日本ワインなび

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心熱きプロフェッショナルに学ぶ人生の道しるべ

ヴェレゾンノート
東山ワイン研究所合同会社
櫻山記子さんに学ぶ
「如何なるハードルにも
正面から挑むタフな精神力」
(全6回)

第6回「日本ならではの新しい味わいを夢見て」

掲載日:2021年5月22日

サンジョベーゼを手除梗するヴェレゾンノート代表の中川さん(左)と櫻山さん(右)(テールドシエルワイナリーにて)

温かいサポートのおかげで

田口 世の中は未だコロナ禍にあり、ふさぎ込む方も多くいらっしゃると思うのですが、櫻山さんがこの状況でも頑張れる理由って何でしょう?

櫻山 畑にいるとコロナのことを忘れます。コロナだからといって畑は待ってくれませんから。ただ、東京からの応援がないのがきついですね。でも地元の方やアカデミー(※1)の受講生の方たちが手伝いに来てくれているので励みになっています。

田口 今日も地元の方やアカデミー6期生の方たちがお手伝いをされていますものね。

櫻山 はい、今日は苗植えを手伝っていただいています。本当に助かっています。

田口 ワイン造りは色々な方たちのサポートがあって成り立つものなのですね。

櫻山 はい。親友がワインのラベルを作ってくれたり、浅草で仕事をしていた時の仲間…、私が所属していた青年会議所、法人会、商工会議所の仲間がヴェレゾンノートの会員になって応援してくださったり。まだ知名度がないので大変助かっています。

私がワインを造り続ける理由

田口 櫻山さんを取材させていただいて、改めてワイン造りの大変さを知りました。ワインを造るための仕事は、ブドウ栽培からヴィンヤード運営まで多岐に渡り、そしてお休みも殆ど取れない…。それでもワインを造りたい、というモチベーションはいったいどこからくるのでしょう?

櫻山 自分のワインが出来た時に毎回思うんですよ。「まだまだだな。次の年こそ!」って。だから終われない。ずっと追い続けていくんじゃないかなと思います。

私が目指すワイン

田口 いくつかの種類のワインを手がけられてみて、櫻山さんはこれからどういうワインを目指していらっしゃいますか?

櫻山 ネッビオーロをイメージした、パワフルでエレガントな明るいワインです。それから先ほども少し触れましたが、スーパータスカンのように、日本ならでは、ヴェレゾンノートならではの新しいセパージュで、新しい味わいのワインを造っていきたいです。ブレンドの可能性ってあると思うんです。枠を超えたブレンドをして、それが日本のスタンダードになっていったら面白いかな、なんて。色んな品種をたくさん混ぜると言うよりは、割と個性のある品種同士をブレンドできたらと考えています。

田口 枠を超えたブレンドが日本のスタンダードに…。いいですね!

櫻山 それからワイン造りにおいては、「何も足さない、何も引かない」これが究極だと思っています。サントリー山崎でお馴染みのコピーですね。

田口 自然のまま、ありのままに造ったワインということですね。

櫻山 はい。一つだけそれと矛盾するんですけど、中川はヴェレゾンノートのネッビオーロでバローロみたいなワインができるかどうか挑戦してみたいと言っています。そのうち、樹齢も高くなってきたら、長熟させてしっかり造ってみたいですね。

私にとってワイン造りとは

田口 櫻山さんにとって、ワイン造りとは?

櫻山 皆さん、同じことを仰るかもしれませんが、今は人生の全てです。おそらくこれからの人生の時間の殆んどをワインに費やしていくと思います。だから、「生きること」と同義語です。
最後に一つだけ。今回は私が先にインタビューしていただきましたが、ヴェレゾンノートはあくまで中川が園主。私一人でワインづくりができるわけではありません。中川のおかげでワインづくりができていると思っています。これからも二人で切磋琢磨しながら、ワイン造りを探求していけたら、最高に幸せです。

(おわり)

※1…千曲川ワインアカデミー(日本ワイン農業研究所 アルカンヴィーニュ)…ブドウ栽培とワイン醸造、およびワイナリーの起業と経営について総合的な知識と実践的な技術を学ぶことのできる、日本で初めての民間ワインアカデミー。玉村豊男氏と小西超氏が立ち上げた。

編集後記

30代半ば、突如莫大な借金を抱えた会社を引き継いだ櫻山さん。「周りの方に迷惑をかけたくないから。13年掛けて完済しました。」と、全く悲壮感を見せずに笑顔で語られていました。しかし、実際その裏にはとてつもないプレッシャー、ご苦労があったことと思います。

社長業からスクール事務局、ワイン造りの道へ。初めのうちは、「君にブドウ栽培なんてできるわけないだろう」と周りの人たちからは言われていたそうです。

特定の地域でしか栽培しにくく、尚且つ熟成にとてつもない年月がかかるネッビオーロ。そんな大変なブドウ栽培も、「うちのワインは変態ワインなんです」とさらりと笑いに変えて、前向きに取り組まれています。

人生という長い道のりに誰かが置いたハードル、自分が置いたハードル、「チャレンジ」という座右の銘のもと、それらに正面から挑む。櫻山さんは私の中で陸上競技選手のようなイメージです。

長時間に渡るインタヴューを通して、「如何なるハードルにも正面から挑むタフな精神力」を櫻山さんから学びました。

困難にぶち当たったとき、櫻山さんのおおらかな笑顔を思い出して、私も道を切り開いていきたいと思います。

取材当日、代表の中川さんがふるまってくれた絶品カレー。カレー屋さんも始めて欲しいくらいの美味しさ。ごちそうさまでした。

この記事の著者 / 編集者

田口あきこ(日本ワインなび編集長)

ホームパーティを開催することが多いことから、より良いおもてなしをするためにワインを学び始める。2015年にワインスクール『レコール・デュ・ヴァン』のインストラクター養成講座にて講師に抜擢。
2018年春からワイナリー経営者を育成する学校『千曲川ワインアカデミー(長野県東御市)』にてブドウ栽培・醸造・ワイナリー経営について学び、講師業の傍ら、超新規ワイナリーの立ち上げ・畑仕事のお手伝いにも出掛ける。
2020年『日本ワインなび』を開設し、編集長として運営を行う。
ワインスクール『レコール・デュ・ヴァン』講師紹介ページ
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