第4回「ドメーヌ・イチ立ち上げ」
掲載日:2021年9月21日
ヴァン・ナチュールへの切り替え
田口 上田さんはある時期からヴァン・ナチュールに切り替えられたそうですが、何かきっかけがあったのでしょうか?
上田 2009年に醸造を始めた頃、余市にあったワイナリーはうちとあと1件だけだったんです。でもそれから数年後にドメーヌ・タカヒコさんやドメーヌ・アツシ・スズキさんなどのワイナリーが出来て衝撃を受けました。
田口 一時期から余市には急激にワイナリーが増えましたものね。新しくできたワイナリーのハイレベルなワインを飲んでみて刺激を受けた、ということですね?
上田 はい、そうです。昔は自分のワインと飲み比べるワイン自体が殆んど造られていませんでしたから。うちはせっかく有機栽培をしているのだから、本格的な醸造を学べばもっと良いワインができるはずだと思いました。また、ベリーベリーファームのワイナリーはガレージワイナリーで手狭になってきたので、2020年にドメーヌ・イチを立ち上げるに至りました。
上田 それまでは手ごろなワインしか飲んだことがなかったのですが、刺激を受けてからは良いワインも飲む機会が出てきました。
ドメーヌ・イチ公式Facebookページ『ICHI 2019 シリーズ(2020年12月16日)』より出典
https://www.facebook.com/DomaineICHI/photos/a.122062529655052/164400052087966/
バラエティに富むブドウ品種
田口 栽培されているブドウ品種について教えていただけますか?
上田 ヴィティス・ヴィニフェラ系とヤマブドウがそれぞれ2ヘクタール、ハイブリッド品種が1ヘクタール、生食用ブドウが4ヘクタールくらいです。
田口 上田さんはたくさんのブドウ品種を栽培されているのですよね。
上田 ヴィニフェラ系はピノ・ノワール、ピノ・グリ、ゲヴュルツトラミネール、ハイブリッドはヤマ・ソーヴィニヨンや山幸、生食用はキャンベルアーリー、ナイアガラ、ポートランド、旅路です。
田口 特にヴィニフェラ系は大人気ですぐに完売されていますよね。でも私は生食用のペティアン・ナチュールも大好きです。粒が大きい食用ブドウのたっぷりとした果汁に旨味が感じられて美味しいですよね。旅路も最近、注目されていますよね。
果樹栽培に向くエリア ~余市・仁木~
田口 圃場のテロワールについて教えていただけますか?
上田 余市は日本海の気候で北海道では比較的暖かいところです。うちの畑は余市と仁木にまたがっています。実は北海道の中で果物を作れるのは4つのエリアしかないんです。函館、壮瞥(そうべつ)、増毛(ましけ)、そして余市・仁木。その中でも余市・仁木エリアで特にたくさんの果物が造られています。
田口 果樹栽培にとりわけ向いているエリアということですね。
上田 それから余市は比較的雪が多いです。
田口 積雪量はどのくらいですか?
上田 最近はだんだん少なくなっていますが、昔は毎年1.8m位積もっていました。ヴィニフェラ種は凍害に弱いのでワイヤーを外して雪の中に埋めて凍らないようにします。雪が降らないエリアでは、土を被せないといけないんです。それに比べると、容易な作業で済んでいます。ブドウ造りにおいて、雪は重要なファクターです。
上田 それから、だいたいこの地域だと南西の山の方から風が吹きます。うちのピノ・ノワールの一部は小高い丘の山中で栽培しています。山からの風と海からの風、両方吹くのですごく風通しが良いんですよ。
田口 風通しが良いということは病気にかかりにくそうですね?
上田 はい、おかげさまでそこのピノ・ノワールは病気になりにくく、僕は一番気に入っています。この後、行ってみましょう。
(つづく)
この記事の著者 / 編集者
田口あきこ(日本ワインなび編集長)
ホームパーティが好きなことから、より良いおもてなしをするためにワインを学び始める。
2015年 ワインスクール『レコール・デュ・ヴァン』の講師に抜擢。
2018年 ワイナリー経営者を育成する学校『千曲川ワインアカデミー』にてブドウ栽培・醸造・ワイナリー経営について学ぶ。
2020年『日本ワインなび』を開設。
2021年 JETROに附置する農林水産省・食品の輸出・プロモーション機関の事業で日本ワインの認知業務に携わり、海外向けに日本のワイナリー紹介記事を執筆。
2024年より千曲川ワインアカデミー倶楽部公式HP『生産者ストーリー』執筆。
同年 北海道余市町登に3.4haの農地を取得し、vineyard開設中。
日本ワイン検定出題作成委員
LDV日本ワインLover講座主任
・ワインスクール『レコール・デュ・ヴァン』講師紹介ページ
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