第1回「新品種 “メイヴ” 発見のきっかけ」
掲載日:2022年2月10日
株式会社ショーナンの事業内容
田口 田中さんはワイン用ブドウの新品種を神奈川県藤沢市で発見され、日本ブドウ・ワイン学会に発表されたところだそうですね。本日はその経緯と新品種の特徴について詳しくお伺いさせてください。まず初めに、御社の事業概要について教えていただけますか?
田中 うちの会社の本業はIT事業です。私は10年前までは鎌倉にある三菱電機の工場で人工衛星を作っていました。 そこを退職してからは今の会社でITの事業をやっています。それ以外の副業として農業もやっています。
田口 農業といいますとどのようなことをされているのですか?
田中 6次産業化事業推進や農業関連補助金のコンサル、そして現在は自社農場でワイン用ブドウを栽培しています。
藤沢市のお爺ちゃんから譲り受けたブドウをDNA解析
田口 例の新品種を栽培されているということですね?
田中 はい、そうです。藤沢市内で趣味の一環として20年間ワイン用ブドウを育てているお爺ちゃんがいらっしゃいまして。もう車の運転ができないから辞めるということで、私が引き継がせていただくことになりました。うちの会社でワインにして販売しようと思い、お爺ちゃんに品種名を聞いてみたら「知らない」と言われまして(笑)
ワインボトルのエチケットや裏ラベルにブドウ品種名を表示するため、酒類総合研究所に連絡して、DNA鑑定をしてもらいました。その結果、「日本のデータベースにはないよ」と言われました。
田口 それはさぞかし驚かれたことでしょう。
田中 まさかって感じです。とんでもないものを見つけたなと思いました。 それで品種登録をした方が良いという話になりまして…。
新品種「Maeve(メイヴ)」、名前の由来
田口 新品種は「Maeve(メイヴ)」と名付けられたそうですが、どういう由来があるのでしょう?
田中 お爺ちゃんの孫娘さんの名前なんですよ。お父さんはオーストラリア人なのでハーフのお嬢さんです。 一昨年20歳になったので、メイヴのワインを記念にプレゼントしました。
田口 素敵ですね。お爺ちゃんもお喜びのことでしょう。
メイヴはどこからやってきたのか
田口 そもそも、そのお爺ちゃんはどこからメイヴの苗を手に入れたのでしょう?
田中 明治時代にたくさんのブドウの苗がヨーロッパから入ってきたじゃないですか。その流れでお爺ちゃんの元に辿り着いたのだと思います。お爺ちゃんは昭和7年生まれで北海道大学農学部出身の方です。昔、色々な品種をもらって栽培していたそうです。そして、この暖かい藤沢市内で最後まで残ったのが、この品種ということになります。
(つづく)
この記事の著者 / 編集者
田口あきこ(日本ワインなび編集長)
ホームパーティが好きなことから、より良いおもてなしをするためにワインを学び始める。
2015年 ワインスクール『レコール・デュ・ヴァン』の講師に抜擢。
2018年 ワイナリー経営者を育成する学校『千曲川ワインアカデミー』にてブドウ栽培・醸造・ワイナリー経営について学ぶ。
2020年『日本ワインなび』を開設。
2021年 JETROに附置する農林水産省・食品の輸出・プロモーション機関の事業で日本ワインの認知業務に携わり、海外向けに日本のワイナリー紹介記事を執筆。
2024年より千曲川ワインアカデミー倶楽部公式HP『生産者ストーリー』執筆。
同年 北海道余市町登に3.4haの農地を取得し、vineyard開設中。
日本ワイン検定出題作成委員
LDV日本ワインLover講座主任
・ワインスクール『レコール・デュ・ヴァン』講師紹介ページ
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