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テイスターのご紹介

市川朋依

ソムリエ・エクセレンス、元外資系航空会社勤務。現在は、酒類卸会社で会員制情報サイトの編集・執筆を担当。世界を飛んだ美食家として日本ワインの魅力を語ります。

泉 洋介

ワイン・エキスパート、海外出張の際には伝統国以外にもインド・中国産などNext new normalなワインにも触れ日々研究中。この経験と専門分野ブランディングとデジタルマーケを切り口に日本ワインの魅力と可能性について語ります。

吉田順子

ソムリエール、ワインカルチャー講師、女性が選ぶワインコンテストSakura Award審査員。ワインとお料理のマリアージュの視点から日本ワインの魅力と可能性を語ります。

内田一樹

『テイスティング』コーナーの進行役。ソムリエとワイン・エキスパート両方のエクセレンス資格を持つワインのプロ。さらに、栽培・醸造の学校卒業の経歴から、その視点で日本ワインの魅力と可能性を語ります。

第1回テイスティング|甲州ワイン【Vol.1】

2020年7月1日

今回選んだ甲州ワインたち

画像左より

  1. 甲州きいろ香 2016(シャトー・メルシャン)/ブドウ:甲府市玉緒地区【2,300円】
  2. グレイス甲州 2018(GRACE WINE)/ブドウ:勝沼町鳥居平、菱山地区など【3,000円】
  3. フジクレール甲州樽発酵 2018(フジッコワイナリー)/ブドウ:勝沼町産を主体【2,200円】
  4. 笛吹甲州グリ・ド・グリ 2019(シャトー・メルシャン)/ブドウ:笛吹地区産【2,500円】
  5. ロリアン・セラーマスター甲州 2017(白百合醸造)/ブドウ:山梨県産【1,980円】

第1回のワインは、日本を代表するワイン用ブドウ品種の「甲州」を100%使ったワインにしました。
甲州ブドウを使ったワインは、95%が山梨県で造られていますので、5本とも山梨県のワイナリーのワインです。
甲州というブドウ品種のワインは、特徴が無いと言われてきましたが、造り手の努力で様々なタイプの甲州ワインが造られています。
その双璧をなす、柑橘系の香りを甲州ブドウに発見したメルシャンの「きいろ香」のワイン、高地でゆっくりと完熟させることによって果実の凝縮感を表現したGRACE WINEの甲州をまず比較しました。
さらに、樽を使ってほのかなヴァニラの香りを付けたフジッコ・ワイナリーの甲州ワイン、果皮の成分をしっかりと抽出するために「醸し」と「加熱」を行い、オレンジ色の複雑な味わいを実現したグリ・ド・グリ、最後に「やや甘口」に仕上げた白百合醸造のワインを選んでいます。

甲州ワインの多様性を探る

今回はオンラインでのテイスティングとなりました。

(左上)市川朋依/(右上)泉 洋介/(左下)吉田順子/(右下)内田一樹

甲州らしいワインを目指して

1.甲州きいろ香 2016(シャトー・メルシャン)/ブドウ:甲府市玉緒地区【2,300円】

最初はシャトー・メルシャンの『甲州きいろ香 2016』です。外観はきれいなレモンイエローですね。香りは、どうでしょう。

香りについて

和柑橘の香りがしっかり感じられます。ゆず、カボスなどの和柑橘の香り。

グレープフルーツの白皮の苦み系の香りも。

飲んでみて鼻から抜ける香りもとってみて。洋系の柑橘の香りはありませんか。

私はそれほど感じないですね…。

僕は少しグレープフルーツやライムを感じる。

ライムを感じます。あと白コショウみたいなスパイスもほんのりと感じる。

甲州に感じる吟醸香はありますか?

吟醸香やイーストの香りは、品種由来の香りではなくて、甲州でよく行われるシュール・リーという、発酵後の酵母の自己消化による澱とワインとの接触から生まれる香りですね。

顕著には感じ取れないですね。

中心香は和柑橘ですが、白皮の苦み系の香り、洋柑橘のグレープフルーツ、ライムの香り、少し白こしょうのようなスパイスの香りもあるということですね。

味わいについて

では、味わいにいきましょうか。

シャープできれいな酸が、舌の上に持続的に残ります。

柑橘の酸が際立っている。レモンやゆず、カボスとかのキレのある酸を感じます。

舌に刺し込んでくる酸なのか、もう少しやさしい酸なのか、どちらを感じますか。

唾液がジュワーと出てくるシャープな酸を感じます。

酸っぱすぎないスダチみたいな。

フレッシュなカボスジュースを飲んでるような感じですね。シンプルで、酸の量は多く感じますが、ジューシーで心地よい酸っぱさの感じです。

アフター(余韻)はどんな感じですか。

苦みというか、ミネラルというか。果皮由来の苦みもあります。

タンニンの苦みではなく、ミネラルからきた感じ。

樽は感じないですね。では、この1番と次の2番を比較してみようと思います。

2.グレイス甲州 2018(GRACE WINE)/ブドウ:勝沼町鳥居平、菱山地区など【3,000円】

2番のGRACE WINE『グレイス甲州 2018』も外観は、きれいなレモンイエローですね。香りは、どうですか。

香りについて

果実の凝縮した香りがします。

柑橘系の熟した果実の感じで厚みを感じます。

パッションフルーツまではいかないですが、ライチとか温暖系の果実香があります。

2番は、1番に比べて熟した柑橘系からライチの香りが凝縮して感じられるということですね。

味わいについて

酸はありながらも、まろやかです。

口に含むとさらに果実感が高まって、ボディも感じます。

ボディというのは、果実の凝縮感から来るものですか、アルコールの高さですか。

果実の凝縮感から来るものだと思います。1番よりは、アルコール感も強く感じます。

12%くらいはあるように感じます。1番は10%ちょっとくらいかな。

勝沼醸造に行った時に、甲州はそんなにアルコール度数が上がらなくて、12%以上にしようと思うと「補糖(3番のワインで説明)」しないと出来ないと聞いたけど。

甲州は、品種特徴として糖度が上がりにくく、地理的表示のGI山梨を名乗るには、糖度14度以上という規定があります。ワイン用ブドウで14度ってかなり低く、このままワインにすると8%にもならないです。10%を切るとワインとしてバランスが悪くなりジュースみたいになってしまうと言われています。ただし、1番、2番のワインは補糖していないです。補糖せずに12%出せるというのは、ブドウが完熟して22度くらいの糖度を実現できているということです。

2番は、ボディがあって、果実味と酸のバランスがいいですよね。

甲州じゃないみたいな果実味の凝縮感。

甲州じゃなければ、どんな品種の感じかな。熟したシャルドネですか。

香りに草っぽさと、口当たりに少し苦みを感じるので、フランスのロワールのソーヴィニヨンブランかなぁ。

合わせるお料理について

それでは、1番、2番に合わせるお料理ではどうですか。

1番は、スダチやカボスをぎゅーっと絞って食べる、素材を大事にしたシンプルなお料理。

生牡蠣にカボスを絞って食べたい。

淡白な白身魚をさっと揚げた天ぷらも合いそう。それもお塩で食べる。湯豆腐も合いますね。

カボスだとサンマの塩焼きも合いますか。

サンマにはワインが負けそうですね。焼いたり、ローストしたものでなく、生っぽいのが合いますね。

では、2番のワインには、何を合わせますか。

鮎の塩焼きを合わせたいです。焼いた香ばしさが、果実味やアフターに感じる苦みの味わい、清涼感あるハーブの香りが川魚などに合いそうと思います。

1番は和食が合いそうだけど、2番はイタリアンとか洋食もいけそうです。

2番は、オリーブオイルを使ったお料理にも合いそうです。

甲州らしいワインめざして

1番は、メルシャンの「甲州きいろ香」で、「きいろ香」という3-メルカプトヘキサノールという柑橘系の香りを出す前駆体が、一番ブドウ果実に多くなるタイミング、完熟前の早めの収穫をしています。なので、甲州特有の和系の柑橘香と爽やかな酸が特徴のワインになっています。
一方2番は、GRACE WINEの「グレイス甲州」で、標高の高い鳥居平、菱山地区を主体に収量を抑えた凝縮感のあるブドウを使っているので、果実味豊かなボディのあるワインに仕上がっています。
(※前駆体-香成分の前段階の物質でアルコール発酵の時に酵母の出す酵素によって香成分に変化するもの。)
両方ともステンレスタンク発酵・熟成で、シュール・リー(澱との接触)はしていません。アルコール度数は、1番が10.5%、2番が12.0%です。皆さんの感じた通りですね。
つい先日発表のあった「日本ワイナリーアワード2020」で、メルシャンとGRACE WINEは、5つ星ワイナリーに選ばれています。

なるほど。

2番のグレイス甲州は、世界的なワイン評論家のジャンシス・ロビンソンが日本を代表するワインと評価したワインです。海外の方たちにも受け入れられやすいワインですよね。
1番は甲州らしくて日本人には美味しいワインですけど、海外の方は2番のようなボディのあるワインを好みますよね。

それぞれが、甲州の良さを持っていますね。

(つづく)

この記事の著者 / 編集者

内田一樹

『テイスティング』コーナー進行役。ソムリエとワイン・エキスパート両方のエクセレンス資格を持つワインのプロ。さらに、栽培・醸造の学校卒業の経歴から、その視点で日本ワインの魅力と可能性を語ります。

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