第7回「ブドウの樹の成長と味わいの関係をみながら」
掲載日:2023年6月30日
ブドウの樹の成長と味わいの関係をみながら
憲「畑の手伝いをしてみてすごく面白いなって思うのは、ブドウの樹が年々大きくなっていくことです。だいたい4、5年目から取り始めて、7年目くらいでぐんと収量が伸びたりする。どこかで伸びる時期があるんですよ。だいたい7年目が多いかな。獲り始めてから2年経ったら美味しいかなと思って、良い年だし2017年買っておこうとか。他の店に比べて半年から1年遅らせて売りたいと思っていると、それを超えるくらい 木に力がついて2019年が美味しく旨味が増しちゃうときもある。 予想が出来ない面白さ。」
田口「ブドウの樹の成長とワインの味わいの関係を考えて販売されているのですね。私もこれからは高橋さんのお話をよく聞いてからワインを購入したいと思います。」
憲「今年はここのワインが急に美味しくなったな、と樹の成長がダイレクトに感じられることがあります。これが30年も経つと、徐々に木の入れ替えはするわけですけど、基本的なレベルは一定のところに来るから、飲んでいてある程度安心感のある買い物ができると思います。それから、産地が或る程度形成されている時って、樹が成長して造り手も『去年ここをこうした方がよかった』とコツコツ蓄積していく。栽培なんて本当にその通りだし、1年1年の蓄積がはっきり出てきます。」
田口「お手伝いに行かれているからわかることですよね。」
憲「お客さんには、『全部買わなくていいけど、もし1つ気にいったワイナリーがあったら毎年買って比べてみて』と伝えています。全部飲む必要はない。全部買おうとしたら追いつけないし、僕らも買えないし。でもこの成長は今の僕らしか味わえないから。」
27年前、余市の畑を見学した時のエピソード
田口「余市のレアなワインも置いてありますが、長野県以外の畑に出かけることもあるのですか?」
憲「27年前、全国酒情報交換会という日本酒の勉強会が札幌で開催された時、カーブドッチの落さん(※1)に、『余市で畑やっている人教えて』って頼んだことがありました。それで余市の安藝農園の畑は見に行ったことがありました。『何しに来たんですか?畑を見に来る人なんていませんよ。』と言われました(笑)
田口「今となっては、日本ワイン愛好家はこぞって余市に出かけていますが、当時はそんな感じだったのですね。」
憲「余市にバーンと丘の向こうまで畑が繋がっているのを見て驚きました。その時代、そんな畑は長野にはなかったから。今のシャトー・メルシャン椀子ワイナリーの規模の畑が余市にはありましたから。それからいよいよ子育ても終わって、去年の6月に27年ぶりに余市に行きました。」
田口「27年ぶりの再会だったわけですね。昔と今とではずいぶん変わったでしょうね。ワイナリーの数もたくさん増えましたし。」
(つづく)
※1 落 希一郎…カーブドッチワイナリー創設者。OcciGabi Winery専務取締役。
この記事の著者 / 編集者
田口あきこ(日本ワインなび編集長)
ホームパーティが好きなことから、より良いおもてなしをするためにワインを学び始める。
2015年 ワインスクール『レコール・デュ・ヴァン』の講師に抜擢。
2018年 ワイナリー経営者を育成する学校『千曲川ワインアカデミー』にてブドウ栽培・醸造・ワイナリー経営について学ぶ。
2020年『日本ワインなび』を開設。
2021年 JETROに附置する農林水産省・食品の輸出・プロモーション機関の事業で日本ワインの認知業務に携わり、海外向けに日本のワイナリー紹介記事を執筆。
2024年より千曲川ワインアカデミー倶楽部公式HP『生産者ストーリー』執筆。
同年 北海道余市町登に3.4haの農地を取得し、vineyard開設中。
日本ワイン検定出題作成委員
LDV日本ワインLover講座主任
・ワインスクール『レコール・デュ・ヴァン』講師紹介ページ
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