第4回 日本ワインの新酒を楽しむ【vol.2】
2020年12月5日
新酒を楽しむ文化を根付かせたい
マーケティング的には、新酒を楽しんだ方が普通のワインへ興味をもったり、普通のワインに親しんでから新酒も飲んでみようとなったり、いろんな入口を作って、幅広い層にリーチしていくという方法がいいのかもしれません。
デラウェアは、甘やかでフレッシュなので新酒に向いてると思います。
日本ワインなびの役割としては、日本ワインの新酒の良さを伝えて、広げるということですね。
日本では、ボージョレ・ヌーボー以外に新酒を楽しむ文化はこれまで大々的にはない気がしますね。
日本のワインて新酒を造る文化っていつからあったのですかね?
山梨などのワイン産地では、昔から出来立ての新酒は飲まれていたんじゃないですか。
日本のワイン用ブドウは品種によって収穫時期が違うから新酒の出来る時期も違ってくるよね。
山梨ヌーボー解禁日は、11月3日ですが、なぜこの日なのでしょう。
山梨ワインの新酒のプロモーションとして県のワイン酒造組合が2008年からはじめたようです。
デラウェアは収穫・醸造時期が早いので解禁日の対象にはせずに、甲州とマスカット・ベーリーAを解禁日の対象にしたんですね。
生産者さんたちが、収穫・醸造がひと段落して、自分たちのワインを楽しむみたいなことは地元にはあったんでしょうね。
今年のブドウとワインの出来を確かめるみたいな事で、新酒を飲むことは、お米や作物、日本酒と同じでやはり収穫祭のようなお祝い事なのですよね。
9月のはじめに山梨にブドウ収穫のお手伝いに行きましたが、シャルドネ収穫を狙っていたのに、予定早まり、シャルドネの収穫は終わってしまい、繰り上がってメルロー収穫になりました。
今年は収穫が早かったとのことです。
収穫が終わった後に、みんなで飲むワインは最高でした。
昔から地元では新酒を楽しんでいたけれど、新酒を楽しむお祭りみたいにはなってなかってことですよね。
ウイーン郊外のブドウ畑では、新酒のホイリゲを飲みながら、アコーディオンやバイオリンの伴奏で、皆で踊ったり大騒ぎする文化が根付いています。ウィーンに行った時にはトラムに乗って毎日行ってました(笑)
日本でも地元だけではなくて、東京をはじめとして日本全土で日本ワインの新酒を楽しむ文化を作りたいです。
都内で私たち主催で新酒祭りをやりましょうか。
ココファームのようにワイナリーで収穫祭を開くところはありますが、都内で日本ワインの新酒祭りってないですよね。日本酒は11月に新酒が出来上がると、杉玉を飾ってお祝いする文化がありますが。
東京の人でも一部の人たちには日本ワインの新酒ブームがすすんでいて、ネットでの新酒予約でも7月くらいからはじまって、すぐに売り切れになっているところもあるよ。
それをもっと広げるために日本ワインなびでも頑張らないと。
そのために、新酒の良さを私たちが語れないとだめですよね。
フレッシュさを楽しむのがポイントかな。
ボージョレ・ヌーボーには規定があるけど、日本ワインヌーボーには規定がないから製法などがワイナリーによってさまざまで興味深いですね。
新酒用とそうじゃないワインは違う造りをしているのかなぁ?
ワイナリーに見学に行っても違うタンクで造っているとは思えないんですが。
ワイナリーの醸造責任者の方に聞いてみました。
にごりワインの新酒は昔からありますが、発酵途中または発酵終了後、無濾過で瓶詰するところが多いですが、これは新酒用として造ります。果実粕や澱があり熟成はできないので即飲み用だそうです。フレッシュさを楽しむことが目的のワインです。
透明な新酒は、本当は一冬越した方が美味しくなるそうですが、出来立てのワインの中には酒石が多くあり、白も赤も酒石を早期に取り除くため、冷却して酒石を結晶化して取り除くことをしています。さらに、白ワインは濾過をして綺麗にしてから瓶詰めします。
赤ワインは、醸造したてだとタンニンが荒々しくて飲みにくいので、醸し(果皮などの浸漬)を短くしたり、ボージョレ・ヌーボーのようにマセラシオン・カルボニックによって、色素抽出はすすむけどタンニンは余り抽出されない方法を使ったり、タンニン分の少ないヴィティス・ラブラスカ(生食用ブドウ)の品種を使うそうです。
新酒として楽しめるように、いろいろな工夫をしているんですね。
新酒のワインを飲む楽しい文化が日本でも根付いていくといいですよね。
ボージョレ・ヌーボーを楽しむ文化を日本に根付かせたのは、ワインを売るため、マーケティング戦略に長けた日本人ですよね。
もともとフランス各地で新酒の規定があり、地元で造られて地元の人が楽しんでいたものが、フランスで新酒を楽しもう!というマーケティングがされて、日本人がそれに便乗してブームにしたんですよね。
ボージョレ・ヌーボーの解禁日は当初11月11日だったのが、レストランやショップの休業日と重なることもあるため、1984年に11月の第3木曜日にしたそうです。
新酒を楽しむ文化が昔からあったのか、日本最古のワイン産地である山梨の地元の方に聞いてみたいですね。
4.ヌーボー白(丹波ワイン)/ブドウ: 京都府 【1,320円】
エチケットがカッコイイです。
カワセミですね。川辺に生息する小型の鳥で、丹波地方でもよく見かけるそうです。
「遊びをせんとや生れけむ、戯れせんとや生れけん」という平安時代の歌謡集からの抜粋で、このワインは「皆が楽しむために生まれてきたんだよ」っていう意味だと思います。
ボリュームのある甘やかな香りで華やか。
熟したメロンやマスカットの甘やかさに、かすかにグリーンハーブの香りがあります。
すごく爽やかな飲み口です。
酸はシャープながら、甘みとのバランスが良くて、ヌーボーというより、美味しい白ワインを飲んでいる感じです。
デラウェア100%で、早摘みの青みのかかった酸味のあるブドウと完熟したブドウをブレンドしているから、酸も豊かだし、甘みもあって、ブレンドによってバランスを作っているんですね。
本当にバランスが良くて、白ワインとしての完成度が高いと思います。
これで1,320円なら普段飲みで、多くのご家庭の食卓に登場できますね。
京都の京丹波町にある丹波ワイナリーですが、京都の秋と言えば紅葉ですよね。私も少し京都にいたことがありますが、京都では秋の紅葉と丹波ワインの新酒を市内各料亭で楽しめるそうです。
ワインのほんのりした甘みと繊細な和食のお出汁の旨味が良く合いそうです。
日本ワインの新酒ならではの楽しみ方ですね。
華やかな香りもあるので、ちょっとした集まりでも場を華やかにしてくれると思います。
後で出てくるスイーツにも甘やかさと酸味のバランスがちょうどよく合いそうです。
(つづく)
この記事の著者 / 編集者
内田一樹
『テイスティング』コーナー進行役。ソムリエとワイン・エキスパート両方のエクセレンス資格を持つワインのプロ。さらに、栽培・醸造の学校卒業の経歴から、その視点で日本ワインの魅力と可能性を語ります。