日本ワインなび

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株式会社ヴィラデストワイナリー 代表取締役 兼
日本ワイン農業研究所株式会社
「アルカンヴィーニュ」取締役
小西 超さんに学ぶ
「志を高く持って生きる」(全8回)

第5回「このまま終われない」

掲載日:2020年7月1日

ワイナリー計画が頓挫に

田口 ヴィラデストワイナリーを玉村さんと立ち上げられた時のことについてお聞かせください。

小西 もともとはT社のワイナリーを造る予定だったんです。そのために麻井先生に教えてもらって準備していたわけです。そのプロジェクトは1998年から始まったんですけど、2001年にその計画が中止になってしまいました。赤ワインブームが下火になっていたことと、T社としてもその頃、缶チューハイのシェアに他社が参入してきて、厳しくなっていたんです。

田口 それはショックを受けられたでしょう…。

でも、ワインを造りたい

小西 普通だったらそれで終わりなんですけどね。でも僕は麻井先生に深い影響を受けて、ワインを造りたい!という気持ちになっていました。それこそ自分で、今の千曲川ワインアカデミー(※1)のみなさんみたいに自分で畑を始めて…。という気持ちにもちょっとなっていました。T社のワイナリーが中止になったことは玉村さんにとってもショックなことで。T社のワイナリー立ち上げには玉村さんにも協力して頂いていたんです。玉村さんが前に出て東御市の地元の方と交渉してくれたりだとか。T社のワイナリーのために色々と動いてくれていたんです。

田口 玉村さんもずいぶん落ち込まれたでしょう。

小西 そして、ワイナリーの計画が中止になった直後から麻井先生が病気になられて。2001年の収穫の時です。玉村さんのシャルドネを収穫して、サンクゼールまで持っていってこれから仕込みをしようというところで、体調悪いからといって鎌倉のご自宅に帰られたんです。普段だったらそんなことで帰るような方ではないんですけど。いつもは若者に根性を見せてくれるような方ですから。よほど体調が悪かったのだと思います。

たぶん体調悪い中無理して来ていたのだと思います。それからすぐに入院されたみたいで、その翌年の2002年に亡くなられました。ウスケボーイズの小説や映画にも出てくる藤沢のホテルで開催された麻井先生の最後の講演に僕も行っていました。そこでお会いして、その後もう一度病院にお見舞いに行ったのが最後です。

玉村さんからの運命のひとこと

小西 それで、「このまま終われない」という気持ちが僕にもあったし、玉村さんにもあったと思います。そんな時に玉村さんが半分冗談で言ったんです。「一緒にワイナリーつくる?」って。僕は迷いもなく、「お願いします!」って返しました。それがはじまりです。

田口 これはまた急展開ですね。

小西 はい。ただその後、玉村さんの奥さまが「何バカなこと言ってるのよ」と猛反対でした。玉村さんはご自身で毎日お料理をされるんですけど、僕もよく夕ご飯に呼んでもらっていて。そして玉村さんと一緒に奥さまを説得するという…。

田口 「ワイナリーを始める」と言い出だすと、例外なくみなさん、奥さまに反対されるようですね(笑)小西さんも玉村さんの奥さまを説得されたんですね?

小西 まあ説得というよりは…、ご夫婦2人でこういう話題をするとケンカになっちゃうじゃないですか。だから僕が間に入ったのが良かったのかなと。最後はちゃんと納得していただいて。2002年の夏くらいから、本格的にワイナリーを作ろうという話になって。そこから急ピッチで進めることになりました。土地のこと、ワイン醸造免許のこと、お金も調達しないといけないし、色々な準備が必要でした。2003年の初め頃には免許も申請して、だいたいこれでいきましょうというところまで辿り着きました。2003年の春から工事が始まりました。(ブドウが収穫できる)秋にギリギリ間に合ってスタートしました。

土地、ワイン醸造免許、資金調達

田口 土地のことや資金調達、全てがスムーズに流れたのですが?

小西 最初は全然スムーズではなかったですね。土地は玉村さんのものなんですけど、ただその当時は農地だったんです。農地にこういう建物(ワイナリー)は建てられないので。だから農地転用の許可を得たり。免許に関しても、当時、個人でワイナリーを始める人は殆どいませんでしたから、税務署は今より厳しかったです。書類を出しても出し直しになったり、追加の書類を求められたり。僕はもともと理系の人間なので、収支計画とか本当ににわからなかったです。減価償却費とか意味がわかりませんでした(笑)だから経理の本を買って勉強しました。

田口 何でもやらないといけないんですね。いきなり経理のスタッフを雇うわけにもいかないでしょうし。

小西 はい。銀行に出す書類とかも作らないとといけなかったですし。でもすごく勉強になりました。

(つづく)

※1 千曲川ワインアカデミー(日本ワイン農業研究所 アルカンヴィーニュ)…ブドウ栽培とワイン醸造、およびワイナリーの起業と経営について総合的な知識と実践的な技術を学ぶことのできる、日本で初めての民間ワインアカデミー。玉村氏と小西氏が立ち上げた。

この記事の著者 / 編集者

田口あきこ(日本ワインなび編集長)

ホームパーティを開催することが多いことから、より良いおもてなしをするためにワインを学び始める。2015年にワインスクール『レコール・デュ・ヴァン』のインストラクター養成講座にて講師に抜擢。
2018年春からワイナリー経営者を育成する学校『千曲川ワインアカデミー(長野県東御市)』にてブドウ栽培・醸造・ワイナリー経営について学び、講師業の傍ら、超新規ワイナリーの立ち上げ・畑仕事のお手伝いにも出掛ける。
2020年『日本ワインなび』を開設し、編集長として運営を行う。
ワインスクール『レコール・デュ・ヴァン』講師紹介ページ
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