第3回「ブドウ栽培でこだわっていること」
掲載日:2024年1月16日
クロスさせない新梢の管理
田口「ブドウ栽培でこだわっている点についてお話を伺えますか?」
裕康「一番こだわっているのは新梢の管理です。結構びっくりされるんですけど、枝一本一本をクロスさせないようにしています。」
田口「確かに。これはどういう目的で?」
裕康「風通しです。それから、隙間ができることで薬が抜けるので、向こうにかかるで、一般的な農家さんの6分の1ぐらいの(農薬)使用量で済んでいます。うちは減農薬にこだわっています。」
田口「病害のリスクが減るので、農薬の量が少なく済むということですね。」
裕康「ちょっと前のコロナじゃないですけど、植物も風通しが必要なのかなと。」
田口「ウイルス対策には換気が効果的ですものね。」
花の時期には全て除葉(ムニエ)
裕康「はい。特にムニエという品種は非常に灰色カビ病に弱いので、花の時期には全部徐葉します。」
田口「風通しをよくするやり方は自社畑全てでやっているのですか?」
裕康「そうです。この作業は適切な時期にやらないと2倍3倍の時間がかかってしまいます。適切な時期に適切な作業をしっかりやるっていうのは大切なことです。9年目にして
やっと植物の成長スピードに(自分達が)勝ったというか、コントロールできるようになってきました。」
ヴァレー・ド・ラ・マルヌ方式を取り入れて
裕康「あと、うちは少し変わった仕立てを取り入れています。余市の農家さんだとコルドンの短梢などが通常ですが、シャンパーニュのヴァレ・ド・ラ・マルヌ方式を取り入れています。木の主幹に負担がかからないように栽培しています。」
田口「それはなぜですか?」
裕康「うちは主幹を太くしないように栽培しています。なぜかというと、コルドンの短梢だと、だんだん木自体が太くなっていくと思います。この辺りでは雪が降るのでワイヤーから下ろして、そして春には上げるという作業をします。その作業を毎年繰り返すことによって、樹液の流れが悪くなっていくことが最近の研究で分かったそうです。それで、なるべく主幹に負担がかからないようにして、枝は毎年更新していくやり方を採用しています。」
田口「そういうことでしたか。この仕立てだと樹勢の面ではいかがですか?」
裕康「今のところはすごく樹勢が揃っていますし、いいんじゃないのかなと思っています。ヴァレ・ド・ラ・マルヌ方式は長梢じゃなく、中梢なんですよ。長梢一本だと力のバラつきが出て、先端と根元が強くなって真ん中が弱くなるっていうのは言われていることです。中梢だと力の分散が抑えられるので、ある程度同じ樹勢で伸びていきます。すごく芽出しも良いですし、管理もしやすい。僕はいいかなとは思っています。」
(つづく)
この記事の著者 / 編集者
田口あきこ(日本ワインなび編集長)
ホームパーティが好きなことから、より良いおもてなしをするためにワインを学び始める。2015年にワインスクール『レコール・デュ・ヴァン』のインストラクター養成講座にて講師に抜擢。
2018年 ワイナリー経営者を育成する学校『千曲川ワインアカデミー』にてブドウ栽培・醸造・ワイナリー経営について学ぶ。
2020年『日本ワインなび』を開設し、編集長として運営を行う。
2021年 JETROに附置する農林水産省・食品の輸出・プロモーション機関の事業で日本ワインの認知業務に携わり、海外向けに日本のワイナリー紹介記事を執筆。
日本ワイン検定 出題作成委員
・ワインスクール『レコール・デュ・ヴァン』講師紹介ページ
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