日本ワインなび

日本ワインの魅力を総合的に発信するサイト

日本ワインを支える人たちを訪ねて
心熱きプロフェッショナルに学ぶ人生の道しるべ

株式会社テールドシエル代表取締役
池田岳雄さんに学ぶ
「自分の意思を貫く生き方」(全10回)

第4回「卒業した後も仲間とともに」

掲載日:2020年7月1日

テールドシエル入口で出迎えてくれる名物のくま

仲間と語り合った日々

田口 池田さんはブドウ栽培については千曲川ワインアカデミーで学ばれたのですよね?

池田 はい。私は2期生なんですけど、1期生との交流もあって。色んな生きざまの人たちが集まってきて。

田口 アカデミーは、1~3期生までは平日開催だったんですよね?

池田 はい。私が通っていた時は水木開催でした。水曜の夜は私の家でどんちゃん騒ぎ(笑)皆と色々な話をしました。今まで生きてきたプロセス、この方はこういう感じでブドウ栽培しているんだな、こういうワインを造りたいんだなというのがわかってくると、それも勉強になりました。そして、困っている人がいれば応援しようと、そういう連帯感が出てきますね。

田口 わかります。平日開催だったことから、仕事を辞めて通われている方が多かったようですね?

池田 はい、仕事を辞めて新たに移住して、ブドウ栽培をやろうという方が多かったので、すごく切羽詰まっていました。土地の確保もなかなかできなかった。その頃は御堂地区のブドウ団地もできていなかったですし。それで、「小諸には余裕があるから来ない?」なんて誘ってみたんです。今は小諸でブドウ栽培をしている人が4人くらいいますよ。東御市と小諸市を跨いで土地を借りている人もいますし。

卒業しても友達

池田 それから、アカデミーが終わって自分の中で一番感じたのは、「卒業しても友達」ということです。「こういう虫が出てるけど、モスピランやるか?」「手で一生懸命取った方がいいか?」とか、「今後どのようにしたら生活できるだろうとか」なんていうことを、今も相談し合っています。
いつかアカデミーの仲間たちと集大成した発表会のようなワイン会ができたらいいなと思っています。皆それぞれドラマがありますから。そして首都圏の人にぜひ飲んで欲しいですね。それがワイン業界を盛り上げるひとつだと思います。

生産量とブドウ品種

田口 テールドシエルを立ち上げられてから今年で5年。年間ワイン生産量は現在どのくらいですか?

池田 今のところ、通常では5,000ℓくらい、ボトルにして6,000本弱(委託醸造)。最終的には12,000ℓで15,000本の自社ワインができれば良いと思っています。そのくらいの量をマックスとして、そこに合わせてワイナリーを設計しました。

田口 どんなブドウ品種を植えられていますか?

池田 植栽本数で1番多いのがピノ・ノワールで2,500本です。ソーヴィニヨン・ブラン1,500本、シャルドネ1,000本、メルロやピノ・グリもあります。それから、他のブドウと収穫時期をずらすために、カベルネ・フラン、シラー、サヴァニャンなども少しずつ植えました。今まではサンプル的に植えていたんですけど、これはかなりいけると思い、今年から本格的に追加で植えました。来年また追加で1,000本ぐらい植える予定です。それが最後であとは補植みたいな感じで植えるくらいですね。この8種類くらいでやっていこうと思っています。


菜の花畑に隣接するテールドシエルの圃場

デスクワークから農業に転向して

田口 目標のワイン生産量ができるための苗は殆ど植え終わったということですね。しかし、前の会社ではデスクワークだったそうですが、突然農業に転向されて大変じゃなかったですか?

池田 大変どころの騒ぎじゃないですよ(笑)傾斜のあるところを初めの頃は3回休まないと上まで上がってこれなかったんです。今は1回休めば上まで上がって来れますよ。皆さんがハーハー言ってるのに、息切れもしないで登れます。

医師も驚く健康体に

池田 この傾斜がかかってるところを毎日2万2千歩くらい歩いています。実は、前の会社を辞めるとき糖尿病だったんです。だから今も2か月に一度は血液検査をするんです。遺伝性の場合もあるし、糖尿病は治らないっていうから。でもね、平常値になったんです。一般の方と同じ数値になったんですよ。

田口 それはすごいですね。

池田 お医者さんには、「お前、うちの薬以外に何か飲んでるだろ?」と聞かれました。だから、「飲んでないよ、でも毎日2万歩歩いている」と答えたんです。

田口 それでお医者さんは何て仰ってましたか?

池田 「毎日2万歩いたからといってそんなに数値が良くなるわけない」って返されました。「俺と一緒に付き合えばわかるよ」って言っておきました(笑)

田口 薬なしで平常値に戻るってそのくらい驚くべきことなのでしょうね。

池田 ただ歩くだけじゃなくて、傾斜のあるところを作業しながらですからね。でも冬場はやはり動かないと、若干数値悪は上がります。おかげさまで今の時期は平常数値です。

(つづく)

この記事の著者 / 編集者

田口あきこ(日本ワインなび編集長)

ホームパーティが好きなことから、より良いおもてなしをするためにワインを学び始める。2015年にワインスクール『レコール・デュ・ヴァン』のインストラクター養成講座にて講師に抜擢。
2018年 ワイナリー経営者を育成する学校『千曲川ワインアカデミー』にてブドウ栽培・醸造・ワイナリー経営について学ぶ。
2020年『日本ワインなび』を開設し、編集長として運営を行う。
2021年 JETROに附置する農林水産省・食品の輸出・プロモーション機関の事業で日本ワインの認知業務に携わり、海外向けに日本のワイナリー紹介記事を執筆。
日本ワイン検定 出題作成委員
ワインスクール『レコール・デュ・ヴァン』講師紹介ページ
Facebook
note

この記事をシェアしませんか?

LINE
日本ワインを支える人たち
株式会社ヴィラデストワイナリー代表取締役 兼 日本ワイン農業研究所株式会社「アルカンヴィーニュ」取締役 小西 超さんに学ぶ「志を高く持って生きる」(全8回) 株式会社テールドシエル代表取締役 池田岳雄さんに学ぶ 「自分の意思を貫く生き方」(全10回) ヴィンヤード『carraria(カラリア)』 トラストアンドアソシエイツ株式会社 代表取締役 中村大祐さんに学ぶ「自分の人生を大切に生きる勇気」(全7回) ヴェレゾンノート 東山ワイン研究所合同会社 櫻山記子さんに学ぶ「如何なるハードルにも正面から挑むタフな精神力」(全6回) 駒園ヴィンヤード株式会社 取締役社長 近藤修通さんに学ぶ「愛情を持って、謙虚に相手の声に耳を澄ます」(全10回) 株式会社ジオヒルズ ジオヒルズワイナリー醸造責任者 富岡隼人さんに学ぶ「未来へ繋げる視野と行動力」(全7回) 農地所有適格法人 株式会社 自然農園グループ ドメーヌ・イチ 代表取締役 上田一郎さんに学ぶ 「自分らしく、自然体で生きる」(全8回) 株式会社ショーナン 代表取締役 田中利忠さんに学ぶ「チャンスを受け入れる力・夢を描く力・実現する力」(全5回) マンズワイン株式会社 マンズワイン小諸ワイナリー醸造責任者 西畑徹平さんに学ぶ「初志貫徹する真っ直ぐな心」(全8回) 前小田原市長 加藤憲一さん率いる小田原ワインプロジェクトの皆さんに学ぶ「人の力」(全6回) 合同会社たてしなップルワイナリー工場長 井上雅夫さんに学ぶ「一期一会の精神でチャレンジする」(全8回) 日本ワインを支える人たちを訪ねて 国登録有形文化財 児玉家住宅 児玉寧さんに学ぶ「逞しく生きるための術」(全6回) テールドシエルワイナリー 栽培醸造責任者 桒原一斗さんに学ぶ「謙虚な姿勢で、一生勉強」(全8回) 有限会社萬屋酒店 高橋 憲・里栄ご夫妻に学ぶ「造り手の気持ちを伝えたい」(全8回) Domaine Bless 本間裕康・真紀ご夫妻に学ぶ「夫婦で力を合わせて『あったらいいな』を実現」(全9回) ドメーヌ・モン代表 山中敦生さんに学ぶ「人に優しく、自分にも優しく」(全7回)
テイスティング 日本ワイン×お家レシピ 日本ワインの基礎知識