第1回「ITエンジニアからオーガニックファーム経営者へ」
掲載日:2021年9月21日
田口 上田さんは2000年に北海道余市郡仁木町に就農、2002年に観光農園「ベリーベリーファーム上田」を開設、2009年に農場の隣にある納屋を改装したベリーベリーファーム&ワイナリー仁木にてワイン醸造を開始、2011年に日本で初めてのオーガニックワイン認定を取得、2020年にはドメーヌ・イチを新設されたということですね。
農業の世界に入られてから21年、ワイン造りを始められて13年、上田さんの手掛けるワイン、特にピノ・グリやピノ・ノワールはあっという間に完売。近年ではスウェーデンや香港にワインを輸出されているそうですね。
人生の岐路にある読者の方々にとって、人生を開拓するよき道しるべになると思いますので、本日はそのはじまりの時代からお話を聞かせください。
OPEN SEA AB『OPEN SEA 9: VITT LJUS』より出典
https://www.opensea.se/os-9-vitt-ljus?fbclid=IwAR0JFUEfg9EJR5
海外で過ごした中・高時代
田口 上田さんは札幌ご出身ということですが、学生時代は海外で暮らしていたそうですね?
上田 はい、父親の仕事の都合で中学・高校時代はカリフォルニアで過ごしました。その後、日本の大学を卒業して、都内のIT企業でエンジニアとして勤めていました。
田口 ITにご興味を持ったきっかけは何かあったのですか?
上田 カリフォルニアの高校でコンピュータの授業があって、その時からかなり好きだったんです。
「お前、畑やらないか?」
田口 ITエンジニアから突如、農業の世界に入られるきっかけとは何だったのでしょう?
上田 仕事でちょくちょく北海道に来ることがあって、友達ができるようになりました。「お前、畑やらないか」って言われて。良い畑をリーズナブルな値段で譲っていただけるというお話を頂きました。
田口 農業にはご興味があったのですか?
上田 僕はもともと山が好きで、地元の良さを再認識し始めていた頃でしたし、妻もオーガニックやりたいね、ということで。それに、当時のITの仕事に疲れてしまっていたのもありました。残業200時間とかざらにありましたらから。
田口 そうでしたか。
上田 それからその当時、離農した方がいて、「ブルーベリーの木を全部あげるから」、という条件が重なりました。それで妻と一緒に「やろう!」と。そんな流れで農場を手に入れることになりました。
田口 新天地で奥さまと二人で新しい夢を追いかける、素敵ですね。
ベリーベリーファーム上田 公式HPより出典
https://www.natural-farm.jp/
オーガニックで良い果物や野菜を作りたい
田口 初めに取得されたのはどのくらいの広さだったのでしょう?
上田 1.4ヘクタールです。就農して3年目(2002年)から観光農園を始めました。高齢化で周りの方たちが土地を買って欲しいということで観光農園がすごく広くなっていきました。それで手が回らなくなったので、法人化する流れになりました。
田口 奥さまと2人だけで一念発起して始められたオーガニックファームは、始めは小さな規模だったのですね。それが今や50ヘクタールという広さだそうですね?
上田 はい、現在は全て稼働しているわけではないですけどね。最近では、ワイン造りをするために余市で新規就農される方が多くいらっしゃいますが、僕の場合はちょっと違って、「妻と2人でオーガニックで良い果物や野菜を作りたかった」というのがきっかけでした。
(つづく)
この記事の著者 / 編集者
田口あきこ(日本ワインなび編集長)
ホームパーティが好きなことから、より良いおもてなしをするためにワインを学び始める。
2015年 ワインスクール『レコール・デュ・ヴァン』の講師に抜擢。
2018年 ワイナリー経営者を育成する学校『千曲川ワインアカデミー』にてブドウ栽培・醸造・ワイナリー経営について学ぶ。
2020年『日本ワインなび』を開設。
2021年 JETROに附置する農林水産省・食品の輸出・プロモーション機関の事業で日本ワインの認知業務に携わり、海外向けに日本のワイナリー紹介記事を執筆。
2024年より千曲川ワインアカデミー倶楽部公式HP『生産者ストーリー』執筆。
同年 北海道余市町登に3.4haの農地を取得し、vineyard開設中。
日本ワイン検定出題作成委員
LDV日本ワインLover講座主任
・ワインスクール『レコール・デュ・ヴァン』講師紹介ページ
・Facebook
・note