第5回「山と海から風が吹くピノ・ノワールの畑」
掲載日:2021年9月21日
山と海、両方から風が吹くピノ・ノワールの畑
田口 こちらが上田さんお気に入りのピノ・ノワールの畑ですね。本当に風通しの良いところですね。
上田 はい、僕はここを勝手にうちのグラン・クリュと呼んでいます(笑)だいたいこの地域だと南西、山の方から風が吹きます。ここは山からの風と海からの風、両方が吹くのですごく風通しがいいんです。だから病気にならない。風通しが悪いところで栽培しているピノ・ノワールは病気になりやすいんです。
田口 健全なピノ・ノワールを収穫するには、風通しの良いところで栽培することが有効なんですね。病害以外に何かご苦労されていることはありますか?
上田 台風の被害もありますね。台風がくると枝が向こう側に倒れてしまうんです。
田口 そういった時はどうするんですか?
上田 手作業で1本1本の樹を戻すんです。防風林を立てようかと思うのですが、見晴らしが悪くなるので我慢しています。
田口 台風は毎年きていますか?
上田 大きいのは10年に一度くらいですね。
傾斜のあるピノ・ノワールの畑を歩きながら
上田 どこの畑でも肥料や養分は下の方に流れるので、下の方の木は太くなります。
田口 確かに下にいくにつれて樹が太くなっていきますね。
上田 それからちょっと見てください、うちは有機なのでこんな風に虫に葉っぱを食われます。毛虫を見つけたら1つ1つとっています。それから、コガネムシのこの時期は天敵ですね。
田口 下から眺めると本当に綺麗な畑ですね。上田さんはいつも何時頃から畑に来られているのですか?
上田 畑には6時半頃来ています。
田口 早く来ないと日中は暑くなりますものね。
上田 いえ、鳥の声で目が覚めちゃって。この風景が好きなんです。後ろに海が見えて。
上田 向こうに古いピノがありますので車で移動しましょう。(車で移動して)こちらが2011年に植えたピノ・ノワールです。ここは後ろにサクランボの木があったり、植えた向きもあって風通しがあまり良くないので、灰カビ病になりやすいんです。
田口 ここがベト病で葉が全部落ちてしまった畑ですね。樹齢が高いだけあってやはり立派な株ですね。
2011年に植えたピノノワール
田口 ブドウ栽培をしていて、一年で一番で感動する時はどの時期ですか?
上田 いっぱいありますけど、これからだとヴェレゾンが始まった頃ですね。想像しちゃいますよね。どんな出来になるんだろうって。
(つづく)
この記事の著者 / 編集者
田口あきこ(日本ワインなび編集長)
ホームパーティが好きなことから、より良いおもてなしをするためにワインを学び始める。2015年にワインスクール『レコール・デュ・ヴァン』のインストラクター養成講座にて講師に抜擢。
2018年 ワイナリー経営者を育成する学校『千曲川ワインアカデミー』にてブドウ栽培・醸造・ワイナリー経営について学ぶ。
2020年『日本ワインなび』を開設し、編集長として運営を行う。
2021年 JETROに附置する農林水産省・食品の輸出・プロモーション機関の事業で日本ワインの認知業務に携わり、海外向けに日本のワイナリー紹介記事を執筆。
日本ワイン検定 出題作成委員
・ワインスクール『レコール・デュ・ヴァン』講師紹介ページ
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