第2回「-30℃から+30℃の地で無農薬栽培可能な奇跡の品種」
掲載日:2022年2月10日
左から着色期前・着色期・成熟期のメイヴ
株式会社ショーナン代表取締役 田中利忠さんより提供
メイヴの特性① 耐病性
田口 メイヴの特性について教えていただけますか?
田中 メイヴには面白い特性があります。 一つは「無農薬で育つ」ということです。 実際、メイヴを僕に託してくれた例のお爺ちゃんは、藤沢市内で20年間無農薬栽培してきました。ワイン用ブドウはベト病などの病気にかかりやすいので、農薬を使うのが一般的です。 でもメイヴは農薬なしでちゃんと育つんです。
田口 強い品種なのですね。まるでヤマブドウみたいですね。
田中 はい、ヤマブドウのように強いのですが、DNA鑑定ではヤマブドウの遺伝子はないという結果が出ています。 「おそらくヴィニフェラ系(※1)の原種に近い」とのことです。ヴィニフェラ種は接ぎ木で増やされているので、病気に弱いんですよね。しかし、メイヴは原種に近いから強いということです。神奈川は暖かい所ですが、ここでも病気になりません。我々も今現在、農薬は一切撒いていません。
メイヴの特性② 耐寒性・耐凍性
田中 メイヴには他にも大きな特性があります。なんと -30°の北海道の地でも育ちます。 メイヴを託してくれたお爺ちゃんは北海道大学農学部出身です。それで北海道にいるお友達に20年前に株分けしたことがあるそうです。 札幌の近くのワイナリーに委託醸造してもらってホテルなどに提供しているそうです。
それから、6年前から北海道大学の中でも研究用としてメイヴが植えられています。 お爺ちゃんは大学の後輩にこのブドウを研究して欲しいと託したそうです。 それで北大と弊社と共同してこの耐寒性について研究しているところです。
北海道は寒くて凍害も起こりますので、通常は雪や土の中にブドウを埋めないといけません。でもそういったことは何もしていないそうです。
田口 ヴィニフェラ系でも原種に近いとそこまで強いものなのですかね。
田中 山梨大学の先生によれば、マイナス30℃の寒いところから+30℃で育つ品種は他には無いそうです。通常、植物は休眠するものですが、「メイヴは休眠期間が極端に短いのではないか?」という意見も出ています。
メイヴの特性③ 高温・多湿地域での栽培可能性
田中 もう一つ同時に真逆のこともしているんです。実はメイヴを沖縄でも育てています。 今帰仁村や恩納村の観光ブドウ農園に「育ててみますか?」とお伺いしたところ、「ぜひ育ててみます」ということになりました。
田口 北海道から沖縄まで育つ品種ということですね。
田中 はい。沖縄では一年目の苗でも5〜6m伸びています。 今年には収穫できそうです。
田口 ずいぶん早いスピードで成長しているのですね。
田中 沖縄は暖かいので、通常の2倍の速度で成長するんですよ。もしかしたらメイヴは二期作ができるのではないかという意見も出ています。
(つづく)
※1 ヴィティス・ヴィニフェラ(Vitis vinifera 仏)…ブドウの種の一つ。世界において、ワイン造りに使用されるブドウの大半はこの種に属する。
この記事の著者 / 編集者
田口あきこ(日本ワインなび編集長)
ホームパーティが好きなことから、より良いおもてなしをするためにワインを学び始める。2015年にワインスクール『レコール・デュ・ヴァン』のインストラクター養成講座にて講師に抜擢。
2018年 ワイナリー経営者を育成する学校『千曲川ワインアカデミー』にてブドウ栽培・醸造・ワイナリー経営について学ぶ。
2020年『日本ワインなび』を開設し、編集長として運営を行う。
2021年 JETROに附置する農林水産省・食品の輸出・プロモーション機関の事業で日本ワインの認知業務に携わり、海外向けに日本のワイナリー紹介記事を執筆。
日本ワイン検定 出題作成委員
・ワインスクール『レコール・デュ・ヴァン』講師紹介ページ
・Facebook
・note