第3回「テールドシエルでのブドウ栽培」
掲載日:2023年4月3日
(テールドシエルのピノ・グリ)
田口 ココ・ファーム・ワイナリーで20年近く経験を積まれた時に、池田さん(※1)からテールドシエル開設のお話があったということですよね?
桒原 はい。2020年にワイナリーを造るという話がありました。畑も或る程度の大きさを持っていらっしゃったので、こういう日が来たなと思いました。
それぞれのブドウの感受性に近づくいていく
田口 これからワイン造りを目指す方のためにも、テールドシエルでのブドウ栽培で苦労したことがあれば教えていただけますか?
桒原 足利のココ・ファーム・ワイナリーでは長い間やっていたので、気候やブドウの性格を分かった上で栽培をしていました。長野の糠地というのは気候も土壌も、更に品種も違いますし、それに慣れるまでは大変でした。
田口 慣れるとはどんな感じですか?
桒原 慣れるというか感受性が高くなるという感じですね。ピノ・ノワールやシャルドネ、それぞれ感受性が違うので、いかに自分がそこに近づけるか。毎日畑に入って日射、空気、風を感じながらブドウの感受性に慣れるというか。そこに溶け込めるまで少し時間はかかりますが大切なことです。土地が変わったことによって、苦労というか戸惑いはありました。気候や土壌が人間に合わせるのではなく、人間がそっちに寄り添っていく。それが大事だと思っています。
テールドシエルのブドウ畑
定説どおり繊細な品種、ピノ・ノワール
田口 とりわけ苦労した品種はありますか?
桒原 ピノ・ノワールかな。2020年はずっと梅雨が続いていて低温でした。ピノ・ノワールは開花時期が繊細なので、寒すぎるとうまく受粉ができなくて実が付かない。それは気候なので人がどうすることもできないことです。それを受け止めるしかない。それから、収穫の前の病気がでやすかったり。ピノ・ノワールは繊細だとよく言われているけどそれがよくわかりました。
比較的育てやすいシャルドネ、ソーヴィニヨン・ブラン
田口 逆に糠地に合っていてやりやすい品種はありますか?
桒原 シャルドネは世界的にもやりやすいというのはありますけど、やはりシャルドネとソーヴィニヨン・ブランが育てやすいですね。それからピノ・グリもピノ・ノワールよりは病気に強いです。
田口 桒原さんがテールドシエルで初めて手掛けたソーヴィニヨン・ブランとピノ・ノワールを頂きました。どちらも糠地のテロワールと桒原さんの魂を感じるワインでした。丁寧に造っている片のワインだなというのはどなたが飲んでも感じることだと思います。
(つづく)
※1 池田岳雄 テールドシエルワイナリー代表取締役
この記事の著者 / 編集者
田口あきこ(日本ワインなび編集長)
ホームパーティが好きなことから、より良いおもてなしをするためにワインを学び始める。2015年にワインスクール『レコール・デュ・ヴァン』のインストラクター養成講座にて講師に抜擢。
2018年 ワイナリー経営者を育成する学校『千曲川ワインアカデミー』にてブドウ栽培・醸造・ワイナリー経営について学ぶ。
2020年『日本ワインなび』を開設し、編集長として運営を行う。
2021年 JETROに附置する農林水産省・食品の輸出・プロモーション機関の事業で日本ワインの認知業務に携わり、海外向けに日本のワイナリー紹介記事を執筆。
日本ワイン検定 出題作成委員
・ワインスクール『レコール・デュ・ヴァン』講師紹介ページ
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