日本ワインなび

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心熱きプロフェッショナルに学ぶ人生の道しるべ

株式会社テールドシエル代表取締役
池田岳雄さんに学ぶ
「自分の意思を貫く生き方」(全10回)

第6回「自然の厳しさを体感しながら」

掲載日:2020年7月1日

木製の隅柱(テールドシエルの圃場)

1年13か月の農業

田口 ピノ・ノワールに限らず、ブドウ栽培では生産者の方にしかわからないご苦労がたくさんあると思います。その辺りをもう少しお伺いさせてください。
糠地地区でブドウ栽培をすることは無謀だと周りから反対された理由の1つが、「凍害の恐れ」とのことでしたよね。凍害を防止されるためにはやっぱり藁巻きで対応されているのでしょうか?

池田 はい、そうです。私たちの農業はね、1年12か月じゃないんです。13か月なんです。

田口 どういうことですか?

池田 藁巻きで15日、藁外しで15日かかるんです。私どものブドウでも成木になったものには藁巻きしませんけどね。ある程度土を寄せたり対策はしていますけど。それがもう大変で。一番寒いときですから。それを乗り越えて初めて良いブドウができるのだと思っています。

田口 昨年の12月に高山村のワイナリーをいくつか訪問したのですが、凍えるような寒さの中、ご夫婦で藁巻きをされていたところを拝見しました。その時、生産者の方のご苦労を肌で感じました。池田さんのところもご家族のみなさまで行われるのでしょうか?

池田 はい。うちの女性陣が積極的にやってくれました。12月のクリスマスまでに終えようと言いながらやっていました。私が3分の1くらいでそれ以外は家内と娘で。ありがたかったです。

自然と戯れる、自然の厳しさを体感する

池田 そういう作業をやりながら、「自然と戯れている」、「自然の厳しさを体感しながらやっている」という感じです。自分自身にとっても良い刺激になっています。今まで60年間人と接してきた中で、「ぼつぼつ人より自然相手の方がのんびりできるんじゃないか?」という気持ちで還暦を迎えた転機に、自然と戯れればいいかななんて思っていたわけですけど。実際は予想以上に難しいですね。

田口 自然相手で難しいと感じるのはどんな時ですか?

池田 私の意志とは関係なく、毎年何かハプニングがありますからね。台風が来たり、雹が降ったり。そういう災害があるなかで、それをうまくくり抜けてできたブドウは感慨深いです。

一番大変だった自然災害

田口 今まで自然災害で一番大変だったのはどんなことでしたか?

池田 一番大変だったのは集中豪雨です。2019年7月に毎日毎日雨がふって。水が捌けなくて畑がぐちゃぐちゃになってしまいました。そうなると機械が入っていけないんです。

田口 それは大変でしたね。どうやって乗り切られたのでしょう?

池田 明渠(めいきょ)(※1)といいまして、重機で土を掘って流して乾燥させてなんとか乗り越えました。それが一番大変でしたね。それでも消毒をやりたいときにできなくて、収穫量が落ちてしまいました。でもそれが経験・勉強なのかなと。

田口 そういう自然災害を乗り越えて残ったブドウは、「強いから残ることができた」とも考えられますよね?となると、良いワインができるかもしれませんね?

池田 そうですね。2019年ヴィンテージは瓶詰まで終わっています。瓶内熟成が終わってから取りに行こうかと思っているんですけど、いいものができると思います。少量ですけど、逆に自分の苦労を凝縮した何かができる。その都度テイスティングしていたんですけど、日々味が変わってきて。ステンレス発酵・熟成のソーヴィニヨン・ブランとシャルドネは6月中旬からリリースしようかと思っています。樽熟成しているピノ・ノワールとピノ・グリは8月にリリースにしていければいいのかなと。

(つづく)

※1 明渠(めいきょ)・・・外部に露出している排水路

この記事の著者 / 編集者

田口あきこ(日本ワインなび編集長)

ホームパーティを開催することが多いことから、より良いおもてなしをするためにワインを学び始める。2015年にワインスクール『レコール・デュ・ヴァン』のインストラクター養成講座にて講師に抜擢。
2018年春からワイナリー経営者を育成する学校『千曲川ワインアカデミー(長野県東御市)』にてブドウ栽培・醸造・ワイナリー経営について学び、講師業の傍ら、超新規ワイナリーの立ち上げ・畑仕事のお手伝いにも出掛ける。
2020年『日本ワインなび』を開設し、編集長として運営を行う。
ワインスクール『レコール・デュ・ヴァン』講師紹介ページ
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