日本ワインなび

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日本ワインを支える人たちを訪ねて
心熱きプロフェッショナルに学ぶ人生の道しるべ

株式会社テールドシエル代表取締役
池田岳雄さんに学ぶ
「自分の意思を貫く生き方」(全10回)

第5回「手がかかるほど愛おしい」

掲載日:2020年7月1日

ピノ・ノワールにこだわる理由

田口 植えられているブドウ品種の中で、ピノ・ノワールが1番多いとのことですが、やはりピノの愛好家だから植えられたんですか?

池田 美味いなとは思うけど、好きだから植えたわけじゃないんです。

田口 え? ではいったいどんな理由で?

池田 ご存知の通り、ピノ・ノワールは「こんなの植えたら大変だよ」って言われる品種です。それを極めるのが一つのステータスかなと思ったんです。ピノ・ノワールを制すれば自己満足の極限だと。シャルドネは成功して当たり前。ピノ・ノワールは失敗して当たり前。野心家ってほどでもないですけどね。

田口 「日本でピノ・ノワールを植える」と言うと、周りからだいたい反対されますよね。

池田 やめておけと言われても、自分は一つの概念としてピノ・ノワールに魅力を感じて。これが冒険になってもいいと思って始めました。

田口 アカデミー卒業生(※1)では、やはり反対されてもピノ・ノワールをやる方が多いですよね。

池田 アカデミー同期生の中で、「ピノ・ノワール4兄弟」と言われている人たちがいるんですけど、私はそのうちのひとりです。

夢にまで出てくるピノ・ノワール

田口 ピノ・ノワールを実際に育ててみて、やっぱり大変ですか?

池田 はい、大変です。最初の頃、ピノ・ノワールの夢を見ました。ピノ・ノワールの樹を背負いながら逃げる夢なんですよ(笑)作業したくないから逃げるんですけど、逃げても逃げてもついてくるんです。「うなされてるわよ」って女房に起こされて。

田口 ピノ・ノワールを育てる中で具体的にどんなところが大変ですか?

池田 じゃじゃ馬のように暴れるのでしょっちゅう剪定しないといけないし、病気に弱い、雨に弱い。だだっ子をお子守りするような感じで。収穫時に雨が降ると、皮が薄いので腐ってしまいます。シャルドネはこんなに素直なのに、なんでピノ・ノワールはこんなに大変なのかと…。

田口 今でも毎日やっぱり大変ですか?

池田 解決策が分かればなんとか。最近は楽しくやってますよ。農法がわかってきましたから。それとやはり日々の管理をちゃんとしていればできる。栽培は大変なんですけど、その分愛おしく思えて。

今の原動力

池田 ピノ・ノワールは一生涯の夢です。ワイン自体は全部の品種に力を入れてますけど、一番思い入れがあるのはピノ・ノワールです。だだっ子をなんとか一人前にするという気持ちです。それで、今まで嘲笑っていた人たちを見返してやろうと(笑)「シャルドネが一番!」と言っていた人たちにも、やればできるんだなというのを見せたい。それが今の原動力です。

田口 糠地地区を手に入れられた時のように、池田さんはやっぱりご自身を信じて決断され、信念を貫かれる方なんですね。

池田 そうかもしれません。ピノ・ノワールで思い入れのある年のワインを5~6回造りたいなと。それを目標にやっています。

ピノ・ノワールを千曲川ワイン特区の看板に

田口 千曲川ワインバレーでは美味しいピノ・ノワールがけっこうできていますよね。そういうとっておきのピノ・ノワールをワインスクールの懇親会に持っていくと喜んでもらえるんですよ。

池田 千曲川のワイン特区でピノ・ノワールが一つの看板になればいいなと思っています。苦労をして育てたピノ・ノワールが標高220m-950mの色々なところから出てくる。飲み比べてもらって、テロワールによって全然違うというのを楽しんで欲しいです。シャルドネは定着しつつありますが、ピノ・ノワールは切磋琢磨しているところですね。

田口 テロワールの違いを楽しみながらみなさんのピノ・ノワールをぜひ頂いてみたいです。

(つづく)

※1 千曲川ワインアカデミー(日本ワイン農業研究所 アルカンヴィーニュ)…ブドウ栽培とワイン醸造、およびワイナリーの起業と経営について総合的な知識と実践的な技術を学ぶことのできる、日本で初めての民間ワインアカデミー。玉村豊男氏と小西超氏が立ち上げた。

この記事の著者 / 編集者

田口あきこ(日本ワインなび編集長)

ホームパーティを開催することが多いことから、より良いおもてなしをするためにワインを学び始める。2015年にワインスクール『レコール・デュ・ヴァン』のインストラクター養成講座にて講師に抜擢。
2018年春からワイナリー経営者を育成する学校『千曲川ワインアカデミー(長野県東御市)』にてブドウ栽培・醸造・ワイナリー経営について学び、講師業の傍ら、超新規ワイナリーの立ち上げ・畑仕事のお手伝いにも出掛ける。
2020年『日本ワインなび』を開設し、編集長として運営を行う。
ワインスクール『レコール・デュ・ヴァン』講師紹介ページ
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