第8回「僕にとってワイン造りとは」
掲載日:2023年4月3日
ワイン造りは人生そのもの
田口 桒原さんにとってワインづくりとは?
桒原 僕の人生そのものです。朝起きたら畑に行ってずっと仕事しているので、自分の生活の大半がワイン造りです。ブドウやワインに向き合うというのは人と向き合うのと一緒だと思っています。
押し付けるのではなく、寄り添うこと
桒原 人と接したり、仲良くしたりするのは自分から押し付けるのではなく、相手の良いところを理解して寄り添うのが大事だと思っています。だから自然に対しても自分の気持ちを押し付けるのではなくて、人間がブドウに寄り添うからこそ自然のことが見えてきて、良いワインになる。その中で収穫の時期が見えてきたり、病気が危なそうだなとすぐに感じられたり。
だから自分の生き方はワイン造りにとって大事なことです。こっちが造ってるというよりは、寄り添って造らせて頂いているという気持ちでワインを造っています。ワインを造って、酒販店様をはじめ多くの伝え手の方に伝えて頂き、時には飲み手が伝え手となり、そこからまた人と人との繋がりが生まれて。その人達と話すと自分もまた成長できます。自分も独立して今まで以上に人との繋がり大切さを改めて強く感じます。
2022年に開業したNUKAJI WINE HOUSE
謙虚な姿勢で、一生勉強
田口 『押し付けるのではなく、相手に寄り添う』というのは、いつも温厚な桒原さんらしい表現ですね。因みに、桒原さんには座右の銘などありますか?もしあったら教えてください。
桒原 「一生勉強」が座右の銘です。ワイン造りは人生なので最後まで美味しいワインを突き止めたい。美味しいと思って出すんですけど、もっとできるんじゃないかと思っています。自分の中で本当に美味しいものを追い続けていきたい。これでいいやで終わりにはしない。死ぬまで探求心を捨てずにいたいです。
田口 一生探求心を持ち続けるという考え方は、各方面で一流の皆さんに共通していることですよね。私も見習います。
桒原 それから、いつまでも謙虚な姿勢でいたいですね。ちやほやされて天狗になったりせず。謙虚な姿勢で人、そして葡萄や自然の言葉に耳を傾けたいです。繋がりの中で教わることはとても大切です。相手の言葉を謙虚に受け止めて、自分の中で消化して、自分という人間が一歩一歩大きくなってワイン造りができたらと思っています。謙虚な姿勢で自然やブドウやワインにも携わっていきたいです。そして自然からも多くを学び、生かしていきたいです。
(おわり)
編集後記
こころみ学園の園長先生の講演会で心を打たれ、ブドウ栽培のボランティア活動に参加したことをきっかけにワイン造りの世界に入った桒原さん。
「自分は基本的に宣伝はしていません。ワインを飲んでいただくことで、テールドシエルの風土、風や土、太陽、自然を感じてほしい。」と取材の合間に仰っていたことが印象的でした。
桒原さんに初めてお目にかかったのはテールドシエルOPEN直前。今や彼のワインは飛ぶように売れるようになってしまいましたが、今も変わらず温厚で優しい桒原さん。長時間の取材を通して、「謙虚な姿勢で一生勉強し続けること」の大切さを教えていただきました。
この記事の著者 / 編集者
田口あきこ(日本ワインなび編集長)
ホームパーティが好きなことから、より良いおもてなしをするためにワインを学び始める。
2015年 ワインスクール『レコール・デュ・ヴァン』の講師に抜擢。
2018年 ワイナリー経営者を育成する学校『千曲川ワインアカデミー』にてブドウ栽培・醸造・ワイナリー経営について学ぶ。
2020年『日本ワインなび』を開設。
2021年 JETROに附置する農林水産省・食品の輸出・プロモーション機関の事業で日本ワインの認知業務に携わり、海外向けに日本のワイナリー紹介記事を執筆。
2024年より千曲川ワインアカデミー倶楽部公式HP『生産者ストーリー』執筆。
同年 北海道余市町登に3.4haの農地を取得し、vineyard開設中。
日本ワイン検定出題作成委員
LDV日本ワインLover講座主任
・ワインスクール『レコール・デュ・ヴァン』講師紹介ページ
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