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市川朋依

ソムリエ・エクセレンス、元外資系航空会社勤務。現在は、酒類卸会社で会員制情報サイトの編集・執筆を担当。世界を飛んだ美食家として日本ワインの魅力を語ります。

泉 洋介

ワイン・エキスパート、海外出張の際には伝統国以外にもインド・中国産などNext new normalなワインにも触れ日々研究中。この経験と専門分野ブランディングとデジタルマーケを切り口に日本ワインの魅力と可能性について語ります。

吉田順子

ソムリエール、ワインカルチャー講師、女性が選ぶワインコンテストSakura Award審査員。ワインとお料理のマリアージュの視点から日本ワインの魅力と可能性を語ります。

内田一樹

『テイスティング』コーナーの進行役。ソムリエとワイン・エキスパート両方のエクセレンス資格を持つワインのプロ。さらに、栽培・醸造の学校卒業の経歴から、その視点で日本ワインの魅力と可能性を語ります。

第3回 マスカット・ベーリーA【Vol.2】

2020年10月1日

MBA 樽を使って 凝縮感vsエレガント

1. アルガーノモンテ2018(勝沼醸造)/ブドウ:山梨県韮崎市穂坂地区【3,300円】

外観は濃く、綺麗な紫色ですね。果実の凝縮感や若々しさが感じ取れます。
香りはどうですか?

梅干し、カリカリ梅のような香りがしますね。

小梅のような、少し甘酸っぱい香りです。

青っぽい香りもあります。青じそのような香りと甘い香りが共存しています。
そして、香りの中に濃い果実の凝縮感を感じます。

フレンチオークの樽の香りがほのかにします。
順子さんが青っぽさを感じたのは、全房発酵での茎の香りかもしれないですね。

なるほど。このワインは全房発酵なんですね。
濃い色と凝縮感のある味わいから、しっかりと完熟したブドウを使っていることが想像できます。
マスカット・ベーリーAはタンニンが少ない品種ですけど、しっかりとしたそれを感じます。
余韻にも果実の凝縮感が続きます。

凝縮感の構成要素の一つであるタンニンは、ざらざらした感じがなく緻密に感じますね。

骨太というよりは女性的な柔らかさを感じます。

複雑性や重層的な感じがしますね。
フレッシュ、フルーティーなワインではないですね。

黒系果実の凝縮感や青っぽさ、タンニンの緻密さ、ボディのふくよかさなど、いろんな香りと味わいがあって複雑性を感じます。

酸もしっかりとあるけど、果実味、タンニンもしっかりとあり、バランスが取れているワインだと思いますね。

ブドウが良く熟していることが分かります。
マスカット・ベーリーAのワインによくあるキャンディーの香りはなくて、熟したブドウ果実そのものの凝縮した香り、味わいを感じます。

アルコール度10.5%ですが、ボディがしっかり感じられるので、もっとアルコール度が高いように感じますね。

余韻に凝縮した果実感が続くのでアルコール度も高いのかなと思ってました。
マスカット・ベーリーAと思えない濃い凝縮感があります。

でも、やっぱりこの甘酸っぱい感じはベーリーAかな。マスカット・ベーリーAって、ブドウをそのまま食べて美味しいですよね。マスカット・ベーリーAの果実の香りを忠実に引き出した感じ。

クリュ・ボジョレーの凝縮したガメイの感じと似ているかな?
酸もしっかりあるので、長期熟成するとクリュ・ボジョレーのようにピノ・ノワールのようになりそうですね。

マスカット・ベーリーAの特徴とされている香りであるキャンディー香のようなものはほぼ感じられないですね。

このワインは野生酵母で発酵させているので、その点で複雑性を感じるのかもしれません。
培養酵母だとピュアできれいな香り・味わいのワインになりますから。

勝沼醸造株式会社ウェブサイトより転載

産地特性で日照時間が長く、昼夜の寒暖差がある畑のブドウで選果もしっかりしているので、原料のブドウは最高品質のものを使っていますね。選抜されたブドウ達、いわばエリート。

ブドウの潜在的な力をこのワインからすごく感じます。
でも、アルコール10.5%でこの凝縮感を感じられるのはすごいです。

このワインは補糖(※1)していないので、ブドウが完熟していても11%くらいかなと思います。でも完熟した品質の良いブドウを使っているからこれだけの凝縮感が出るんですね。

※1 補糖…収穫したブドウの糖度が、目標とするアルコール度数に達しない場合に、発酵前・発酵中の果汁・醪に主にショ糖を加えること。アルコール度が低すぎるとバランスの悪いワインになるため、行う場合がある。

合わせるお料理はどうですか。

タレの焼き鳥に合いそうです。タレの甘みと合うかも!

デザートでレアチーズケーキと合わせたいです。ベーリーソース代わり的な、補完する感じですね。レアチーズケーキは果実の酸味が欲しくなります。

ワインって、その土地のお料理と一緒に楽しまれてきた歴史があると思うのですが、山梨の地元料理の何と合うんですかね。

”ほうとう”のお味噌と合いそうです。
しっかりした味噌味が、凝縮感と同調するし、同じ発酵をしたものですから。

たしかに!果実感が、ほうとうのカボチャの甘みとも合いそう。

香りに梅っぽさが感じられたので、梅を使ったお料理もいいかもしれません。
焼鳥とかの鶏肉の梅肉和えとか。

山梨のワインツーリズムに行った時に聞いたのですが、地元の方はワインを湯飲みでグイグイ飲まれるそうですよ。

これは、山形に旅行した際に聞いた話ですが、地元の人は日本酒でも焼酎でも、日本人の日常使いの湯飲みとかコップで飲むことが普通みたいです。
普段の食事の時にワインも飲まれていらっしゃるようで、意識せずとも産地の食材とのマリアージュを自然に楽しまれているのかもしれませんね。

でも、このワインは普段飲める価格帯ではなく、マスカット・ベーリーAワインの上級クラスですから、造り手が何とペアリングするのを想定してつくられたのでしょうか?

お料理とのペアリングに困ったらソースで合わせる方法が良く使われます。
このワインだとチェリーソースとか。

「今日はこの料理だから、少し高級なマスカット・ベーリーAを開けてみようか」なんていう文化が広まると良いですね。

近年、日本でもペアリングのできるレストランが増えてきたので、「このお料理だからこのワイン」という文化がこれ根付いていくと良いですね。

そうですね。日本酒も焼酎もお料理に合わせて銘柄を替えていくという文化はまだ始まったばかりの段階ですかね。

マスカット・ベーリーAは、昭和2年に川上善兵衛が開発して世に出て栽培が広がっているわけですから、皆さん、どんな料理と一緒に楽しまれてきたのか興味深いですね。

2.深雪花(岩の原葡萄園)/ブドウ:新潟県上越市【2,219円】

では2番もテイスティングしてみましょう。
川上善兵衛さんが創設した岩の原葡萄園のマスカット・ベーリーAです。
外観は、1番よりは少し明るい色ですね。

華やかで、ちょっぴり甘いチャーミングなお花の香りがします。
The マスカット・ベーリーAという香りです。

樽から来る甘い香りがあります。

味わいにも甘さを感じます。

今年のサクラアワードでGOLDを受賞してますね。
やさしい味わいで女性に好まれそうです。

アルコール12%とそんなに高くないので、この甘みはアルコール由来ではないですね。
残糖が少しあるのか、甘やかな香りによる味わいへの影響なのか。

低温発酵により引き出された果実味ですかね。
1番のワインの酸とタンニンの凝縮感に対して、2番は果実味が中心のワインと言えますね。

そうですね。
低温発酵をして、雪室で低温樽貯蔵をしているみたいです。
なので、甘やかな果実香とエレガントな味わいなんですね。

ソムリエ協会のセミナーでも紹介されていて、1895年(明治28年)から雪室を利用した低温発酵・低温貯蔵をしているそうです。

岩の原ワイナリーに行ったのですが、今は使用してない最古と言われる雪室と現在利用している別の雪室もありました。
新潟の冬場は2メートル級の雪で埋め尽くされるような土地で、そんなに昔から川上善兵衛さんはきっと自然に低温発酵・低温貯蔵をしていたんですよね。

雪室 2019年 吉田さん撮影

ワインの発酵時は温度が上がるけど、意図的に下げるということですよね。

そうです。
でも、低温発酵するとゆっくりと発酵が進むので時間がかかるんですよ。

岩の原葡萄園は上越で、ブドウを収穫して発酵する時期は外気が寒いから、自ずと低温発酵になったんじゃないですか。

低温発酵法が自然と発見されたってことですね。

シャンパーニュが寒い地域で、白ワインの発酵が低温が故に冬に止まって、そのまま瓶詰めしたら、春になって温度が上がって再発酵がはじまって泡が発見されたっていうのと同じように、偶然なんでしょうね。

低温発酵によって果実味がよく残るってことですよね。

一文字短梢仕立て 雪の重みで枝が折れないように交差分離をしている
2019年 吉田さん撮影

発酵が低温でゆっくり進むので、果皮に含まれる香りの成分フェノールなどが、壊れずに抽出されるからですね。

熱すぎると香りって飛びますものね。

前回の甲州の時に、果皮からの抽出を強めるために発酵前後に熱を加える「マセラシオン・ア・ショー」やっているワインがありましたね。低温でじっくり成分抽出を行う方法と熱を加えて引き出す方法があるんですね。

(つづく)

この記事の著者 / 編集者

内田一樹

『テイスティング』コーナー進行役。ソムリエとワイン・エキスパート両方のエクセレンス資格を持つワインのプロ。さらに、栽培・醸造の学校卒業の経歴から、その視点で日本ワインの魅力と可能性を語ります。

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