日本ワインなび

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日本ワインを支える人たちを訪ねて
心熱きプロフェッショナルに学ぶ人生の道しるべ

株式会社テールドシエル代表取締役
池田岳雄さんに学ぶ
「自分の意思を貫く生き方」(全10回)

第2回「無謀だと言われても」

掲載日:2020年7月1日

テールドシエルから望む富士山

田口 先日、テールドシエルのソーヴィニヨン・ブラン2018を飲みました。日本のソーヴィニヨン・ブランの中で、トップクラスの美味しさですよね。初めて飲まれる方はみなさん衝撃を受けるんじゃないでしょうか?

池田 ありがとうございます。やはりこの土地柄ですかね。テロワールを活かして造っています。私は平均で930mのところで栽培しているんです。880mのところに植えてるブドウも一部ありますけど。私が始めたときは他に誰もいませんでした。私ひとりで荒廃地を開発したんです。

この土地に決めた理由

田口 テールドシエルの土地はどうやって見つけられたのですか?

池田 ブドウ栽培の盛んな東御市の近くで、集積した土地の確保をすることが可能な荒廃地・後継者のいない畑はないものかと、小諸市の農業委員会事務局に相談しました。すると、糠地地区には比較的、荒廃地や畑があるので探してみてはとのアドバイスを受けたんです。

田口 それで糠地地区が浮上したのですね。テールドシエルの土地を決めるに至った思い出のエピソードがあるとお伺いしましたが?

池田 はい。その後、休日を使って糠地地区を訪れて候補地を探し始めたんです。その時、たまたま夕立の後に雲海が出て今の圃場(※1)とブドウハウス全体が浮き上がって輝いていました。それで、雲海の上の土地を全てブドウ畑にしようと決心しました。


テールドシエルから見える雲海(池田さんより提供)

無謀だと言われた糠地地区でのブドウ栽培

田口 この土地を手に入れられるとき、周りからは「無謀だ」と止められたそうですね?

池田 はい。ちょうど5年前、長野県の農政部に相談したところ、「標高800mまでしかワイン用ブドウ栽培に適していない」「無謀だからよせ」と言われたんです。(糠地地区は800m-950m)

田口 具体的にどんな理由で「800mまで」なのでしょう?

池田 標高930mの高地では凍害の恐れがあるからです。長野県でパイナップルを栽培することと同じだから止めろと進言されました。だから保護観察付きで始められた感じです。

テロワールへの確信

田口 それだけ反対されてもこの土地に決めたということは、池田さんの中では何か確信があったということですか?

池田 この土地に惚れたんです。凍害防止をしっかりとやれば大丈夫じゃないかと思ったんです。日照時間が長く、雨が少ない。南西斜面に向いてるから多少寒くても大丈夫かなと思いました。土壌は粘土質です。一番良いのは寒暖差が激しいことですね。このテロワールから、しっかりとした酸味と豊かな果実味を生み出すワインができると確信していました。

田口 実際に始められてみて、冬には凍害になるほどの厳しい寒さが続きましたか?

池田 ここでは真冬に氷点下10度以下になる日が10日くらいあります。氷点下10度以下が3~4日継続的に続くと凍害の恐れが十分あります。でも3日続けてそういう日は続かないんです。そういう日が1日あっても翌日は氷点下7~8度みたいな感じで。

あとから気が付いた大きなメリット

池田 そういえば、後で気が付いたことなんですが、ここは常に風が通ってくれるので遅霜の心配がないんです。遅霜っていうのは晴天の時、風がなくて霜が降りてくることです。ところが、柔らかい感じでも風が常に吹いていれば霜がおりないんです。

田口 それは大きなメリットですね。

池田 はい。平地で霜が降りていても、テールドシエルでは霜が降りないんです。これは大きなメリットです。しかし、ソーヴィニヨン・ブランの衝撃のファーストヴィンテージを飲んでみるまでは疑心暗鬼でした。

田口 周りから無謀と言われても、ご自身の直感を信じて意思を曲げなくてよかったですね。

池田 はい、良かったと思っています。でも、千曲川ワインアカデミーでは、「池田さんみたいな冒険はしないでください」ってみんなに言ってるみたいです(笑)

※1 圃場・・・作物を育てる水田や畑のこと。ここではブドウ畑の意味。

(つづく)

この記事の著者 / 編集者

田口あきこ(日本ワインなび編集長)

ホームパーティを開催することが多いことから、より良いおもてなしをするためにワインを学び始める。2015年にワインスクール『レコール・デュ・ヴァン』のインストラクター養成講座にて講師に抜擢。
2018年春からワイナリー経営者を育成する学校『千曲川ワインアカデミー(長野県東御市)』にてブドウ栽培・醸造・ワイナリー経営について学び、講師業の傍ら、超新規ワイナリーの立ち上げ・畑仕事のお手伝いにも出掛ける。
2020年『日本ワインなび』を開設し、編集長として運営を行う。
ワインスクール『レコール・デュ・ヴァン』講師紹介ページ
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