日本ワインなび

日本ワインの魅力を総合的に発信するサイト

日本ワインを支える人たちを訪ねて
心熱きプロフェッショナルに学ぶ人生の道しるべ

株式会社ジオヒルズ
ジオヒルズワイナリー 醸造責任者
富岡隼人さんに学ぶ
「未来へ繋げる視野と行動力」
(全7回)

第7回「小諸市の誇れる文化を未来へ繋げる」

掲載日:2021年7月19日

ワイン文化を未来へ繋ぐ会

富岡 僕は「ワイン文化を未来へ繋ぐ会」という団体の代表を務めています。長野県のワインバレー構想によって、ワイナリーがどんどん増え、人が集まってきて、集積地として固まりつつはあります。

田口 千曲川ワインバレーは長野で一番ワイナリー数が多い産地になりましたものね。

富岡 次は質などの問題に直面します。ワイナリーとは一代で終わる事業ではないので、次の人、次の世代にどうやって繋げるかを考えています。この辺りに住んでいる子供たちもワイン自体のことは知っていても、「この地域がどんな風に盛り上がっているか」ということまでは知らないわけです。
小さい子たちが栽培に触れる機会を与えて、少しでも興味を持ってもらえたら。いつか地元を離れたとしても地元に誇れる文化があることを知ってもらえらたら。そういう想いで、地元の小学生と高校生を集めてそれぞれ小学生と高校生でペアになってもらい、協力して苗木を植えてもらいました。

田口 次世代に伝えていくことを考えている方は多いと思うのですが、実際に行動に移されていて、流石ですね。


ジオヒルズワイナリー公式HP『「ワイン文化を未来へ繋ぐ会」活動報告Vol.1』より出典

次の世代が活躍できる場を提供する

富岡 父が続けてきた事業を僕が継いで。僕が立ち上げた事業を自分の子どもが継いでくれたら嬉しいですけど、まずは次に繋げられる活動ということで、小学生と高校生には栽培から醸造までやってもらっています。高校生は商業高校の生徒なので、一年育ててもらったブドウでワインを造って、オリジナルのラベルを作成、販売まで手掛けてもらっています。
一つのブランド作り、販売することの大変さを少しずつ勉強してもらえればと。まだまだ内々の会ではありますが、地域として盛り上げていけたら。僕はワイナリー運営と同時に、次の世代に継いでいく役割を果たしていけたらと思っています。

田口 小諸市の子供たちがいつか地元を離れることがあっても、富岡さんのご兄弟のようにいつかまた集結して、それぞれの得意な分野で力を発揮していけると良いですね。

富岡 もし地元を離れて外へ出て行って挫折することがあっても、ブドウ畑もあるし、飲食店、宿泊もやっているので活躍できる場を提供したいと思います。

田口 みんなが帰って来たくなる、自慢できる地元ですね。

新しい風を入れながら、元々あるものの価値を再認識してもらいたい

富岡 地元の人ほど、「小諸には何にもないじゃん」なんて言うんですけどね。当たり前になり過ぎて、価値が薄れていってしまってるかもしれないので、そういう意味でワインという新しい風を入れながら元々あるものの価値を再認識してもらえればと思っています。

田口 小諸市の未来は明るいですね。

富岡 まだまだ地元のワイン消費は伸びていないんです。だからやっぱり東京などの方たちに外から盛り上げていただいて、且つ地元の子どもたちからアプローチをかけて。そうやって浸透させていけたらと思います。

僕にとってワイン造りとは

田口 富岡さんにとってワイン造りとは?

富岡 子どもを育てるような感じですね。栽培が子どもの人格作り、やりようでいかようにでもなる。手を掛ければ掛けただけ良いものに仕上がります。そういう点で醸造は、嫁入り前の娘を結婚式のために化粧してあげるような感じですね。

田口 富岡さんは愛に溢れた方なんですね。

富岡 僕は子供が大好きなんです。それから、家族には本当に感謝しています。ベトナムから帰ってきた後、大変な時もありましたが、そこで支えてくれたのは家族でした。
小諸市が子供たちに誇れるような場所であるように

田口 お子さんたちの成長を見守り、ブドウの成長を見守り、ジオヒルズワイナリー、地域全体の成長を見守り、そしてそれらを次に繋いでいく、ということですね。

富岡 僕は「繋げる役割」だと思っているので、もしかしたらジオヒルズの味は決まらないまま次の世代に託していくのかもしれません。経験を伝えて繋げていけたら。小諸市が子どもたちに誇れるような場所でありたいと願っています。

(おわり)

編集後記

子供の頃から手伝っていたブドウ畑をお父様から受け継ぎ、ワイン造りの世界に入った富岡さん。2018年にワイナリーを立ち上げたばかりなのに、未来を見つめてすでに次の世代に繋げていくためのアクションを起こされています。

何か新しいことを始めた時、その瞬間のこと、目の前のことだけしか見えなくなりがちですが、富岡さんは何十年先のことまで見つめながら今を生きている。そこが代々の事業を受け継ぐ責務を遂行している彼ならではの尊敬すべきところだと思いました。

長時間の取材を通して、私は富岡さんから「未来へ繋げる視野と行動力」という大切なことを教えていただきました。

彼の行動力の源は、ご両親の背中を見て育った子供の頃の経験、「家族を大切にして、年長者を敬う」心の豊かさの大切さをベトナムで再認識したこと、そして彼の愛情深い人柄に起因しているのだと感じました。

ジオヒルズではワイナリー名だけでなく、ワイン名にも奥様の故郷に因んでベトナム語が使用されています。小諸産シャルドネ100%のスパークリングワイン「Hạnh phúc(ハィン・フック)」はベトナム語で「仕合わせ」。仕合せとは「幸せ」の他にも「運命」「巡り合わせ」という意味もあるそう。ブドウを育てていただいた「仕合せ」、このスパークリングワインを造らせていただいた「仕合せ」、そして皆さまに飲んでいただける「仕合せ」、皆さまの心の一端にこのワインが添えられたなら、これほど「仕合せ」なことはないそうです。(下のラベル参照)

ご家族のみなさまが一つになりそれぞれの得意分野を発揮する現在の事業は、いつか次の世代に受け継がれ、そこに加わった人たちの新たな力が加わり、更に大きく堅固ものになっていかれることと思います。益々の発展を心より祈念しております。


Hạnh phúc Sparkling 2019(ハィン・フック・スパークリング)小諸産シャルドネ100%
ジオヒルズワイナリー公式HP『ブログ / 初のスパークリングワイン発売!』より出典

この記事の著者 / 編集者

田口あきこ(日本ワインなび編集長)

ホームパーティを開催することが多いことから、より良いおもてなしをするためにワインを学び始める。2015年にワインスクール『レコール・デュ・ヴァン』のインストラクター養成講座にて講師に抜擢。
2018年春からワイナリー経営者を育成する学校『千曲川ワインアカデミー(長野県東御市)』にてブドウ栽培・醸造・ワイナリー経営について学び、講師業の傍ら、超新規ワイナリーの立ち上げ・畑仕事のお手伝いにも出掛ける。
2020年『日本ワインなび』を開設し、編集長として運営を行う。
ワインスクール『レコール・デュ・ヴァン』講師紹介ページ
Facebook
note

この記事をシェアしませんか?

LINE
日本ワインを支える人たち テイスティング 日本ワイン×お家レシピ 日本ワインの基礎知識