第2回「日本社会と自分の生き方とのギャップに悶々とした日々」
掲載日:2023年2月25日
日本社会と自分の生き方とのギャップに悶々とした日々
田口「寧さんはオーストラリアで滞在中、大道芸でお金を稼いでいたそうですね。一般的な日本人と違って、現在も型にはまらない生き方をしているように見えますが、不安になったことはありませんか?」
寧「僕は埼玉県にある校則やテストの無い学校に通っていたせいか、卒業後も同年代の人達とは違う価値観を持って社会に出たところがあったと思います。そのため、自分が好きで取り組んでいた大道芸をやっていた時、不安はありませんでした。しかし、日本に帰って来て大道芸をやってみたところ、うまくいかなくて不安になりました。社会から取り残されていると強く感じ、鬱で3ヶ月間、悶々としていました。」
オーストラリアで大道芸をしていた時の写真(児玉寧さんより提供)
悶々とした気持ちから解き放たれたきっかけ
田口「そんなことがあったのですね。辛い日々からどうやって抜け出したのですか?」
寧「大道芸はひとまず置いておいて、英語を活かした仕事をしようと思いました。夏はラフティング、冬はスキーのレッスン、雪山のガイドをしてニセコのアドベンチャー会社で働くことにしました。その仕事が始まるのが12月だったので、前のめりしてWWOOF(※1)のサイトでニセコ入りしました。WWOOFのサイトに登録すると、世界中の有機農家のところに居候できるんです。」
田口「その行動のおかげで悶々とした気持ちから解き放たれたということでしょうか?」
寧「はい、そうですね。体を動かしたのも良かったのだと思います。オーナーやWWOOFer(※2)の方たちが僕の悶々とした気持ちを紛らわしてくれました。」
自分が求める生き方を北海道で再確認できた
寧「WWOOFで行った場所は、イチから原野を開墾していくガーデンでした。ニセコに来た時に、“僕はこういうものを求めていた”、と思いました。オーストラリアにいた頃、システム化され過ぎてしまっている以外のものに触れる機会がありました。大道芸でお金を稼いで生活して…というような生き方はできていましたが、もっと基礎の部分を手作りしている人たちを見てきました。土臭くて、自分たちで作っていく。こういう生き方ってアリなんだと思いました。」
田口「オーストラリアで見た“基礎から手作りする生き方”、つまり寧さんの求める生き方をニセコで再確認できたというわけですね。最近の世の中では、悶々としている若者が多いように感じますが、寧さんはどう思いますか?」
寧「彼らの気持ちがわかりますね。僕の場合、そのままの生き方でも良いという突き抜けられる場所が北海道にあった。今の社会はきれいすぎてしまっていて、失敗できないのが息苦しいと思います。外国ではこんな暮らし方をしている人はいくらでもいるのですが、日本は心理的な自由度が低いですよね。」
田口「確かに失敗できない雰囲気はありますよね。寧さんのお話を聞いて初めて“心理的な自由度”について考えさせられました。」
(つづく)
※1 WWOOF…World Wide Opportunities on Organic Farms「世界に広がる有機農場での機会」の頭文字。1971年にロンドンで設立されたNGOで、その後多くの国に広まっている。有機農場等のホストと、そこで手伝いたい・学びたいと思っている人とを繋いでいる。
※2 WWOOFer…WWOOF会員となった人、ホストのところでWWOOFの体験をする人。
この記事の著者 / 編集者
田口あきこ(日本ワインなび編集長)
ホームパーティが好きなことから、より良いおもてなしをするためにワインを学び始める。
2015年 ワインスクール『レコール・デュ・ヴァン』の講師に抜擢。
2018年 ワイナリー経営者を育成する学校『千曲川ワインアカデミー』にてブドウ栽培・醸造・ワイナリー経営について学ぶ。
2020年『日本ワインなび』を開設。
2021年 JETROに附置する農林水産省・食品の輸出・プロモーション機関の事業で日本ワインの認知業務に携わり、海外向けに日本のワイナリー紹介記事を執筆。
2024年より千曲川ワインアカデミー倶楽部公式HP『生産者ストーリー』執筆。
同年 北海道余市町登に3.4haの農地を取得し、vineyard開設中。
日本ワイン検定出題作成委員
LDV日本ワインLover講座主任
・ワインスクール『レコール・デュ・ヴァン』講師紹介ページ
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