第6回「家を守る、そして複数の農業に取り組んでいく」
掲載日:2023年2月25日
児玉家住宅は人との繋がりが生まれる有難い環境
田口「興味本位でお聞きしたいのですが、有形文化財のお宅の一員であるというのは、実際にどんな感覚なのでしょう?」
寧「たまに見学に来られる方がいらしたり、カフェに来られる方がいたり。色々な繋がりができてありがたいです。それから、実家で農業ができるというのは恵まれた環境だと思います。」
田口「最近、寧さんが改築したカフェをオープンされたそうですね。奥さま手作りのドイツ仕込みケーキをと或る記事で拝見しました。一度食べてみたいです。」
寧さんが改築して2022年6月にオープンしたカフェ。ドイツ人の奥さま(アニーさん)が無農薬野菜や玄米を使用したランチ、ドイツスタイルの100%米粉のケーキなどを提供している。
家を守る、そして複数の農業に取り組んでいく
田口「寧さんはワインだけでなく、お米や野菜も作っているから色々な方がワインのお客様になりえますよね。例えば無農薬のお米を買いに来た方がついでにワインを買っていくこともありそうですよね?」
寧「はい。そしてその逆もしかりですね。」
田口「寧さんの生活の基本柱はお米、野菜、ワイン用ブドウ造りの3つでしょうか?」
寧「シャインマスカットや薪造りもやっています。後は少しだけ家の修理や改築に時間をかけています。不思議なことですけど、北海道で学んだ大工仕事が今になって役立っています。
田口「取り組むカテゴリが多いと忙しそうですね?」
寧「季節によってそれぞれ時間のかけ方が違ってきます。ワインについて言えば、もともとは玉村さんの勧めで父がワイン用ブドウを植え始めたことが始まりです。僕はこの家を守ること、そしてお米や野菜などもひっくるめてやっていこうと思っています。この家のことや私の生き方に賛同してくださる方に買っていただけたら嬉しいです。こちらに来られた時に、お土産として買って行ってもらえたらいいですね。」
Goes around comes around
田口「取材の最後に、座右の銘や好きな言葉があったら教えてもらえますか?」
寧「”Goes around comes around.”というオーストラリアで聞いた言葉があります。
自分のやった事は良いも悪いも周り回って結局また自分に返ってくるという意味だと思います。」
田口「因果応報みたいな意味ですね。」
寧「旅をしている人は他の人から助けられる場面が多いです。お金が絡んでいなくても、優しくしてもらえることがあります。見返りを求めるものではなく、その瞬間だけに与えられる優しさの循環というか。そういうものが人間の中にもあると思います。自分も心の内面に気をつけていないといけない、と気づかされますね。」
(おわり)
編集後記
子どもの頃の農業経験、建築技術、有機農法、無農薬栽培…、寧さんが身に着けてきたのはどれも生きるのに必要な術ばかり。時には社会から取り残されていると感じて悶々とした日々もありましたが、ご自身の行動力で抜け出すことができました。
長時間の取材を通して、寧さんから感じたのは「逞しさ」。自分に欠けているものだと感じるとともに、「逞しく生きるための術」について考える機会を頂きました。
この記事の著者 / 編集者
田口あきこ(日本ワインなび編集長)
ホームパーティが好きなことから、より良いおもてなしをするためにワインを学び始める。2015年にワインスクール『レコール・デュ・ヴァン』のインストラクター養成講座にて講師に抜擢。
2018年 ワイナリー経営者を育成する学校『千曲川ワインアカデミー』にてブドウ栽培・醸造・ワイナリー経営について学ぶ。
2020年『日本ワインなび』を開設し、編集長として運営を行う。
2021年 JETROに附置する農林水産省・食品の輸出・プロモーション機関の事業で日本ワインの認知業務に携わり、海外向けに日本のワイナリー紹介記事を執筆。
日本ワイン検定 出題作成委員
・ワインスクール『レコール・デュ・ヴァン』講師紹介ページ
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