるとのことですが、まず初めに、私が今連れてきていただいている駒園圃場(※1)ついて教えていただけますか?

近藤 駒園は「駒園ヴィンヤード」の社名の由来にもなっており、1952年の創業以前から甲州種を栽培している自社最古の圃場です。標高460m、40a、全て甲州種で、樹齢80年以上の自根の甲州古樹が生き続けています。

田口 自根とはすごいですね。その古樹はどちらにあるのでしょうか?

近藤 オレンジ色でマーキングをしてあるのが樹齢60年以上です。一番あちらの角と、そちらの角にある甲州が80年を超えています。この樹が一番古い甲州種です。(写真:表紙と下)

田口 やはり貫禄がありますね。

接いで、継がれていくDNA

近藤 樹齢が高いので突然芽が出なくなることがあります。いつ枯れてしまうか分からないので、毎年冬になると剪定して枝を取っておいて、苗屋さんに持っていって台を接いでもらっています。自分が新しく植える甲州、契約農家さんに植えてもらう甲州全てにおいてこの樹から取って植えています。

田口 そうやってこの古樹の甲州のDNAは後世にもずっと継がれていくのですね。

樹齢80年の甲州(駒園圃場で最長寿)

地上と地下のバランスを取りながら

田口 近藤さんのブドウ栽培についてお聞かせいただけますか?

近藤 駒園圃場では、2016年から冬の剪定で仕立て直しをしています。駒園圃場は80年も前からやっている畑なので、X字の長梢仕立てでした。それを一文字仕立てにしています。元が長梢なので、ちょうどいいところに枝がなかったり、こんなに太かった樹を一文字仕立てにしたりすると暴れたりしてしまうので、一本ずつバランスをとりながら仕立て直しをしています。

田口 どういう目的があって仕立て直しをされているのですか?

近藤 長梢仕立てはその畑のご主人でないと難しい剪定の仕方が多いんです。元々、たくさん収穫できる畑じゃないので、バランスをとってあげたくて。「地上と地下のバランス」っていうんですけど。

田口 地上と地下のバランスとは?

近藤 地上と地下のバランス、つまり根っこの張り具合と新梢の育ち方、このバランスが取れているといい実ができます。それで全部仕立て直しをしました。そして草生栽培、有機栽培に切り替えました。

草生栽培、有機栽培に切り替えて

田口 草生栽培、有機栽培に切り替えられた背景や目的についてお話いただけますか?

近藤 草生栽培に切り替えたのは、土壌微生物を基にした自然環境の改善と維持が目的です。砂壌土なので養水分保持も草根の役割の一つです。ちなみにここは雑草草生で、季節ごとの草が生えてきます。雑草がないと土壌の生物は住み着く場所がなくなってしまうんです。微生物は草の根っことかついているじゃないですか。つまり、微生物の住処を安定させてあげているわけです。

微生物は植物にとって大事な役割を果たしてくれています。例えば、有機肥料は土壌の微生物が分解して無機質になることで、はじめて植物は栄養を吸えるようになります。

田口 言い換えれば、有機肥料をまいても微生物が分解してくれないと、樹が栄養を吸えないということですね。

自然に一番近い状態にすることで樹の生命力が高まる

近藤 それに雑草がないと肥料をまいても流れてしまいます。草の根っこである程度止めてあげたいわけです。

微生物がいると小動物がきて、その小動物を食べにモグラとかがやって来ます。すると、ところどころにモグラ塚といってモグラが顔を出したあとが残ります。一般的な農家の方だと、モグラが根を荒らすといって嫌がります。でも上は剪定できるけど根は剪定できないですよね。

田口 確かに、根を剪定するなんて考えたことがありませんでした。

近藤 モグラが荒らしてくれるのでちょうど良い剪定になるんです。生態系が整っていることが一番自然に近い状態なので、樹の生命力が高くなるかなと。だから土壌の微生物の環境が整っていることが大事なのです。そういう想いでやっています。

(つづく)

この記事の著者 / 編集者

田口あきこ(日本ワインなび編集長)

ホームパーティを開催することが多いことから、より良いおもてなしをするためにワインを学び始める。2015年にワインスクール『レコール・デュ・ヴァン』のインストラクター養成講座にて講師に抜擢。
2018年春からワイナリー経営者を育成する学校『千曲川ワインアカデミー(長野県東御市)』にてブドウ栽培・醸造・ワイナリー経営について学び、講師業の傍ら、超新規ワイナリーの立ち上げ・畑仕事のお手伝いにも出掛ける。
2020年『日本ワインなび』を開設し、編集長として運営を行う。
ワインスクール『レコール・デュ・ヴァン』講師紹介ページ
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