第5回「決して甘くなかったワイン用ブドウ有機栽培」
掲載日:2023年2月25日
ボルドー液のタイミングがずれるだけで甚大な被害に
田口「しかし、無農薬栽培や有機栽培では苦労されることも多そうですよね?実際にやってみていかがですか?」
寧「はい。無農薬栽培のお米、有機栽培のワイン用ブドウ、どちらでも苦労しています。ワイン用ブドウについては、今年の収穫量を見るとやっぱりボルドーだけでやるのは難しいなと感じました。ボルドー液はタイミングを見て丁寧にやらないといけない。甘くないんだなと思いました。」
田口「ボルドー液のタイミングが多少ずれるだけで被害が出てしまうということですね?」
寧「丁寧にやらないと、或るタイミングですかっとやられてしまうんです。」
慣行栽培と有機栽培の収穫量の差
田口「寧さんが戻られる前、お父様は慣行栽培をされていたのですよね?」
寧「はい。父は慣行栽培でやっていて、4年前に私がきてボルドーと石灰硫黄合剤だけに変えました。」
田口「慣行栽培と比べて収穫量に差は出ましたか?」
寧「やはり収穫量は減っています。慣行栽培では一反で500kg採れていました。僕が始めた年が400kg、去年が350kgでした。」
田口「やはり収穫量は少し減ってしまうのですね。今年(2022年)の収穫量はいかがでしたか?」
寧「今年は良い年だと思っていたら、100kg切ってしまいました。梅雨が明けたからいいやと思ってボルドー液の散布を1回空けてしまいました。たぶんそれが原因です。あの時に打っておけばよかったです。」
田口「一度散布できなかっただけで収穫量がガクッと減ってしまうということですね。」
寧「日照量と降水量が多かった等の理由で、1粒1粒の実が大きくなった結果、病気が入ったらパーンと割れて全部ベト病にやられてしまったのです。」
失敗を繰り返しながら一つ一つ学んでいく
寧「とは言っても、ボルドー液だけでもしっかり収穫量が取れる人もいらっしゃるので、ちゃんとやっていかなければいけないなと思いました。」
田口「有機栽培のプロフェッショナルと謳われている方も、きっと何年も経験を積み重ねて今に至っていらっしゃるのでしょうね。」
寧「そうですね。米造りも同じですが、失敗の繰り返しで。ここでベト病をとりながら、『とったところで全部だめだろう』なんて思いながら。来年は傘をつけるなどして対応しようと考えています。」
田口「一房ずつ傘を被せるということですよね。」
寧「はい。自然のままやろうとすると手間もかかります。でも農薬を使っても大変なことはあるはずですからね。」
(つづく)
この記事の著者 / 編集者
田口あきこ(日本ワインなび編集長)
ホームパーティが好きなことから、より良いおもてなしをするためにワインを学び始める。
2015年 ワインスクール『レコール・デュ・ヴァン』の講師に抜擢。
2018年 ワイナリー経営者を育成する学校『千曲川ワインアカデミー』にてブドウ栽培・醸造・ワイナリー経営について学ぶ。
2020年『日本ワインなび』を開設。
2021年 JETROに附置する農林水産省・食品の輸出・プロモーション機関の事業で日本ワインの認知業務に携わり、海外向けに日本のワイナリー紹介記事を執筆。
2024年より千曲川ワインアカデミー倶楽部公式HP『生産者ストーリー』執筆。
同年 北海道余市町登に3.4haの農地を取得し、vineyard開設中。
日本ワイン検定出題作成委員
LDV日本ワインLover講座主任
・ワインスクール『レコール・デュ・ヴァン』講師紹介ページ
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