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ソムリエ・エクセレンス、元外資系航空会社勤務。現在は、酒類卸会社で会員制情報サイトの編集・執筆を担当。世界を飛んだ美食家として日本ワインの魅力を語ります。

泉 洋介

ワイン・エキスパート、海外出張の際には伝統国以外にもインド・中国産などNext new normalなワインにも触れ日々研究中。この経験と専門分野ブランディングとデジタルマーケを切り口に日本ワインの魅力と可能性について語ります。

吉田順子

ソムリエール、ワインカルチャー講師、女性が選ぶワインコンテストSakura Award審査員。ワインとお料理のマリアージュの視点から日本ワインの魅力と可能性を語ります。

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『テイスティング』コーナーの進行役。ソムリエとワイン・エキスパート両方のエクセレンス資格を持つワインのプロ。さらに、栽培・醸造の学校卒業の経歴から、その視点で日本ワインの魅力と可能性を語ります。

日本ワイン「グランポレール」新商品 試飲体験会(後編)

2024年11月6日

本日の供出ワイン4種のうち2つは長野県安曇野池田ヴィンヤード、残りの2つは北海道北斗ヴィンヤードのブドウを原料としている。

安曇野池田ヴィンヤード

住所: 長野県北安曇野郡池田町、開園: 2009年、標高: 560~630m、面積: 12.4ha、南西向き斜面
傾斜があって一日の寒暖差が大きい、小石が多く水はけがよい、土が痩せている。この3つの条件が揃うと、赤ワイン用ブドウの場合は小粒で濃縮感があるブドウ、白ワイン用ブドウの場合は小粒で香りのポテンシャルの高いブドウが収穫できるとのこと。

北海道北斗ヴィンヤード

住所: 北海道北斗市三ツ石、開園: 2018年、標高: 50~120m、面積: 25.4ha、南東向き斜面

海が見える素晴らしい眺望の畑。トラピスト修道院の土地を借りて運営。1984年に余市でワイン用ブドウ栽培を始めたノウハウを活かして、この地でも新しい歴史を刻んでいく。長野県の自社畑で実績のあるシャルドネやメルローを栽培している。気候、土壌などの諸条件が優れているので、ワイン用ブドウの生育に最適な畑。安曇野池田と同様、ワイン用に向く小粒なブドウがとれる。

供出ワイン4種

1.グランポレール 安曇野池田シャルドネ ブラン・ド・ブラン <トラディショナル・メソッド> 2020

安曇野池田で瓶内二次発酵のスパークリングワインがリリースされるのは初めてのこと。造りはシンプル。収穫を早めにすることで酸を残した。

デゴルジュマンをする前にテイスティングした際、「まだ若い」と思い、更に1年待ってリリース。1年置いておくことでワインの中に存在する酵母の自己分解が進み、トーストやブリオッシュなどの香複雑な香りが生まれる。

艶やかなシャンパンゴールドの外観、いつまでも立ち上り続ける繊細な泡は会場の方たちを魅了していた。マーマレードのような柑橘の香り、瓶内二次発酵に由来する複雑な香り。グラスに鼻を近づけるとすぐに、「それが只者ではない泡」だとわかる。安曇野池田のブドウは酸が抜けにくいのが特徴とのこと。その通り優雅で複雑な味わいを綺麗な酸が引き締めていた。

2.グランポレール 安曇野池田ソーヴィニヨン・ブラン  <薫るヴェール> 2023

日本ワインコンクール2024年 金賞受賞。この品種に秘められた薫りを最大限引き出した、栽培家・ワインメーカーこだわりの逸品。多田さんがボルドー大学で学んだエッセンスを活かしながらワインメイキングに取り組んだところ、納得いく香りが出たので「薫るヴェール」という名前がつけられた。

はっきりとした柑橘の香りがグラスから溢れ出ていた。仄かに感じるグリーンの香りも爽やか。2022年までは樽を使用していたが、2023年からはやめたそう。樽をかけないことでブドウ本来のピュアな香りと味わいが生かされている。2023年は雨が少なく日照量が多く、良いブドウができた年ということで、厚みのあるワインに仕上がっていた。

3.グランポレール 北斗シャルドネ 2023

日本ワインコンクール2024年 金賞受賞。北海道北斗ヴィンヤードのシャルドネとしては、セカンドヴィンテージ。「これ、ちょっとすごくないですか?」と、工藤さんが満面の笑みで会場の方たちに問いかけていた。

植えて5年目のシャルドネ。「安曇野池田の畑の経験からいうと、品種の特徴的な香りがようやく出てくるのが5年目くらいなのに、このワインはすでに北斗のシャルドネとしての香りがしっかりと出ている。ということはこの畑がブドウに適しているという証拠だ。」と、工藤さんは嬉しそうに語っていた。

洋梨、白桃、アプリコットの華やかな香りが中心。柔らかな果実味に北斗由来のきれいな酸が溶け込んでいる。2023年はブドウがよく熟した年で、アルコールはなんと14%。ふっくらとして厚みのある白ワイン。

4. グランポレール 北斗メルロー2022

北斗ヴィンヤード初の赤ワイン。醸しを終わらせた時、この香りをストレートに出してあげたいという話になり、用意していた新樽を使わず、殆ど古樽に変更したそう。

小さな赤いベリーなどの可愛らしい香り、ほんのりバニラやチョコレート、スパイスの香りも調和。しっかりとした酸、緻密なタンニン。Earthyなニュアンスも感じられた。

工藤さんは「いかにも北海道の赤ワインらしいワイン」と話していた。

アルコール度数は12%で穏やかな飲み心地。同郷のジンギスカンと合わせてみたい。

モノ造りの象徴として、更に存在感のあるブランドを目指す

ブドウを栽培する人、醸造する人、販売に関わる人、多くの方たちの想いが詰まったワインがリリースされ、佐々木悟大さん(サッポロビール マーケティング本部 ワイン&スピリッツ事業部 部長)、多田淳さん(グランポレール 新・チーフワインメーカー)、工藤雅義さん(グランポレール シニアワインメーカー)、皆さん清々しい笑顔だった。

グランポレールはサッポロビール(株)のモノ造りの象徴として、更に存在感のあるブランドを目指すとのこと。そのテロワールにしかない独自の価値を最大限引き出して、これからもワインファンを魅了してほしい。

写真左:佐々木悟大さん、写真真ん中:多田淳さん、写真左:工藤雅義さん

(おわり)

この記事の著者 / 編集者

田口あきこ(日本ワインなび編集長)

ホームパーティを開催することが多いことから、より良いおもてなしをするためにワインを学び始める。2015年にワインスクール『レコール・デュ・ヴァン』のインストラクター養成講座にて講師に抜擢。
2018年春からワイナリー経営者を育成する学校『千曲川ワインアカデミー(長野県東御市)』にてブドウ栽培・醸造・ワイナリー経営について学び、講師業の傍ら、超新規ワイナリーの立ち上げ・畑仕事のお手伝いにも出掛ける。
2020年『日本ワインなび』を開設し、編集長として運営を行う。
ワインスクール『レコール・デュ・ヴァン』講師紹介ページ
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