第1回「小田原ワインプロジェクト始動」
掲載日:2022年10月19日
2021年3月28日植樹祭の集合写真(加藤憲一さんより提供)
小田原ワインプロジェクトのはじまり
加藤憲一さんは2008年に小田原市長選で初当選。「市民派」として親しまれ、2020年までの3期12年間に渡りその職位を務めた。市長を退任する頃から加藤さんには心に秘めていたことがあった。それは、「荒れ地を何とかしたい」ということ。
市長を退任した翌月(2020年6月)、と地元の人たちとの飲み会の席で耕作放棄地の話題になった。
「柑橘もいいけど、どうせやるなら浪漫のあるワインがいいよね。」
「荒れ地を開墾してワイン用ブドウを栽培できたらいいよね。」
この何気ない会話が、小田原ワインプロジェクトの全てのはじまりとなった。
圃場はFMおだわら代表取締役 鈴木伸幸さんがもともと果樹園として持っていた小田原市石橋の土地、そして隣接する耕作放棄地を借り受けることになった。鈴木さんを含む4名が立ち上げメンバー(※1)となり、加藤さんはプロジェクト全体の先導役となった。
前小田原市長・小田原ワインプロジェクト世話人 加藤憲一さん
耕作放棄地が絶景のブドウ畑に
小田原ワインプロジェクトが実際に動き出したのが2020年9月。それから約1年半が経過した2022年4月、私は圃場を訪問する機会に恵まれた。到着するや否や、大海原を見下ろすダイナミックな絶景に言葉も出ないくらい感動した。自分自身も海の近くで暮らしているが、雄大な景色を見てここまで感動したのは久しぶりのことだった。桜が咲き乱れ、晴れ渡る空の下、ボランティアの皆さんが植えて2年目になるブドウの世話を手際よく行っていた。
小田原ワインプロジェクトのFacebookグループには400名以上が登録、多い時は100名以上が共同作業に参加しているという。
「おはようございます!」
加藤さんが爽やかな笑顔で迎えてくれた。「前小田原市長」という肩書に私は緊張していたが、加藤さんは気さくな方でさまざまな質問に快く答えてくれた。(とはいえ、やはりそのカリスマオーラは尋常ではなかった。)
果樹園を整地し、更に木立を開墾して作られた圃場。今となっては信じられないが、最初は海など全く見えなかったそうだ。木を伐根し始めたのが2020年12月。2月の初めには全ての木を切り終え、目の前に絶景が広がったという。
2022年9月4日撮影
伐根前は上の写真向かって右の小屋も海も全く見えなかったという。左の高木は記念に1本だけ残されたもの。作業がどれだけ大掛かりなものだったか伺い知れる。
※1 小田原ワインプロジェクト立ち上げメンバー…(敬省略 アイウエオ順)石井久喜、神戸さえ、鈴木伸幸、樋口敦士
(つづく)
この記事の著者 / 編集者
田口あきこ(日本ワインなび編集長)
ホームパーティが好きなことから、より良いおもてなしをするためにワインを学び始める。
2015年 ワインスクール『レコール・デュ・ヴァン』の講師に抜擢。
2018年 ワイナリー経営者を育成する学校『千曲川ワインアカデミー』にてブドウ栽培・醸造・ワイナリー経営について学ぶ。
2020年『日本ワインなび』を開設。
2021年 JETROに附置する農林水産省・食品の輸出・プロモーション機関の事業で日本ワインの認知業務に携わり、海外向けに日本のワイナリー紹介記事を執筆。
2024年より千曲川ワインアカデミー倶楽部公式HP『生産者ストーリー』執筆。
同年 北海道余市町登に3.4haの農地を取得し、vineyard開設中。
日本ワイン検定出題作成委員
LDV日本ワインLover講座主任
・ワインスクール『レコール・デュ・ヴァン』講師紹介ページ
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