第4回「ビオワインに向く品種~広がるメイヴの可能性~」
掲載日:2022年2月10日
メイヴの初ヴィンテージワイン(2019年)
子どもも安心して触れる無農薬栽培~農福連携も視野に~
田口 耐病性、耐寒性、耐凍性、高温・多湿地域での栽培可能性。メイヴの特性を活かしてさまざまな取り組みができそうですね。
田中 はい、そうですね。例えばヨーロッパではビオワインが流行していますよね。メイヴはまさにそれができる品種です。この近辺の大学生が毎週土曜日になると、授業の一環として栽培を手伝いに来てくれています。 農薬をかけていないので、葉や茎を手で直接触ることができます。 実ができればそのまま口に入れられます。
それから、この近くに社会福祉法人がありまして、こころみ学園のように農福連携をやりたいと仰っています。 子供たちに地元のワイン用ブドウの栽培をしてもらい、 将来は社会福祉施設の中に醸造所を設けてワインを造り、 ちゃんと賃金を払えるようにしたいそうです。
全国の大学・試験場で進むメイヴの研究
田口 DNA解析後、田中さんは日本ブドウ・ワイン学会にこの品種を発表されたそうですね。専門家の皆さんもさぞかし驚いたのではないですか?
田中 山梨大学の先生からも研究依頼があり、来社されて枝を切って持ち帰られました。研究室で研究されるそうです。
それから、大阪府立環境農林水産総合研究所ともメイヴの研究をする予定です。大阪で有名なデラウェアの次に、メイヴが広く栽培されると嬉しいです。
田口 先ほど仰っていた北海道大学も含め、日本全国で研究が進んでいくということですね。
田中 はい。例えばフランスなど幾つかのワイン産地において、夏が暑すぎてブドウの収量が落ちたりしていますが、メイヴは沖縄でも育つわけですから、そういう心配もないわけです。 そういうことをもっと研究して突き進んだら面白いだろうなと思います。
メイヴの苗を育てているところ(株式会社ショーナンの畑、藤沢市)
「琉球ワイン」「丸の内ワイン」「銀座ワイン」
田中 沖縄の話でいえば、収穫したブドウを委託で試験醸造する予定です。つまり「琉球ワイン」というブランドができるわけです。宮古島、石垣島の方たちからも「メイヴを植えたい」という話がきています。3年後には沖縄に醸造所を造る予定です。
田口 「宮古ワイン」や「石垣ワイン」も誕生するかもしれないということですね。 醸造所の建設予定まであるのですね。
田中 はい。(地図を指しながら)ここが石垣、ここが台湾…。輸出ができますよね。 台湾のあたりは亜熱帯気候です。そこでもしうまく栽培できれば、ベトナムやフィリピンでも栽培できることになります。
マンションのベランダでも育つので、実は日大の先生と一緒に大学の屋上で メイヴを育てています。丸の内や銀座ブランドワインを造ろうというわけです。 ビルの屋上でブドウを育てて地元ワインができますね。
(つづく)
この記事の著者 / 編集者
田口あきこ(日本ワインなび編集長)
ホームパーティが好きなことから、より良いおもてなしをするためにワインを学び始める。2015年にワインスクール『レコール・デュ・ヴァン』のインストラクター養成講座にて講師に抜擢。
2018年 ワイナリー経営者を育成する学校『千曲川ワインアカデミー』にてブドウ栽培・醸造・ワイナリー経営について学ぶ。
2020年『日本ワインなび』を開設し、編集長として運営を行う。
2021年 JETROに附置する農林水産省・食品の輸出・プロモーション機関の事業で日本ワインの認知業務に携わり、海外向けに日本のワイナリー紹介記事を執筆。
日本ワイン検定 出題作成委員
・ワインスクール『レコール・デュ・ヴァン』講師紹介ページ
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