第1回「ウィンタースポーツの世界からワイン造りの世界へ」
掲載日:2024年2月24日
スキーインストラクターのライフスタイルに憧れて
田口 「今日はよろしくお願いします。山中さんがワイン造りの世界に入ったきっかけからお話を聞かせていただけますか?」
山中「はい。自分の場合はワイン造りがしたくてこの道を目指したというよりは、流れ流れてという感じです。 茨城県出身なんですけど、スノーボードが好きで。それで北海道にスノーボードのインストラクターとして教えに来ていました。」
田口「山中さんはウィンタースポーツの一面もあったのですね。」
山中「来ていたのは冬だけだったのですが、北海道の雪が良すぎてすぐに永住したくなりました。スノーボードのスクールに入ってインストラクターを何十年とやっていました。自分はスノーボードなんですけど、スキーの先生も一緒でした。スキーの先生って、地元の方がめちゃくちゃ多いんですよ。みなさん8割、9割が農家さんです。」
田口「スキーの先生が農家さんをやっているとは知りませんでした。」
山中「春から秋にかけてはトマト農家やジャガイモ農家さんをやって、冬になるとインストラクターをやるというスタイルでみなさん働かれていました。そういう生活をしているおじさま方がすごくかっこよくて、生き生きしていらして。」
田口「悠々自適ですよね。」
ソムリエの資格を取得し、ブドウ造りに興味を持った
山中「自分も農業をやりたいなっていうところから始まりました。でもいきなり農業はできなかったので、春から秋にかけて派遣でちょっと働いたり、レストランで働いたりしていました。その時にワインを扱うレストランにたまたま配属されて、それでソムリエの資格を取りました。」
田口「そういう流れでソムリエの資格を取られていたのですね。」
山中「はい。それで農業だったら、ブドウ造りが面白いのかなと思い、色々と調べ始めて。その当時、北海道に新規就農してワイナリーは持たずに、委託で自分ブランドのワインを販売していた二軒のブドウ農家さんがいらっしゃいます。それを見て、そのスタイルが自分にも合っているのではないかと最初のうちは思っていました。」
田口「ワイナリーは持たずにブドウ畑だけやるスタイルですね。」
山中「その後、その二軒の農家さんのところへ行って、お話をお聞きしました。すると、『生活は厳しい』と仰っていました。当時は結婚もしていなかったので、まだ子供もいませんでした。でもこれからもし夫婦になったら、そのスタイルでやっていくのはちょっと厳しいかなという話になってきました。」
田口「委託醸造でワインを造って暮らしていくのは、収入の面で厳しいかもしれない、というリアルな話ですね。」
ドメーヌ・モンの上空から撮影(モンの畑:向かって右手前)
ワイナリーを持つことを決めたきっかけ
山中「はい。二軒のブドウ農家さん共に切実に仰っていたので、そうなんだろうな…というところもあり。そして、新規就農且つ家族経営でうまくいっているのは 曽我さん(※1)だという話を聞きました。それで曽我さんを訪ねることになりました。実際にお会いしてみるとすごく面倒見の良い方で。」
田口「優しい方ですよね。」
山中「当時、曽我さんは就農して4、5年目くらいでした。曽我さんのところは、人手は足りない、そんなに経営的に別に悪くはないけど、人を雇うほどの余裕はない、という状況でした。でも 『余市町で就農することを前提として、研修生として来られるのであれば、考えてあげるよ』っていう話を頂いて。そして、『研修生としてもし入るのであれば、2年間しっかり教えるから、独立してワイナリーまでやりなさい。その覚悟があるなら入って来ていいよ。』ということになりました。」
田口「そういう話だったのですね。ワイナリーを造りなさいというのは、山中さんのことをちゃんと考えてくださっていたからこそですよね。」
(つづく)
※1 曽我貴彦…北海道余市郡余市町を代表するワイナリーの一つであるドメーヌ・タカヒコ代表
この記事の著者 / 編集者
田口あきこ(日本ワインなび編集長)
ホームパーティが好きなことから、より良いおもてなしをするためにワインを学び始める。
2015年 ワインスクール『レコール・デュ・ヴァン』の講師に抜擢。
2018年 ワイナリー経営者を育成する学校『千曲川ワインアカデミー』にてブドウ栽培・醸造・ワイナリー経営について学ぶ。
2020年『日本ワインなび』を開設。
2021年 JETROに附置する農林水産省・食品の輸出・プロモーション機関の事業で日本ワインの認知業務に携わり、海外向けに日本のワイナリー紹介記事を執筆。
2024年より千曲川ワインアカデミー倶楽部公式HP『生産者ストーリー』執筆。
同年 北海道余市町登に3.4haの農地を取得し、vineyard開設中。
日本ワイン検定出題作成委員
LDV日本ワインLover講座主任
・ワインスクール『レコール・デュ・ヴァン』講師紹介ページ
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