日本ワインなび

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日本ワインを支える人たちを訪ねて
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ドメーヌ・モン代表 山中敦生さんに学ぶ
「人に優しく、自分にも優しく」
(全7回)

第3回「一種類のみを栽培している理由」

掲載日:2024年2月24日

一種類のみを栽培している理由

田口「ワイン用ブドウを栽培する方たちは、リスクヘッジという意味もあって複数の品種を栽培する方が多いと思います。もしこの種類がうまくいかなくても、これが残ったからいいか…みたいな感じで。そういう意味では、山中さんの畑はピノ・グリ種類のみなので、怖くないですか?」

山中「リスク的にはあるといえばありますけど、うちは1.6haですから。色々な品種を栽培している方ももちろんいらっしゃいますけど、1.6haくらいだったら、自分的には同じタイミングで効率的に作業できるのでいいかなと。惑わされずに一種類だけ見ていればいいので。そういう面では逆にすごくやりやすいです。」

田口「確かに一種類の方が作業効率はいいですよね。」

山中「曽我さん(※1)のところはピノ・ノワールしか植えていないじゃないですか。そこで研修していたので、自分の中で得た体感というか、一種類の方がやりやすいし、しっくりくるっていう感じです。」

田口「山中さんが修行していたのは一種類だけの畑だったから、むしろその方が自然ということですね。」

山中「あとは違う意味のリスク回避というか、ワイナリーが乱立する中で、『ドメーヌ・モンはピノ・グリ』という方がフィロソフィー的には消費者に伝わりやすいと思っています。」

田口「新しいワイナリーがどんどん出来ていく中で、山中さんはどこにも交わらないというか、他と一緒にならない感じですものね。そういう意味で、すごい成功例と言えますよね。」

山中「成功しているのかどうかもわからないですけど(笑)」

ブドウ栽培でこだわっていること

田口「ブドウ栽培でこだわっていることがあれば、教えていただけますか?」

山中「日本らしいワインを表現する中で、やっぱり栽培が重要になってくると思っています。『繊細で複雑』というところに持っていこうとすると…、複雑性は何で出るかといえば、色々な酵母や菌が付いた方が複雑性が出ます。殺虫剤や殺菌剤を撒かない方がどんな虫も菌も付くわけです。」

田口「それで有機栽培をされているのですね。」

山中「はい。日本らしいワインを表現するには有機栽培が良いと思っています。それでうちはボルドー液しか撒いていません。(休眠期には1回石灰硫黄合剤を撒いている)どうしてもボルドー液を撒かないとベト病が出るので、必要最低限散布しています。あとはできるだけそういう菌が来るような栽培をしています。」


畑にはブドウの搾りかすが撒かれている

ブドウ畑を病害から守ってくれる北風

田口「有機栽培を含めブドウ栽培で取り分け苦労されたことはありますか?」

山中「そうですね、一通り苦労はしています(笑)」

田口「病害についてはいかがですか?」

山中「基本的に病害はベト病(※2)さえ気をつけていれば大丈夫です。ベト病はボルドー液で防げますし、他の病害はそこまで出ていないので。」

田口「そうでしたか。」

山中「病害をあまり心配しなくても良い理由の一つが『風』です。今も北風がすごく入ってきています。」

田口「確かに。気持ちいいですね。」

山中「病害は出づらいけど、山に囲まれているので色々な虫が来ます。手で潰すしかないので、その辺はちょっと大変な社会です。」

(つづく)

※1曽我貴彦…北海道余市郡余市町を代表するワイナリーの一つであるドメーヌ・タカヒコ代表
※2ベト病…カビ(糸状菌)による代表的な病気の1つ。

この記事の著者 / 編集者

田口あきこ(日本ワインなび編集長)

ホームパーティが好きなことから、より良いおもてなしをするためにワインを学び始める。2015年にワインスクール『レコール・デュ・ヴァン』のインストラクター養成講座にて講師に抜擢。
2018年 ワイナリー経営者を育成する学校『千曲川ワインアカデミー』にてブドウ栽培・醸造・ワイナリー経営について学ぶ。
2020年『日本ワインなび』を開設し、編集長として運営を行う。
2021年 JETROに附置する農林水産省・食品の輸出・プロモーション機関の事業で日本ワインの認知業務に携わり、海外向けに日本のワイナリー紹介記事を執筆。
日本ワイン検定 出題作成委員
ワインスクール『レコール・デュ・ヴァン』講師紹介ページ
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