第6回「人手不足の新規生産者を応援したい」
掲載日:2023年6月30日
黒姫町・野尻湖
人手不足の新規生産者を応援したい
田口「お手伝いは複数のワイナリーに行かれているのですか?」
憲「はい、そうです。(写真を見せながら)例えばこちらのワイナリーとか。」
田口「これは新規の自然派の生産者さんですよね?」
憲「最近、新しく小さくやり始めたところはだいたい自然派ですね。そういうところはあまり従業員がいなくて。ワイナリーを持っていないところは、なかなか手伝う人が集まらないんです。昔の会社の同僚とか、近所の仲良しのおばちゃんとかが手伝ってくれるくらいで。」
田口「ワイナリーがない委託醸造の生産者のところはお手伝いの方を集めるのが大変ということですね?」
憲「はい。ワイナリーがあるところはお客さんがつきやすい。ワイナリーがある生産者と委託醸造の生産者の間にはお客さんの目で見て、はっきりと見方の違いがあるようです。『このワインはなかなか手に入らないけど、この人のところで造った委託のワインならありますよ』、と色々説明しても、『でもワイナリーないんでしょ』、と一発で切られてしまうんです。」
田口「なるほど。なかなか厳しいですね。」
美味しいワインができるか分からなくても、お手伝いしたい
憲「自然派で造ると傷みは激しいから、本来人手は3倍くらい必要になります。でも人手がいない。だから委託醸造の生産者のところには初収穫で手伝いに行きます。美味しいワインができるかどうかわからないけど、とにかく行っちゃうみたいな。」
奥さま「応援したくなっちゃうのよね。お手伝いに行くと、新しくこれから始める生産者さんたちも来ていることがあります。『僕のところは〇日に収穫、僕のところは〇日に収穫です』、と聞いてまたカレンダーが埋まっていくわけです。」
憲「委託醸造のものはすぐには売れないから。うちはワインがどうなるかわからない状態で『買うよ』って言っているわけです。普通はワインの味をみてから、そこと付き合うかどうか考えるんです。だからと言って、大人気のワイナリーはそんなに付き合えるものでもないし、仕入れても本数が少ない。大人気の人以外のワインも美味いから仕入れて扱いたいなと思う。そうすると在庫が増えちゃう (笑)」
里栄「やっぱり関わっていると応援したくなっちゃうんです。不思議なんですけど、お手伝いに行くのが当たり前になっていて。」
田口「応援したくなる気持ちはご夫婦で共通しているのですね。どこの酒屋さんもお手伝いに出かけるわけではないでしょうし。素晴らしい行動力ですね。」
(つづく)
この記事の著者 / 編集者
田口あきこ(日本ワインなび編集長)
ホームパーティが好きなことから、より良いおもてなしをするためにワインを学び始める。
2015年 ワインスクール『レコール・デュ・ヴァン』の講師に抜擢。
2018年 ワイナリー経営者を育成する学校『千曲川ワインアカデミー』にてブドウ栽培・醸造・ワイナリー経営について学ぶ。
2020年『日本ワインなび』を開設。
2021年 JETROに附置する農林水産省・食品の輸出・プロモーション機関の事業で日本ワインの認知業務に携わり、海外向けに日本のワイナリー紹介記事を執筆。
2024年より千曲川ワインアカデミー倶楽部公式HP『生産者ストーリー』執筆。
同年 北海道余市町登に3.4haの農地を取得し、vineyard開設中。
日本ワイン検定出題作成委員
LDV日本ワインLover講座主任
・ワインスクール『レコール・デュ・ヴァン』講師紹介ページ
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