第1回テイスティング|甲州ワイン【Vol.3】
2020年7月1日
今回選んだ甲州ワインたち
画像左より
- 甲州きいろ香 2016(シャトー・メルシャン)/ブドウ:甲府市玉緒地区【2,300円】
- グレイス甲州 2018(GRACE WINE)/ブドウ:勝沼町鳥居平、菱山地区など【3,000円】
- フジクレール甲州樽発酵 2018(フジッコワイナリー)/ブドウ:勝沼町産を主体【2,200円】
- 笛吹甲州グリ・ド・グリ 2019(シャトー・メルシャン)/ブドウ:笛吹地区産【2,500円】
- ロリアン・セラーマスター甲州 2017(白百合醸造)/ブドウ:山梨県産【1,980円】
甲州ワインって何? その可能性を探る
今日いろいろな甲州ワインを飲んで、「甲州ワインとは何だろう?」って改めて考える良い機会になりました。甲州のピュアな個性を表出することで輪郭を作っていくのか、それとも「甲州」に様々な栽培・醸造上の工夫を行って利用層を広げていくのか。いずれにしてもまだ甲州の可能性を模索中なんだと思います。
甲州がワイン用ブドウとして国際品種に認定されてから、ワイナリーの方々は海外を見据えて、多様性のあるワインを造りをされているのですね。
フジッコだったら自社のお惣菜に合うワイン造りをメインにしたり、ただ海外市場を見据えているだけではなく、本来の自分たちの個性や良さをしっかり出すことでポジションを築いていく模索をされているのだと思います。
私もそう思います。
国際品種を使ったワイン造りも増えていく中で、老舗の山梨のワイナリーは、甲州をしっかりと国際的に戦えるワインにしようと頑張っていると思う。
2番のGRACE WINEの醸造責任者の三澤彩奈さんは、甲州を垣根栽培で凝縮感を高め、高畝式で病気を防ぐ栽培したり、勝沼醸造のアルガブランカ・イセハラ甲州なんて、土壌の特徴を引き出して、ブルゴーニュの凝縮感とフィネスを超える甲州ワインを造っていて、国際的にも評価されています。
国際品種に甲州が肩を並べられる到達点になっているということですね。
甲州の可能性をこれからも模索していく中で、国際的にも評価されるワインがたくさん出てきました。ヨーロッパの栽培・醸造技術の良い部分を取り入れながらも、自分たちの個性や良さを前面に出してグローバルに認められることが必要なんだと思います。
その地のお酒は、その地の食事や食文化から形作られてきていると思います。
和食は、世界に認められた日本の食文化。和食に日本酒を合わせるのは定番だけど、ワインを合わせる時は甲州!ってなるといいですよね。
日本の甲州ワインってこれよ!って言いたい。ジャパニーズ・ブランドと和食に合うワインを出していってほしいな。
和食は、世界的にはプレミアムブランドだから、「和食には甲州」っていうロジックが組み立てられると甲州にとっても良いですよね。
とは言っても、日本の和食屋さんでも甲州を出すところはまだ少ないですね。
甲州はまだ知名度がそこまで高くないのと、高級ワインという位置づけでもないので置いてあるお店が少ないのかもしれませんね。飛行機内でもビジネスやファーストクラスとなると、甲州をお薦めしても、名のあるフランスワインが選ばれます。。
僕もよく飛行機に乗るけど、有名MWやソムリエセレクトのワイン、とくに新世界のワインのセレクトが増えてきているけど、お客さんがなんでフランスワインが少ないんだって文句言ってるのを聞いたことがあるし、友人のCAさんも新世界ワインは薦めにくいと言っている。やっぱり、ブランド力は大事と痛感します。
他国の航空機に乗った時、その国のワインを飲みたいと思いますよね。日本の航空会社に乗った時、日本のワインを飲みたい!ってなっていくといいですね。
甲州は、ブランドの輪郭がだんだんとはっきりとしてくるといいですね。輪郭がはっきりとしてくれば、一杯頼んでみようかなっていう気持ちに繋がるんじゃないかな。甲州ブランドの課題は認知度と理解度ですかね。そのためにも一貫したブランド戦略が必要になってくるのでしょうね。
飛行機では、(甲州ワインというよりは)獺祭を頼む方が多かったです。ブランドがしっかり確立されているからですよね。
甲州は、いろいろ造って様子見しているところだと思うので、甲州ってこれ!っていうものがだんだんとできあがっていくと良いですね。
ブランドはストーリー。雨の多い、ワイン用ブドウ栽培不適地の日本で一生懸命ワインを造っている方々の情熱とクラフトマン・シップが良いブランドストーリーになりそうですね。
「和食なら甲州」というブランドになったら良いですね
2番のワインは収量を抑えて果実味と酸のバランスが素晴らしく、海外で立派に戦える甲州ですよね。
1番は、和食にすごく合うと思う。
話はピノ・ノワールになりますが、日本ピノ・ノワール・サミットで、余市のドメーヌ・タカヒコが、日本スタイル=色は淡いけど、出汁感・旨味あふれたスタイルを日本独自のスタイルだと仰っていました。一方、ニュージーランドの方は、ブルゴーニュを目指して、いつか勝つんだと仰っていました。そしたら、先日、世界で最も予約困難なNo.1レストラン、デンマークの「ノーマ」がドメーヌ・タカヒコのピノノワールをオンリストしたと報道されました。日本スタイルが、世界のブランドとして認知されたということだと思います。
タカヒコさんのポリシー、コンセプトが、「ノーマ」と合ったということなのでしょうね。
自社ブランドのあるべき姿があって、しかし自分たちの環境とリソースに制限があって、その両方を上手くインテグレートすることで自分らしさを造っていく。心に響きますよね。
和食に、いかに甲州が合うかというイベントをもっとしたいですよね。
ワインツーリズムに行く前に勝沼のワイナリーを調べたくてウェブサイトを全てチェックしたことがあります。その時感じたことですがウェブサイトを通じて各ワイナリーの価値やこだわりをもっと見える化してもらえたら消費者としてもありがたいなと思いました。グローバルで戦うために英語のサイトもあったら良いですよね。
英語のサイトを作るのもマーケティング的には大事ですよね。
フランス・レストラン・ウイークを日本でやってフレンチ×ワインはやっているのに、ジャパンレストラン・ウイーク中に、そういの、経験したことないですね。和食レストランと手を組んで甲州をひろめるような活動をしましょう。
フランスの日本人シェフのお店でも、ワインペアリングを頼むと日本酒が出て来て、日本ワインが出てこない。
ワイン競合の少ない、東南アジアで、和食と合わせてマーケティングが出来るんじゃないかな。
とりあえず、まず日本の和食屋さんに甲州を置いてもらいたいですね。
日本ワインでも人気があるのは、国際品種のワインだと感じるので、日本人がもっと甲州を重視しなきゃですね。
和食に合うという軸にした時に選ばれるようにしたいよね。
まず、BtoB(Business to Business)を狙ったらどうでしょうか。名声を得ている和食レストランに認められ、そこでペアリングで出してもらい、そして一般消費者にもその価値を伝えていく。BtoBtoC(Consumer)というアプローチですね。
このお料理には、絶対甲州というものを作らないとね。
日本人同士(和食と甲州)で結婚して協力していかないとですね。
日本ワインの試飲会などの企画は、BtoCばかりしかないですね。各地のワインフェスタなど、消費者向けはあるけれど、料飲店のソムリエや仕入担当向けには輸入ワインの企画ばかりです。
なんで甲州をオンリストしないかっていう聞き取りをやったほうがいいですね。
他店と差別化するという意味でも甲州を置いてもらう方向になんとかもっていきたいですね!
ソムリエのいないお店は、メーカーさんに薦められるままワインを揃えていることが多いですよね。
ふつうビール会社の営業が入ってビールを置いてもらって、系列ワインメーカー、インポーターのワインを置いてもらうというパターンですね。ぜひ、甲州をテーマにした料飲店向けの企画を「日本ワインなび」としても考えていきたいですね。
※次回は、スパークリングワインの比較テイスティングをやりますので、よろしくお願いします。
(おわり)
この記事の著者 / 編集者
内田一樹
『テイスティング』コーナー進行役。ソムリエとワイン・エキスパート両方のエクセレンス資格を持つワインのプロ。さらに、栽培・醸造の学校卒業の経歴から、その視点で日本ワインの魅力と可能性を語ります。