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日本ワインとは?

国産ワインと日本ワインは違う意味?

掲載日:2020年7月1日

国産ワインと日本ワインの違い

「国産ワインと日本ワインの違いは何ですか?」
と聞かれたら、「え?どちらも日本で造られたワインのことじゃないの?」って返したくなりますよね。
でも、実は意味合いがちょっと違います。
違いのポイントは、「ブドウの産地」。

「国産ワイン(国内製造ワイン)」と呼ばれるカテゴリには、国産ブドウを原料としているワインもあれば、輸入果汁などを原料にしているものもあります。

「日本ワイン」という新しい言葉

日本ワインという言葉が使われるようになったのは、ここ数年のことです。
今まで「国産ワイン」と言われていたものは、国産ブドウのみでできたワインとそうでないものが混在していて、ラベル表示を見ても分かりにくいという問題がありました。
国産ブドウのワインだと思って買ったのに、裏ラベルを見たら、「輸入果汁」と書いてあった…という経験はありませんか?
そこで、2015年に国税庁が表示基準を定めることになりました。
(実際にこの基準が適用されるようになったのは2018年10月30日から)

「日本ワイン」とは、国内製造ワインのうち、酒税法第3条第13号に掲げる果実酒(原料として水を使用したものを除く。)(同号ニに掲げる果実酒にあっては、別表に掲げる製法により製造したものに限る。)で、原料の果実として国内で収穫されたぶどうのみを使用したものをいう。

国税庁HP『果実酒等の製法品質表示基準(定義)1-(3)( 平成27年10月30日)』 より引用

国内製造ワインの構成比

さて、「国産ワイン」という大きなカテゴリの中の一部として「日本ワイン」は存在するわけですが、割合としてはどのくらい造られているのでしょう?


国税庁HP『国内製造ワインの概況2017年度調査分』(2019年2月)を加工して作成

日本ワイン生産量が少ない理由

20%という数字を見て、「思ったより少ないな」と思われた方が多いのではないでしょうか?
日本ワインの割合が少ない主な理由の一つは、ワイン用ブドウは生食用ブドウに比べて値段が低いので生産量が少ない、ということが言えると思います。
農家の立場になってみれば、あまり儲けにならないワイン用ブドウを造るよりも、より利益の出る生食用のブドウを栽培したい…と思うのが自然の流れです。

私の周りでワイナリー開設を目指してブドウ栽培を始められた方の中でも、
シャインマスカットも同時に栽培しているよ、という方がけっこういらっしゃいます。



ブドウの苗を植えてから実がなるまでの年月

話がそれましたが、「日本ワイン」を表示するためには、100%国産ブドウを使わないといけないので、ワイナリーはブドウを入手するのが一層難しくなってしまいました。

じゃあブドウをどんどん植えたらいいじゃないの?
と思うわけですが、
一般的に、ブドウは苗を植えてから実がなるまでに3年かかります。
3年で50%の収穫、5年目にようやく100%収穫できるようになります。

もっといえば、ワイナリーを開設しようと決めてから自分で栽培したブドウで造ったワインを飲むまでには、気の遠くなるような長い年月を要します。

地道な畑作業

長い年月の中で、自然災害やブドウの病気、未曾有の事態に直面することもあります。

1年を通してのブドウの作業では、芯まで冷える気温の中での藁蒔き、冬の剪定、春の芽かき、熱い太陽の下での夏の剪定、草刈り、一年を通しての防除(※1)…。
そこまで一通りやっても収穫の直前で病害・虫害に見舞われ、全滅してしまうこともあります。

生産者の方々はよくこんな風にお話してくださいます。

「身の回りでどんなことが起ころうと、自然は待ったなし。そのタイミング毎に必ずやらなければならないことがあるのでとにかく忙しい」と。

小さな規模のワイナリーでは、人を雇えば人件費がかさみ、ダイレクトにワインの値段に影響してしまいます。
だから簡単に人を雇うというわけにもいきません。
生産者ご本人はフル稼働、家族、親戚、友達にも手伝ってもらって、生産者仲間と連携して互いにサポートし合ってワイン造りに取り組まれています。

「良いワインは良い畑で造られる」と言われています。
ワインとはブドウ100%でできている農産物。
だから畑仕事の手を抜くわけにはいきません。

心折れそうなことが続いても、自分の意思を貫き続ける方の努力の上に日本ワインは成り立っているのですね。

(※1)農業害虫や病害の予防および駆除

参考文献

(おわり)

この記事の著者 / 編集者

田口あきこ

田口あきこ(日本ワインなび編集長)

ホームパーティを開催することが多いことから、より良いおもてなしをするためにワインを学び始める。2015年にワインスクール『レコール・デュ・ヴァン』のインストラクター養成講座にて講師に抜擢。
2018年春からワイナリー経営者を育成する学校『千曲川ワインアカデミー(長野県東御市)』にてブドウ栽培・醸造・ワイナリー経営について学び、講師業の傍ら、超新規ワイナリーの立ち上げ・畑仕事のお手伝いにも出掛ける。
2020年『日本ワインなび』を開設し、編集長として運営を行う。
ワインスクール『レコール・デュ・ヴァン』講師紹介ページ
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