第4回 日本ワインの新酒を楽しむ【vol.3】
2020年12月5日
様々なタイプの赤ワインの新酒
では、赤ワインの新酒を3種類、飲み比べてみましょう。
5.Concord Dry Nouveau(はすみふぁーむ)/ブドウ:長野県東御市 【1,500円】
にごりがあってカクテルみたいな外観です。
キャンディのような甘い香りが華やかです。
フレッシュな酸味が、フルーティな味わいに続く余韻を引き締めてる感じです。
コンコード100%で、アルコール度9%、無濾過なので澱が見えますね。
はすみふぁーむは、10月にヌーボー3兄弟として、このコンコードと赤のブラック・クイーン、白のナイアガラの新酒を出しています。
無濾過のフレッシュな新酒は、原料のブドウの香り、味わいが生きてて、ブドウを頬張っているようです。
そうですね。このワイン、すごくジューシーで生き生きとした感じがあります。
辛口ですが、ベリーの凝縮した香りの甘やかさで、ワインがほんのり甘く感じます。
はすみふぁーむは、上田駅からすぐの北国街道柳町の旧家にカフェを持っていて、ワインとワインに合う食事を提供してます。人気のカフェでランチはいつも満席です。
このジューシーさとほんのりした甘さが、豚肉や鶏肉の軽いお料理に合いそうですね。
そう言えば、ランチメニューに地元上田の太郎ポークのお料理がいくつかありました。
6.HARVEST FESTIVAL MUSCAT BAILEY-A(都農ワイン)/ブドウ: 宮崎県都農町 【1,480円】
赤紫の綺麗な色です。
イチゴやラズベリーの香りが華やかに感じます。
甘酸っぱい赤系果実主体の香りと、かすかに感じる黒糖やスモーキーな香りに複雑味を感じます。
新酒だけあって、フレッシュで清涼感のある印象のワインです。
今年で24回目となる「都農ワインハーベストフェスティバル2020」でお披露目される新酒ですが、今年はオンライン開催でした。
都農ワインは、10月17日にキャンベル・アーリーと、このマスカット・ベーリーAの新酒を発売していますね。
梅雨の長雨の後は猛暑が続き、日照に恵まれて糖度も順調に上がったそうです。
8月上旬から仕込みが始まって、低温発酵で華やかな香りになったみたいです。
9月はじめの台風10号直撃の前に夜を徹して収穫作業しているのをfacebookで見ました。
都農ワインのある宮崎県でのブドウ栽培は、特に台風との闘いでもありますね。
栽培家・醸造家の大変な苦労の末の美味しいワインですから、新酒を祝うお祭りは、日本でも広げていきたいですね。
前回、都農ワインの「プライベートリザーブ マスカット・ベリーA 2014」をテイスティングしましたが、比べてみてどうですか?
前回のワインは、2014年ヴィンテージで、6年間熟成しているのに果実味があって、且つ熟成香もあって、素晴らしかったです。
そう、2014年はまるでピノ・ノワールが熟成したかのような心地よい熟成香がありました。今日の新酒は、フレッシュ&フルーティーで、マスカット・ベーリーAの様々なタイプの可能性を感じました。
都農ワインは海岸近くの丘の上の畑で、日照量も多く、ブドウが良く熟すことが知られています。そうしたテロワールが素晴らしいってことですね。
今食べてるシュークルートのキャベツの酸味とお肉の旨味が、ワインの酸味と旨味と調和して美味しさを引き立てます。
7.ロリアン 新酒アジロン(白百合醸造)/ブドウ: 山梨県 【1,760円】
では、最後に珍しい品種であるアジロンダックで造られた新酒にいきましょう。
ソムリエ協会の教本によると、1852年にアメリカで交配育種された生食用品種で、日本では第2次世界大戦直後まで甘味果実酒の原酒用に山梨県で大量に栽培されていたみたいです。
山梨県の勝沼の周りでしか栽培されていない希少なブドウで、このブドウで造ったワインは「幻のワイン」と呼ばれて、ファンの方たちが買い占めるそうです。
アジロンは、昨年白百合醸造さんを訪問した時に実際食べてみましたが、甘くてとても美味しいブドウです。
山梨県で昭和初期頃まではたくさん作られていたのが、実がすぐぽろぽろ落ちてしまうことから、食用には向かないと廃れていったとか。勝沼で初めて造られたワインにアジロンが使われたんだそうですよ。
甘口だけど、冷やして飲むとスッキリした甘さに感じます。
フルーツの香りもフレッシュっていうより凝縮感というか深みを感じます。
甘口だけど、酸もしっかりありますね。
果実香に深みがあるので、マスカット・ベーリーAや他の品種と差別化ができますね。
酸もしっかりあるので、ただ単に甘いだけではない印象です。
巨峰のようなアメリカ系のグレープそのものの香りに、野生苺やラズヘベリージャムのような甘い香りがありますね。この香りがアジロンダックの香りの特徴なんですね。
冬は、ホットワインにしても美味しく飲めるそうです。
コタツでみかん食べながら、ホット・アジロンワインを飲むって感じですね。
合いそう~(笑)
今食べてるアラビアータが合いますね。
唐辛子の辛さに、このワインの程よい甘さが溶け込んで、口中のバランスをとってくれます。
甘口って、ソーテルヌの甘口貴腐ワインと塩辛い青カビチーズが合うように、辛さにも合うようですね。
今から出てくるスイーツ・デザートにもベリーソースの酸味と甘さで調和させるようで合いそうです。
今日は、皆さん、屋外のテラス席で、若干寒かったですが、日本ワインの新酒をどうやったら広められるか、日本に新酒ワイン文化を根付かせるには、どうすればいいか。
熱い議論ができたと思います。
今後、日本ワインなび企画で、ぜひ新酒祭りをやりたいと思います。
(おわり)
この記事の著者 / 編集者
内田一樹
『テイスティング』コーナー進行役。ソムリエとワイン・エキスパート両方のエクセレンス資格を持つワインのプロ。さらに、栽培・醸造の学校卒業の経歴から、その視点で日本ワインの魅力と可能性を語ります。