日本ワインの代表品種!甲州(2)~主要産地・歴史・OIV登録~
掲載日:2020年7月1日
甲州の主要産地
ワイン用国産生ブドウの中で醸造量第1位の甲州ブドウ。
いったいどこで栽培されているのでしょう?
甲州といえばやっぱりあの県?・・・と思うわけですが、果たしてその実態は?
国税庁HP『国内製造ワインの概況2017年度調査分』(2019年2月)を加工して作成
(注)上記のデータは、ワインの原料とするために受け入れた国産生ブドウの品種別数量の集計値であり、実際にワイン原料に使用した数量とは符号しません。
甲州といえばやっぱり山梨県。
驚くべきことにその96%が山梨県で栽培されています。
甲州のルーツ
甲州種はどのカテゴリに分類されるのか、ヴィティス・ヴィニフェラ種(欧・中東系品種)なのか、発祥の地はどこなのか?
諸説あるものの、はっきりとしていませんでした。
しかし2013年、(独)酒類総合研究所で理事を務める後藤奈美氏によってDNA解析が行われ、そのルーツが遂に明らかになりました。
(2016年より後藤氏は(独)酒類総合研究所 理事長に就任)
解析により、甲州種にはヴィニフェラにヴィティス・ダヴィーディ(中国の野生種)が少し含まれていることが分かりました。
ヴィニフェラはカスピ海のほとりであるコーカサス地方の生まれ。
甲州種はコーカサス地方を出発した後、シルクロードを通り、長い年月をかけてダヴィーディと交雑しながら日本にやってきたのではないか、と推定されています。
(エヌリブ 酒類総合研究所広報誌『「甲州」ブドウのルーツ』(平成27年3月5日 第27号)
(酒類総合研究所)の図1『「甲州」ブドウの来た道』が参考になります)
シルクロード説は科学的根拠に基づくものですが、その他にも甲州のルーツに纏わる有名な伝説が2つあるのでご紹介します。
大善寺説
奈良時代にあたる718年、諸国行脚中の僧行基が西方から現在の甲州市勝沼の地を訪れた時のこと。柏尾の川岸にそびえたつ岩の上で祈願を続けたところ、21日目にブドウを持った薬師如来が霊夢となってその岩の上に現われたそうな。行基はその霊夢に従い、大善寺を建立。そしてブドウの種を蒔き、甲州ブドウの栽培方法を村人に教えたと言われています。
雨宮勘解由(あめみやかげゆ)説
鎌倉時代にあたる1186年、現在の甲州市勝沼町の住人、雨宮勘解由は城の平(近くの山)で偶然、つる性の植物を見つけた。栽培してみると、5年後に朱紫色で甘美な味わいの果実が実った。
それが甲州種だった、という説。
同年に源頼朝が善光寺(長野県)を参詣した時、甲州ブドウが献上されたと伝えられています。
長い歴史を経てそして世界へ~OIV登録~
2010年にOIV(国際ブドウ・ワイン機構)に品種登録され、甲州ワインをEU諸国などに輸出する際にワインラベルに品種名「Koshu」を表示できるようになりました。
日本固有の品種の中でOIVに登録されたのはこれが初めてです。
OIV登録後、甲州ワインは生産者の努力により更に品質が向上し、甲州は国際的ワインコンクールで入賞するなど、海外でもその評価が上がってきます。
デキャンター・ワールド・ワイン・アワード(DWWA)2014(※1)で、グレイスワインの「キュヴェ三澤 明野甲州 2013」が金賞を受賞したことは日本ワインの歴史に大きな足跡を残しました。
最近では、デキャンター・ワールド・ワイン・アワード2019で、
サントリーの「登美の丘 甲州 2017」がプラチナ金賞を受賞。
なんとこの時、更に3つの甲州ワインが金賞に選ばれました。
「シャンモリ 山梨 甲州 2018』シャンモワイナリー
「甲州 プライベート・リザーブ 2018」グレイスワイン
「ロリアン甲州Vigne de Nakagawa 2017」白百合醸造
インターナショナル・ワイン・チャレンジ(IWC)2020(※2)では、
シャンモリワイナリーの「グラン・シャンモリ 甲州シュール・リー2018」が金賞受賞。
インターナショナル・ワイン・チャレンジで甲州が金賞受賞として初の快挙となりました。
※1…イギリスの月間ワイン雑誌「Decanter」によって主催される国際ワインコンテスト。
※2…ロンドンで開催されている国際ワインコンテスト
参考文献
- Decanter HP『2019 Decanter World Wine Awards』(Decanter)
- “甲州”ブドウのルーツを解明『―DNA解析から、中国を経由して伝えられたことを証明―』(2013年11月8日)(独立行政法人 酒類総合研究所)
- 富士の国やまなし観光ネット『ワインを知ろう ~新人職員のワイン学習会①~』(2015年9月 1日)(公益社団法人やまなし観光推進機構)
- 富士の国やまなしHP『ぶどうの国 文化館』(公益社団法人やまなし観光推進機構)
(おわり)
この記事の著者 / 編集者
田口あきこ(日本ワインなび編集長)
ホームパーティを開催することが多いことから、より良いおもてなしをするためにワインを学び始める。2015年にワインスクール『レコール・デュ・ヴァン』のインストラクター養成講座にて講師に抜擢。
2018年春からワイナリー経営者を育成する学校『千曲川ワインアカデミー(長野県東御市)』にてブドウ栽培・醸造・ワイナリー経営について学び、講師業の傍ら、超新規ワイナリーの立ち上げ・畑仕事のお手伝いにも出掛ける。
2020年『日本ワインなび』を開設し、編集長として運営を行う。
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