第7回「テールドシエルでの今後の展望②」
掲載日:2023年4月3日
造りはシンプルのまま、多様な容器を導入
桒原 醸造については造りはシンプルなので、プレス機で搾って発酵を待って熟成させるだけなので、それに変えようとは思っていません。ただ、色々な容器を使いたいなと思っています。これまでは228Lの小樽を使ったりしていましたけど、500Lの大樽やコンクリート・エッグ(※1)を購入しました。コンクリもまた味わいが違った面白さが出ると思います。
大樽に期待する効果
田口 まず、大樽を使用することで得られる効果について教えていただけますか?
桒原 大樽は板厚が厚いのもあって、酸化熟成やオークの風味がゆっくりとでてきます。ワインの熟成に春夏秋冬の期間が大切だと考えています。228Lの小樽だと夏を越す前に少しオークの風味が早く付いてくる印象があり、2つの樽の良さをワインに反映できるようにしていきたい考えです。そしてワインもなるべく大きな容器、場所で熟成、休んでいた方が気持ちが良い感じがしますしね。
田口 ワインも人間や動物と同様、生きものですものね。広々としている方が伸びやかなワインになりそうですね。
テールドシエルの醸造施設
コンクリート・エッグに期待する効果
田口 コンクリート・エッグに期待する効果について教えていただけますか?
桒原 対流がいいなと。果実味がそのまま表現できるということです。ステンレス製の容器でも果実味を表現できるのですが、コンクリの方が丸さが出ます。
田口 コンクリ―ト・エッグは対流がいいとよく聞くのですが、どういうことなのでしょう?
桒原 CO2は上に出ていきます。四角や円錐など、上が丸くない容器はCO2がそのまま上に上がって終わってしまいます。コンクリート・エッグは対流してCO2が下に下がります。そうすると容器の中でエアレーションというか、酵母に空気を送ることができるので発酵がスムーズになったり、発酵が止まったりするリスクがありません。
田口 なるほど、対流が良いことでスムーズな発酵に繋がるというわけですね。
桒原 それに酵母が気持ちよさそうに元気に動いてくれている気がします。
(つづく)
※1 コンクリート・エッグ…卵の形状をしたコンクリート製のワイン熟成用容器。2001年にフランスの名門ワイナリーが、タンクメーカーに製作を依頼して開発された。
この記事の著者 / 編集者
田口あきこ(日本ワインなび編集長)
ホームパーティが好きなことから、より良いおもてなしをするためにワインを学び始める。
2015年 ワインスクール『レコール・デュ・ヴァン』の講師に抜擢。
2018年 ワイナリー経営者を育成する学校『千曲川ワインアカデミー』にてブドウ栽培・醸造・ワイナリー経営について学ぶ。
2020年『日本ワインなび』を開設。
2021年 JETROに附置する農林水産省・食品の輸出・プロモーション機関の事業で日本ワインの認知業務に携わり、海外向けに日本のワイナリー紹介記事を執筆。
2024年より千曲川ワインアカデミー倶楽部公式HP『生産者ストーリー』執筆。
同年 北海道余市町登に3.4haの農地を取得し、vineyard開設中。
日本ワイン検定出題作成委員
LDV日本ワインLover講座主任
・ワインスクール『レコール・デュ・ヴァン』講師紹介ページ
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