第5回「Dom Grisの秘密」
掲載日:2024年2月24日
収穫・剪定が落ち着いてからプレス
田口「ドメーヌ・モンのワインの中でもDomGris(※1)についてお伺いしたいのですが、あのワインは少し醸してオレンジワインのような造りをされているそうですね。ピノ・グリのオレンジワインは色々と飲んだことありますが、DomGrisは突出して美味しいじゃないですか。何が違うんでしょう?」
山中「ありがとうございます。」
田口「企業秘密じゃないですよね?誰にでも真似できるワイン造りをされているわけですから(笑)」
山中「そうですね(笑)さっきお話しした通り、ブドウを収穫したらタンクの中に入れて、自分の場合は収穫が落ち着いてついて、剪定まで終わってから搾っています。そうすると(搾るのは)50日後くらいになります。ピノ・グリは果皮が薄いので、50日後には液体に全部浸かっていてオレンジになっている。」
田口「収穫から50日後に搾られていたとは。」
ドメーヌ・モンのピノ・グリ畑
結果的にオレンジワインに
山中「オレンジワインを造りたいわけじゃないんですけどね。ピノ・ノワールもそうですけど、ピノ・グリも皮が薄い品種です。皮が薄い品種って、繊細さと旨味というのが表現しやすいと思っています。実際に見たことはないのでわからないのですが、オレンジワインを造っている海外の方たちは、もしかしたらピジャージュとかをして、自分で潰しているんじゃないかと。そうするとタンニンが結構強めになっちゃう。自分は放置しているので、自然に液体が上がってきちゃったっていう、結果論のオレンジワインなんで。」
田口「自然に任せていたら、結果的にオレンジワインになったということですね。」
山中「オレンジ色にしてやろうっていう感じじゃなく、繊細さと旨味を表現するためにっていうのと、農家が造れるワイン造りっていうのが合わさった結果が、ああいうオレンジになっているっていうだけなんです。その点でもしかしたら、世界の産地のオレンジワインより優しい感じなのかもしれません。」
田口「DomGrisのマストを熟成させる時の容器についてお伺いしてもいいですか?」
山中「2018、2019ヴィンテージは、新樽を使っちゃったというか。」
田口「意外ですね。古樽かと思いました。」
山中「古樽は基本的に他のワイナリーで使用した中古品なので、そのワイナリーの癖が入ってきてしまうというか。自分は樽も育てたくて。一番初めはどうしても新樽になっちゃったっていうだけなんですけど。それからは樽を使い回していく。なので今は新樽率は少ないです。ちょっとは(樽を)買うので、少し使うんですけど。2020とかは自分のところで育てた古樽っていうか。」
田口「なるほど、そういう理由で新樽だったヴィンテージがあるわけですね。」
(つづく)
※1DomGris…ドメーヌ・モン自社畑のピノ・グリで醸造したワイン。同ワイナリーのフラッグシップワイン。
この記事の著者 / 編集者
田口あきこ(日本ワインなび編集長)
ホームパーティが好きなことから、より良いおもてなしをするためにワインを学び始める。
2015年 ワインスクール『レコール・デュ・ヴァン』の講師に抜擢。
2018年 ワイナリー経営者を育成する学校『千曲川ワインアカデミー』にてブドウ栽培・醸造・ワイナリー経営について学ぶ。
2020年『日本ワインなび』を開設。
2021年 JETROに附置する農林水産省・食品の輸出・プロモーション機関の事業で日本ワインの認知業務に携わり、海外向けに日本のワイナリー紹介記事を執筆。
2024年より千曲川ワインアカデミー倶楽部公式HP『生産者ストーリー』執筆。
同年 北海道余市町登に3.4haの農地を取得し、vineyard開設中。
日本ワイン検定出題作成委員
LDV日本ワインLover講座主任
・ワインスクール『レコール・デュ・ヴァン』講師紹介ページ
・Facebook
・note