第4回「ワイン造りでこだわっていること」
掲載日:2024年2月24日
ワイン造りでこだわっていること
田口「ワイン造りについてお伺いしたいのですが、ピノ・グリのワインでこだわっていることがあれば教えていただけますか?」
山中「なんだろうな。真似できるワイン造りかな?」
田口「真似されたら困るんじゃないですか?」
山中「品種やワインの特徴で違ってくるとは思いますけど、曽我さん(※1)のワイン造りって、基本的に真似ができるワイン造りなんです。今、ワイナリーが結構増えてきていますけど、余市でワイン用ブドウの農家さんが、ワイナリーをやったという例はなくて。今年(2023年)に一軒取るというところがあって、それが初になります。農家さんが、真似できるワイン造り、曽我さんはそういうワイン造りをしています。自分はそれを見てきたので。」
ドメーヌ・モンのピノ・グリ畑と醸造施設
真似できるワイン造りとは
田口「真似できるワイン造りとは、具体的にどういう造りですか?」
山中「まずは除梗しない。除梗すると破砕もしてしまい発酵が始まってしまうので。」
田口「果汁が出てしまいますものね。」
山中「発酵が進んでしまうということもありますし、除梗という作業自体がめちゃくちゃ大変なので省く。除梗破砕機があれば別にいいんですけど。全部ではないにしろ、農家さんがワイン造りも一部この品種だけはやってみようとなった時に、まずは除梗という作業が一つのターニングポイントになります。収穫時期は皆さんめちゃくちゃ忙しく働いているので、更に除梗となったらさらに忙しくなってしまいます。次の日も朝から仕事があるし。」
田口「除梗って思っていたより大変な作業なのですね。」
北の産地だからこそできる造り方
山中「除梗しないでタンクの中に入れるのであれば、コンテナに積むのとあまり変わらない作業なので。だったらその方が(除梗しない方が)いい。放っておいて収穫が終わった時にプレスする。」
田口「効率もいいし、結果として全房発酵(※2)の方が複雑味も出て、トータルで上手くいっているっという感じですかね?」
山中「そうですね。結果的に北海道ならではというか。全房にしてもちょっとずつ液体が出てきちゃうんですけど、その時期ってすごく冷えるので、そのタンクに入れておけば低温浸漬しているのと一緒。それも兼ねられるわけです。香りもよく出るし。」
田口「全房の場合は、果梗が熟していないと青臭さが出てしまうと言いますよね。」
山中「はい。もちろん果梗が熟していないとできない。だから北の産地じゃないと多分できない。ちょっと暖かいエリアに行ったら間違いなくそれは突出しちゃうので。寒いエリアだったらゼロではないにしろ、抑えられる。」
田口「寒いエリアの方が収穫時期を遅くまで持っていけるから、果梗が熟すので青臭さを抑えられるという意味ですか?」
山中「そうですね。暖かいとどうしても早く糖度も上がっちゃうし。」
田口「それがこの地と合っているのですね。」
(つづく)
※1曽我貴彦…北海道余市郡余市町を代表するワイナリーの一つであるドメーヌ・タカヒコ代表
※2全房発酵…除梗せずにブドウを房ごと醸す醸造方法のこと。
この記事の著者 / 編集者
田口あきこ(日本ワインなび編集長)
ホームパーティが好きなことから、より良いおもてなしをするためにワインを学び始める。
2015年 ワインスクール『レコール・デュ・ヴァン』の講師に抜擢。
2018年 ワイナリー経営者を育成する学校『千曲川ワインアカデミー』にてブドウ栽培・醸造・ワイナリー経営について学ぶ。
2020年『日本ワインなび』を開設。
2021年 JETROに附置する農林水産省・食品の輸出・プロモーション機関の事業で日本ワインの認知業務に携わり、海外向けに日本のワイナリー紹介記事を執筆。
2024年より千曲川ワインアカデミー倶楽部公式HP『生産者ストーリー』執筆。
同年 北海道余市町登に3.4haの農地を取得し、vineyard開設中。
日本ワイン検定出題作成委員
LDV日本ワインLover講座主任
・ワインスクール『レコール・デュ・ヴァン』講師紹介ページ
・Facebook
・note