日本ワインなび

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株式会社ジオヒルズ
ジオヒルズワイナリー 醸造責任者
富岡隼人さんに学ぶ
「未来へ繋げる視野と行動力」
(全7回)

第5回「初めて見舞われてわかった雹害の恐ろしさ」

掲載日:2021年7月19日

初めて見舞われてわかった雹害の恐ろしさ

田口 ブドウ栽培で特に苦労されたことはありますか?

富岡 特別苦労したことは殆どありませんでした。

田口 それだけワイン用ブドウ栽培に恵まれた環境ということですね。

富岡 しかし2019年8月、この御牧ケ原だけ集中的にに雹が降りました。2019年といえば、この辺りの他の地域では特に白はビッグヴィンテージ、グッドヴィンテージと呼ばれています。でも、ここの圃場は目も当てられない状態でした。

田口 収穫を目前にして雹でブドウが傷ついて、収量がかなり少なくなってしまったということですよね?

富岡 収量は例年の10分の1以下になってしまいました。2018年は良いブドウができていたので、これからという時に出鼻をくじかれた感じでした。2018年は6種類のワインを造れたのに、2019年はたった2種類になってしまいました。

人にもブドウにも支えられて

田口 ブドウはどこかから買い取られたのですか?

富岡 はい、2019年は自社ブドウ100%は無理だったので、市内にいる仲間から若いブドウを頂いて造らせていただきました。天候に左右されるのはこの仕事をしていて本当に大変な点です。それが諸に当たった年でした。人にも支えられ、ブドウにも支えられ、なんとか乗り切りました。

スパークリングワインの製造に力を入れる

田口 メルロ、ピノ・ノワール、ソーヴィニヨン・ブラン、ピノ・グリ、ゲベルツトラミネール、こちらでは色々な品種を栽培されていますよね。最近では、ムニエを植え始められたそうですが、それはどうしてですか?ムニエを育てている方は珍しいですよね。

富岡 今後はスパークリングワインの製造に力を入れていきたいと思っているからです。父がシャンパン好きというのもあるんですけどね。シャルドネ、ピノ・ノワールは植えていたので、最後の3つ目を植えようということになりました。

田口 なるほど、そういうことでしたか。

富岡 それから、中棚荘でブライダルをやっているのでお祝い事でも使えるかなと。今後ワイナリーが増えていき、どんどんワインが生産されるわけですが、一方でワインの消費は緩やかな右肩上がりですよね。そのような状況下でもスパークリングワインの需要は上がっていくのではないかと思い、差別化という意味で取り組むことにしました。
穂木は北海道までフェリーに乗って取りに行ってきました。それを帰ってきてから接ぎ木してもらって。3000本できたので今年と来年で1500本ずつ植えようという計画です。

田口 ここ最近は新型コロナの影響で大勢で集まる機会が少なくなっていますが、数年後にちょうどコロナが明けた時期には、また大勢で集う機会が戻り、スパークリングワインの需要とちょうど合いそうですね。

富岡 そうですね。2019年ヴィンテージからシャルドネ100%のスパークリングワインを造り始めました。1年熟成のものは先週リリースしたところです。3年熟成タイプはピノ・ノワールとシャルドネをブレンドして寝かせているところで、2023年にリリース予定です。今年植え始めたムニエが収穫できるようになれば、3品種でブレンドしていこうと考えています。

田口 世の中が落ち着いた頃にぜひその3年熟成スパークリングワインで乾杯したいですね。


ジオヒルズワイナリー初のスパークリングワイン
Hạnh phúc Sparkling 2019(ハィン・フック・スパークリング)小諸産シャルドネ100%

ブドウに敬意を払いながら試行錯誤して

田口 富岡さんはどんなワイン造りを目指していますか?

富岡 まだ探している途中です。最初にいきなり「ジオヒルズのワインはこういうスタイルです」、と決めてしまうよりも、今は醸造技術も色々なものが出てきているので、何が合うのかというのを探っている段階です。毎年テーマを変えて造ってみて分かることもあります。究極でいうと、造りたいワインを目指すには、やはり栽培の段階からアプロ―チしていくしかないなと思います。本当に良いブドウができれば醸造はあまり手をかけなくてもいいわけで。
もともとワインは嗜好品で、人間が生きていく上では必要ではないものです。それを造らせてもらっているわけですから、最低限良いブドウを栽培してあげないとブドウさまに失礼かな。ちゃんと管理した上で農薬をどういうところでアプローチをかけて減らしていくか、なんて考えながら。僕は今そういうところです。毎年試行錯誤の上で、安全に造っています。

(つづく)

この記事の著者 / 編集者

田口あきこ(日本ワインなび編集長)

ホームパーティを開催することが多いことから、より良いおもてなしをするためにワインを学び始める。2015年にワインスクール『レコール・デュ・ヴァン』のインストラクター養成講座にて講師に抜擢。
2018年春からワイナリー経営者を育成する学校『千曲川ワインアカデミー(長野県東御市)』にてブドウ栽培・醸造・ワイナリー経営について学び、講師業の傍ら、超新規ワイナリーの立ち上げ・畑仕事のお手伝いにも出掛ける。
2020年『日本ワインなび』を開設し、編集長として運営を行う。
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