「マスカット・ベーリーA」」はどんなブドウ品種?
2020年10月14日
今回は、「マスカット・ベーリーA」とのマリアージュです。
日本ワインなびでのテイスティング会の際に、テイスターの方たちとの話の中で課題として出てきたことが、マスカット・ベーリーAがもつ特徴的な個性にどんなお料理と合せるのがいいのか、悩ましい。そんな意見が出てきました。
では、「マスカット・ベーリーA」とはどんなブドウなのでしょうか。
ずばり、湿度の高い日本の気候に合った赤ワインを代表する、なくてはならないブドウ品種なのです。
今の日本ワインの生産において、甲州に次いで、醸造量の多いブドウ品種です。
(赤ワイン用品種では一番です。)
その前に、ブドウの原品種について触れてみたいと思います。
日本ワインの多様性
日本でのワイン造りは、生産地も、その原料として使用されるブドウも、とっても多岐にわたります。
今では、北海道から沖縄まで全国47都道府県のほとんどでワインが生産されていて、国内のワイナリー数は331場にも及びます。
そのうち、日本ワインを生産するワイナリーの数はなんと263場ですが、ワイン全体の生産量からみると日本ワインの生産量はたったの20.2%とまだまだ少ないのが現状です。※1
北限とする北海道名寄から、沖縄県恩納村の緯度の差は、なんと約18度もあり、フランスのワイン生産地の北限シャンパーニュ地方と南限コルシカ島との差が約6度であるのを考えると、日本の生産地はいかに南北に離れているのかがご想像できるかと思います。
となれば、気候も当然異なりますし、山がちの日本でどのような場所で栽培されているのかによっても、ブドウの個性も変わってきます。
それに加え、日本ワインに使用されるブドウ品種は、生食用ブドウでも多く醸造されているのです。これらのブドウは、アメリカ系品種「ヴィティス・ラブルスカ種」といい、生食用に使われることが多いですが、この種からもワインが造られています。「デラウエア」「キャンベルアーリー」「ナイアガラ」などです。「デラウエア」は、旬の季節になると他のフルーツと一緒に必ず見るブドウですよね。このブドウも最近、日本ワインで多く醸造に用いられています。
前回のマリアージュで登場したスパークリング・ワインは、「旅路」という生食用ブドウで造られたワインだったことを思い出していただけましたでしょうか。
基本的にヨーロッパなどの伝統的なワイン産地では、「ヴィティス・ヴィニフェラ西洋系種」と呼ばれるヨーロッパ系の品種で、「ワイン用のブドウ品種」と言われているブドウのみからワインが造られています。様々なブドウ品種がありますが、白ワイン用品種では皆さんもよくご存知かと思う「シャルドネ」が最も多く「ケルナー」「ミュラー・トゥルガウ」「ソーヴィニョン・ブラン」。赤ワイン用品種では「メルロ」が最も多く、ついで「カベルネ・ソーヴィニョン」「ツヴァイゲルトレーベ」などがこれにあたります。
ちなみに、「ヴィティス・ヴィニフェラ」という言葉は、「ワインを造るブドウ」と言う意味を持っています。
このようなブドウ品種は、今でこそ沢山のワインが生産されていますが、日本の気候下では、他の品種に比べると比較的病害に弱く、日本にもたらされたばかりの頃は、栽培は困難にぶつかり深刻だったため、日本固有の品種である甲州からワインが造られました。
そのほかにも、日本の野生ブドウ、「ヤマブドウ」や、日本の気候に適した品種を求めて開発された、日本特有の交雑、交配種として「マスカット・ベーリーA」があるのです。
※1 国税庁課税部酒税課(令和2年2月)『国内製造ワインの概況 平成30年度調査分』より
https://www.nta.go.jp/taxes/sake/shiori-gaikyo/seizogaikyo/kajitsu/pdf/h30/30wine_all.pdf
参考文献:日本ソムリエ協会教本(2020年3月)『日本』(日本ソムリエ協会)
この記事の著者 / 編集者
吉田順子
JSAソムリエ協会認定 ソムリエ
食べることが大好きなことから、料理教室に7年間通い続けている。明治屋クッキングスクールでは、和食・洋食・中華・菓子の基本コースをマスター。食事の際のお酒の楽しみ方とマリアージュに感動したことから、ワインを学び始める。フードアナリストの資格も保有し、時々フード媒体でライティングを担当。美しいものが好き。ワインもそのひとつ。お料理とワインの楽しみ方、マリアージュを追求していきます。日々の食卓が美しく楽しくなるよう、フラワーアレンジメントやテーブルコーディネートなども交えながらトータルで提案をしていきたいと思います。
その他保有資格
JSA SAKE Diploma、ジュニア・オリーブオイル ソムリエ、日本プリザーブドアーティスト協会 認定講師