第2回「地元の人たちと作り上げたブドウ畑」
掲載日:2022年10月19日
全てが手作りのブドウ畑
小田原ワインプロジェクトの圃場は開墾から始まり全てが手作り。伐採伐根・整地は建築会社を初め、地元のさまざまなジャンルのプロフェッショナルたちが力を貸してくれた。刈り払いをする時は、農地をリニューアルする団体が刈払い機を持ってきてくれた。高木を切る時は安全を確保するため、森の整備をするボランティア団体が駆けつけてくれ、また知り合いの造園業者が12トンのユンボを用い、2日間で数十本はあった全ての切り株を伐根してくれたという。
また、もともと切り開いた圃場と道を1本挟んだところに言わばジャングルがあり、そこも第2の圃場として2022年3月に数十人で切り開いた。
垣根仕立ての支柱の打ち込みはとび職の仲間が手伝ってくれた。ワイヤーももちろん自分たちで張った。圃場には簡易のお手洗いが設置されており、それも知り合いの業者が無償で置いてくれているという。原則、月水金の午前中、来られる人が来て畑のお世話をしている。
伐採された後の切り株
メイヴとの運命の出会い
圃場は1ヘクタール、植栽1,000本。主に栽培されているブドウ品種はメイヴ。混醸を考えて他にも5種類ほど植えている。(ヤマ・ソーヴィニヨン、シラー、カベルネ・フラン、ビジュノワール、メルロ)
加藤さんとメイヴとの出会いは、市長時代に遡る。そのご縁は小田原市の農政課課長が運んでくれた。課長はメイヴ発見者の田中利忠さんに農地を貸している地主さんと知り合いだったのだ。それで、茅ヶ崎市にある田中さんの圃場を課長と一緒に訪ねてメイヴの存在を知った。
「ここのところ、日本ワインブームで苗木が手に入らないということはずっと聞いていました。既存の品種だと栽培が難しそうだし、3~5年待ちで入手困難。どうしようかと思っていたところ、田中さんから『苗はあります。無農薬でいけます!』と聞いて、この出会いはきっとご縁だなと思って即決しました。」
と、メイヴとの出会いを加藤さんは嬉しそうに語る。
メイヴが日本で発見されたのは2019年、プロジェクト開始は2020年。奇跡的にタイミングが合ったというわけだ。
圃場を案内してくれる加藤憲一さん
メイヴの仕立て方
メイヴの仕立てについて加藤さんに聞いてみた。
「メイヴは樹勢が強いので、他のワイナリーのように仕立てると枝が混んでしまうのではないかと。棚栽培にしようか垣根栽培にしようか迷いました。棚にして伸ばしてやると言う考えもありましたが、枝の整理があまりにも大変そうなので垣根にしました。」
以前に見学したことのある、長野県のワイナリーのスマート・ダイソンという仕立て方をメイヴの栽培に採用したとのこと。普通より高い位置でフルーティングワイヤーを張り、上下に交互に枝を伸ばして着果させる。下に伸びる枝があると、全体の樹勢が収まるという考えだ。
(つづく)
この記事の著者 / 編集者
田口あきこ(日本ワインなび編集長)
ホームパーティが好きなことから、より良いおもてなしをするためにワインを学び始める。
2015年 ワインスクール『レコール・デュ・ヴァン』の講師に抜擢。
2018年 ワイナリー経営者を育成する学校『千曲川ワインアカデミー』にてブドウ栽培・醸造・ワイナリー経営について学ぶ。
2020年『日本ワインなび』を開設。
2021年 JETROに附置する農林水産省・食品の輸出・プロモーション機関の事業で日本ワインの認知業務に携わり、海外向けに日本のワイナリー紹介記事を執筆。
2024年より千曲川ワインアカデミー倶楽部公式HP『生産者ストーリー』執筆。
同年 北海道余市町登に3.4haの農地を取得し、vineyard開設中。
日本ワイン検定出題作成委員
LDV日本ワインLover講座主任
・ワインスクール『レコール・デュ・ヴァン』講師紹介ページ
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