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テイスターのご紹介

Tomoe

ソムリエ・エクセレンス、元外資系航空会社勤務。現在は、酒類卸会社で会員制情報サイトの編集・執筆を担当。世界を飛んだ美食家として日本ワインの魅力を語ります。

泉 洋介

ワイン・エキスパート、海外出張の際には伝統国以外にもインド・中国産などNext new normalなワインにも触れ日々研究中。この経験と専門分野ブランディングとデジタルマーケを切り口に日本ワインの魅力と可能性について語ります。

吉田順子

ソムリエール、ワインカルチャー講師、女性が選ぶワインコンテストSakura Award審査員。ワインとお料理のマリアージュの視点から日本ワインの魅力と可能性を語ります。

内田一樹

『テイスティング』コーナーの進行役。ソムリエとワイン・エキスパート両方のエクセレンス資格を持つワインのプロ。さらに、栽培・醸造の学校卒業の経歴から、その視点で日本ワインの魅力と可能性を語ります。

第2回テイスティング|スパークリングワイン【Vol.2】

2020年8月16日

テイスターが選んだスパークリングワインたち

画像左より

  1. アルガブランカ ブリリャンテ2012(勝沼醸造)/ブドウ:勝沼甲州【5,000円】
  2. セレナ エクストラ・ブリュット2015(GRACE WINE)/ブドウ:山梨県シャルドネ、ソーヴィニヨンブラン【5,000円】
  3. サン・スフル白2019(タケダワイナリー)/ブドウ:山形県完熟デラウェア【2,000円】
  4. てぐみロゼ2019(丹波ワイン)/ブドウ:京都マスカットベーリーA【1,500円】
  5. ケルナー&ピノ・ノワール2017(キャメルファーム)/ブドウ:余市【3,000円】

本格的な二次発酵で持続的泡を楽しむ

5.ケルナー&ピノ・ノワール2017(キャメルファーム)/ブドウ:余市【3,000円】

このワインは、KALDI COFFEE FARMが立ち上げた北海道余市のワイナリーで、余市町産のケルナー種80%とピノ・ノワール種20%を使っています。

外観は、輝きがあり、透明感のある淡い黄色ですね。

うぬぬ、ケルナーって何の交配品種か忘れました。

「トロい栗鼠(リス)、蹴るなー」です。トロリンガーとリースリングの交配品種がケルナー(笑)

甘口ですね。

そうでした、全く関係ないですが、ワインスクールの先生が語呂と一緒にリスの絵を描いておられ凄く可愛かったのを思い出しました(笑)ピノ・ノワールをブレンドしてるのはコクを出すためでしょうかね。

ケルナーらしい果実味に白いお花の香りがほんのりありますね。

泡がクリーミーですが、造り方はどうなんでしょうか?

シャルマ方式※1ですね。

フレッシュな柑橘類に青リンゴ、白桃の香りもします。微かにレモングラスや白い花のアロマも感じます。

甘さが余韻にも続いて、酸味と溶け合う感じ。果実の甘味と冷涼な気候からくる爽やかな酸のバランスがいいですね。

ケルナーは、冷涼な気候に適応するドイツ系の品種で、白いお花の香りや冷涼な気候から生じる爽やかな酸が特徴の品種です。そこに、少し重心を持たせるためにピノ・ノワールをブレンドしたんだと思います。

キャメル・ファームのワインってなかなか手に入らないんですよね。KALDIのお店でもすぐ売り切れてるみたいだし。

このワインもネットでは、売り切れてるところが多くて、表参道の日本ワインを品揃えしているお酒屋さんでやっと手に入れたんですよ。人気があるんですね。ワイナリーと畑が、余市の超有名ワイナリー「ドメーヌ・タカヒコ」の筋並びにあることも人気の要因かな。

ボトル見ると、なんと順子さんが審査員をしていたサクラワインアワード2019年度のゴールドメダル受賞シールが貼ってありますな。

サクラアワードは、日本の女性が選ぶワインコンクールという事もあって、このワインは少し甘やかで優しい味わいが女性ウケすると思いました。審査は、数名のチームに分かれて同じ品種のみを6~12種類程度、テイスティングするのだけど、私はスパークリングワインの審査はまだ担当したことがないです。

合わせるお料理は、甘口なのでショートケーキとか合いそうです。甘い物と合わせると、このワインの爽やかな酸が引き立ちそう。

生ハム・メロンとか合いそうです。

HARBSのメロンショートケーキがすごく合いそう。味わいに青っぽさがあるので、メロンがぴったり。

裏ラベルにエチケットの「キツネとピアノ」の説明が、「本当はごめんねと言いたかったけど、キツネはピアノで、ごめんねと音にしてみました。」と書いてあるけど、どういう意味なのでしょうね。興味深いストーリー、是非生産者の方にお伺いしてみたいです。

ワイナリーにキツネが沢山登場するんでしょうね。エチケットから北海道で、可愛らしいワインという感じが伝わってくるわ。カルディとかも含め、キャメルファームらしい発想のエチケットな気がする。

※1 シャルマ方式…一次発酵させたワインを大きなタンクに密閉し、その中に糖分と酵母を加え二次発酵を起こさせて造る方式。

1.(右)アルガブランカ ブリリャンテ2012(勝沼醸造)/ブドウ:勝沼甲州【5,000円】
2.(左)セレナ エクストラ・ブリュット2015(GRACE WINE)/ブドウ:山梨県シャルドネ、ソーヴィニヨンブラン【5,000円】

では、最後に日本の瓶内二次発酵方式で造るスパークリングワインを代表する2つのワインを飲み比べしてみましょう。
一つは、勝沼醸造の甲州100%、瓶内熟成期間2年で造ったアルガブランカ ブリリャンテ2012。G7伊勢志摩サミットで使われたワインです。
二つ目は、GRACE WINE のシャルドネとソーヴィニヨウ・ブランで瓶内熟成期間3年で造られたセレナ エクストラ・ブリュット2015。世界最大のワインコンクールDecanter World Wine Awardsで、「グレイス エクストラブリュット」がスパークリングワインとしてアジア初のプラチナ賞・ベストアジア賞を受賞しましたが、そのセカンドワイン※2です。

両方とも外観は、レモンイエローから麦わら色で、細かい持続的な泡が見られます。

待っていました!僕は勝沼醸造さんのワインは本当にものづくりのフィロソフィー含め大ファンなのですが、特にアルガブランカは大好きなスパークリングです!ワインツーリズムの時に栽培課長の有賀翔さんに特別に畑の中に入れてもらい直にテロワールや栽培方法のこだわりについてお話をお伺いする機会を得ました。もうそれは小生のような大きな男が目をキラキラさせながら質問攻めするのですから、翔さんも一種の恐怖を感じたかもしれませんが、熱く語ってくださり感無量でした。

(勝沼醸造栽培課長 有賀翔さんと)
その後は勝沼醸造本社のテラスでお兄さんの有賀淳さんからブランド戦略のお話を伺いました。お話してくださった内容が、ウェブサイトにもちゃんと明確なブランドのフィロソフィとクラフトマンシップとして見える化されており、名実ともに日本を代表するワインブランドだと誇りに思いますね。

(勝沼醸造本社のテラスにて)

セレナは、36カ月瓶内熟成と長い期間熟成させているので、最初少し還元的な香り※3がします。少し置くと香りが変わってくると思います。

甲州から造ったアルガブランカは、甲州の和柑橘の爽やかな香りと細かな泡の感覚が相まって、2012年ですけど、フレッシュさを感じます。

セレナ初めていただきましたが、シャンパーニュを彷彿とさせる果実の凝縮感と熟成と瓶内二次発酵由来の酵母の香ばしい香りが重なって、複雑味を感じ、本当に素晴らしいスパークリングワインですね!GRACE WINEも大好きな日本ワインブランドの1つですが、このワインは特に感動的に美味しいです!ちなみに、こちらは栽培醸造責任者の三澤彩奈さん、丁寧に剪定をすることで良質なブドウのみで醸造しているとおっしゃられていました。

アルガブランカは、瓶内二次発酵からの瓶内熟成が2年間、セレナが3年間の違いと、使っているブドウ品種の違いによる香り、味わいの違いだと思います。

余韻は、セレナが長いですね。香りと酸味が長く口中に続きます。

ちゃんと品質の高い甲州ブドウを使い、瓶内二次発酵できちんと造ると、このようなフレッシュな柑橘と爽やかな酸のスパークリングができるんですね。2012年というヴィンテージを全く感じさせません。一方で、セレナは、シャルドネとソーヴィニヨン・ブランという国際品種で造られているだけあって、すごくコクを感じます。ブドウ品種の違いによる香り、味わいの違いが、同じ瓶内二次発酵でも全然違ってくるんですね。

セレナは、青リンゴから洋ナシの果実香、華やかな白いお花のようなアロマと樽の香り、そして長い熟成期間によるイースト香、ヨード香を感じます。バランスが素晴らしく、上品で上質なワインであることが香りをとった瞬間に感じます。

私もセレナは、溌剌とした酸味に、爽やかな果実香、クリーミーできめの細かい泡が調和し、生き生きとしたエレガントな味わいを感じます。

その点、甲州で造るアルガブランカは、シャルドネなどで造るセレナの果実味や複雑性とは違って、フレッシュさ、爽やかな酸、きめ細かな泡という日本のお料理によく合う特徴を持っていると言えますね。

セレナは、そのまま飲んでも複雑性を楽しめますが、旨味が感じられるので出汁系の和食や熟成香と合わせてチーズなども合うと思います。

アルガブランカは、フレッシュさを活かして、前菜、とくに白身魚のカルパッチョやフルーツサラダが合うかな。

アルガブランカは、冷製のサラダオイル系のさっぱりしたお料理、セレナは、ソテーやグリルなど温製でオリーブオイルやバターを使った少ししっかり目のお料理が合いそうです。

今日は、皆さんありがとうございました。
メトード・アンセストラルのフレッシュなスパークリングは、日本ワインならではの美味しさと華やかさがありましたね。ナチュラルワイン・ブームの中でますますファンが広がる期待が持てます。
本格的な泡を楽しむシャルマ方式と瓶内二次発酵方式のスパークリングは、日本ならではの甲州品種を使ったフレッシュ感と爽やかな酸を楽しむタイプ、国際品種を使いケルナーなどの品種特性を出したタイプ、シャルドネ中心にシャンパーニュを彷彿とさせる熟成香と複雑さを楽しむタイプなど、日本の様々なタイプのスパークリングワインを楽しみました。
日本のスパークリングワインの幅も広がり、日本ワインファンが楽しめる状況が生まれてきています。今後が楽しみですね。

※次回は、日本を代表する黒ブドウ品種、マスカット・ベーリーAのテイスティングになります。ご期待ください。

※2 セカンドワイン…GRACE WINEの場合、このワインのファーストはシャルドネ100%で瓶内二次熟成期間5年、このセカンドはシャルドネとソーヴィニヨンブランで瓶内熟成期間3年です。ブドウ品種と熟成期間の違いでセカンドワインは買い易い価格帯にしています。
※3 還元的な香り…ワインにおける還元香は、酸素の無い密閉された状態が長く続くことで生じる火打石やスモーキーな香り。瓶内二次発酵で二酸化炭素が発生し、長期にわたって無酸素状態の瓶内熟成を行うため。

(左)Tomoe(右)内田一樹

(おわり)

この記事の著者 / 編集者

内田一樹

『テイスティング』コーナー進行役。ソムリエとワイン・エキスパート両方のエクセレンス資格を持つワインのプロ。さらに、栽培・醸造の学校卒業の経歴から、その視点で日本ワインの魅力と可能性を語ります。

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