第5回シャルドネ~日本の北から南まで~【Vol.1】
2021年7月2日
テイスターが選んだ日本のシャルドネ
画像左より
- CHARDONNAY 樽醗酵 2018(山崎ワイナリー)/ブドウ: 北海道三笠市達布産【750mℓ・3,000円】
- Kisvin Chardonnay2019(Kisvin Winery)/ブドウ: 山梨県甲州市産【750mℓ・4,000円】
- TOMOÉシャルドネ新月2018(三次ワイナリー)/ブドウ: 広島県三次市産【720mℓ・5,000円】
- 奥出雲ワインシャルドネ2019(奥出雲葡萄園)/ブドウ: 島根県奥出雲産【750mℓ・3,000円】
- 菊鹿シャルドネ2019(熊本ワイン)/ブドウ: 熊本県菊鹿町産 【750mℓ・2,648円】
- 北信左岸シャルドネ リヴァリス2018(メルシャン)/ブドウ: 長野市豊野町 【750mℓ・6,545円】
※全て税抜価格
みなさん、こんにちは。今回は、コロナ禍ということでオンライン開催となります。日本の北から南まで、さまざまなところで造られるシャルドネの比較テイスティングをしていきます。今回のテーマは、日本ワインのシャルドネにしました。
これまで、日本の固有品種である「甲州」「マスカット・ベーリーA」をテイスティングしてきました。それぞれに特有の品種特徴があり、日本ワインの良さを表現しているワインたちでした。
今回、「シャルドネ」を選んだのは、①ワイン専用の国際品種であり、他の国と比較して日本特有の特徴が出ているのか、②品種特徴として、土壌・気候、造り手の意図などがワインに反映しやすいと言われており、日本各地で造られているシャルドネに違いや共通点はあるのか、という2点を検証してみたかったからです。
6本を比較するに際して全て木樽を使ったものにしました。世界的にシャルドネは木樽を使用したものが多いからです。
冷涼地の北海道から温暖な熊本まで、そして大手から中規模ワイナリーと様々な切り口でワイン造りをしているワイナリーのシャルドネを比較してみました。
さて、みなさんにとって日本のシャルドネはどんなイメージですか?
綺麗に造られていて美味しいと思います。ただ、力を入れて造っているものは、価格が高い印象です。5~6,000円を超えてくると、ブルゴーニュのそれなりのワインが買えてしまうので、なかなか悩ましいところです。もう少し買いやすい価格になってくれたら消費者としては嬉しいですね。
一昔前と比べるとシャルドネに限らず、日本ワインの質はすごく向上してきていると思います。シャルドネは世界中で栽培され、日本でも各生産地のものを飲むことができますが、日本のシャルドネは世界の舞台で肩を並べるクオリティだと感じています。
今日は、手頃な2千円台から高価格帯の6千円台までの6つのワイナリーのシャルドネです。中央値は3千円台になります。
1.CHARDONNAY 樽醗酵 2018(山崎ワイナリー)/ブドウ: 北海道三笠市達布産【750mℓ・3,000円】
北は北海道のワインから順にテイスティングしていきましょう。外観は綺麗なレモンイエローですね。まずは乾杯!
熟した果実のふくよかな香りです。
柑橘系よりも、桃などの核果実系の香りです。
果実味がしっかりあって、凝縮した感じがあります。
ハーブの香りや奥に炒ったアーモンドなどの香ばしい香りがします。
余韻に心地よい苦みを感じます。
グレープフルーツの白皮の苦みに似ていますね。
ブドウ樹齢が7年~21年なので、果実味がよく出ているのかもしれません。ホールプレスしているそうですが、ワインにはどのような影響が与えられるのでしょうか?
ホールプレスとは、房ごと選果した後に、除梗せずに搾汁する方法ですね。白ブドウは除梗・破砕時に酸化がすすむのですが、ホールプレス(全房圧搾)によってブドウの酸化を抑え、果実そのものの香りや味わいを重視し、亜硫酸塩の使用を極力少なくしているのだと思います。
北海道の寒冷地なのにブドウが完熟している感じです。溌溂とした酸もしっかりと感じられますね。
十分な日照量があるのでブドウが良く熟していますね。しかも夜間の気温が下がるので酸も残るということですね。
世界のシャルドネでいうと新世界というより、旧世界のフランス寄りと感じますね。樽香がエレガントです。
アメリカのシャルドネはバターやココナッツのようなアメリカンオーク樽からくる甘い香りがありますが、このシャルドネはエレガント系です。軽いお料理が合いそうですね。
生き生きとした酸に合わせてレモンを使ったお料理とか。
ボディもしっかりしているので、アクアパッツァとか。
北海道ですし、魚介系も合いそうですね。
イカのフリットとか。ワインがレモンの役割をしてくれますね。
キューッとくる酸ではなく、柔らかい酸なのでお料理に合わせやすいですね。
アフターの苦みに合わせて菜の花のオリーブオイルソテーも合いそう。
春の山菜の天ぷらだと、酸も苦みも同調しますね。
冷涼な北海道の内陸部にも関わらず、完熟したブドウの凝縮感がしっかりとあり、酸も生き生きしていて、素材を活かしたお料理にぴったりというワインですね。
では、次にいきましょう。
(つづく)
この記事の著者 / 編集者
内田一樹
『テイスティング』コーナー進行役。ソムリエとワイン・エキスパート両方のエクセレンス資格を持つワインのプロ。さらに、栽培・醸造の学校卒業の経歴から、その視点で日本ワインの魅力と可能性を語ります。