第2回テイスティング|スパークリングワイン【Vol.1】
2020年8月16日
テイスターが選んだスパークリングワインたち
画像左より
- アルガブランカ ブリリャンテ2012(勝沼醸造)/ブドウ:勝沼甲州【5,000円】
- セレナ エクストラ・ブリュット2015(GRACE WINE)/ブドウ:山梨県シャルドネ、ソーヴィニヨンブラン【5,000円】
- サン・スフル白2019(タケダワイナリー)/ブドウ:山形県完熟デラウェア【2,000円】
- てぐみロゼ2019(丹波ワイン)/ブドウ:京都マスカットベーリーA【1,500円】
- ケルナー&ピノ・ノワール2017(キャメルファーム)/ブドウ:余市【3,000円】
今回は、「夏と言えば泡!」ということで、日本のスパークリングワインを5種類飲み比べしました。
1番の勝沼醸造『アルガブランカ ブリリャンテ2012』と2番のGRACE WINE『セレナ エクストラ・ブリュット2015』は、シャンパーニュ方式(トラディッショナル方式)※1という瓶内二次発酵で造られた細かい持続的な泡と熟成の香りを楽しむ「勝沼醸造」と「GRACE WINE」の2つのスパークリングワインを比較しました。
3番のタケダワイナリー『サン・スフル白2019』と4番の丹波ワイン『てぐみロゼ2019』は、メトード・アンセストラル※2という製法で造られたフレッシュさ満載のスパークリングワインです。この2つのワインは片平典子さん(タケダワイナリー)と内貴麻里さん(丹波ワイン)という女性醸造家によって造られています。
5番のキャメルファーム『ケルナー&ピノ・ノワール2017』は、北海道の農場で育てたケルナーとピノ・ノワールをシャルマ方式※3で醸造した酸と本格的な泡を楽しむスパークリングワインです。コーヒー豆販売で有名なKALDI COFFEE FARMが立ち上げた北海道余市のワイナリー「キャメルファーム」によって造られています。
※1 シャンパーニュ方式…一次発酵させたワインを瓶に詰め、糖分と酵母を加え、密閉して瓶内で第二次発酵を起こさせる方式。
※2 メトード・アンセストラル…発酵中のワインを瓶に詰め、王冠などで打栓をして残りの発酵を瓶内で行う方法
※3 シャルマ方式…一次発酵させたワインを大きなタンクに密閉し、その中に糖分と酵母を加え二次発酵を起こさせて造る方式。
今回は、青山の素敵レストラン「un cafe」で行われました。
(左手前)Tomoe/(左奥)内田一樹/(右奥)吉田順子/(右手前)泉 洋介
フルーティさと微発泡を楽しむ
(左)てぐみロゼ2019(丹波ワイン)(右)サン・スフル白2019(タケダワイナリー)
それでは、最初にメトード・アンセストラル方式で造られたタケダワイナリー『サン・スフル白2019』と丹波ワイン『てぐみロゼ2019』をグラスに注いでください。
色がきれい~! 美味しそう!
3.サン・スフル白2019(タケダワイナリー)/ブドウ:山形県完熟デラウェア【2,000円】
では、まずサン・スフルから味わいましょうか。サン・スフル(Sans Soufre)とはフランス語で「酸化防止剤(亜硫酸)を使っていない」という意味だそうです。
見た目がフレッシュなリンゴジュースみたいですね。
果実味がありいい香りですねぇ~。
でも、食用のデラウェアの香りはあまりしないですね。
私は自然な造りのデラウエアの香り、味わい好きです。同じデラウエアでも、外観の色、味わい様々ですね。
オーストラリアなどの自然派ワインが日本でも流行りだし、自然派のワインに近い食用ブドウのワインの香りも、日本のワイン愛好家にも受け入れられるようになったみたいです。
そういえば、自然派っぽい香りがします!この香りを何と表現したら良いのでしょう?
酵母の香りがありますね。酵母が生きてる発酵途中で瓶詰めするから、酵母の香りが残るのかもしれません。
澱引きもしていないから、そのまま酵母の香りも残る感じですね。
日本酒っぽい香りを感じます。乳酸の香りもあります。
これはMLF(マロラクティック発酵)※4してないんだけどね。
果実感が豊かでアルコール感はあまり感じないので、まるでジュースのようにスルスル飲めちゃいますね。アルコールが12%もあるとは思えないワインです。
にごり酒と同様、にごりワインって美味しく見えますよね。酵母の旨味をしっかり感じます。
フレッシュだけど旨味があるのは、無濾過だから酵母が分解されたアミノ酸が残っているからですね。
今流行りのPét-Nat(ペット・ナット)※5なので微発泡で、クリーミーですね。
合わせるお料理はどうでしょう。甘口じゃないし、デラウェアの香りも前面に出ていないし、お料理をじゃましない感じだと思いますが。
今日のような夏の昼下がりのランチにピッタリ!このタラのリーゾとサラダにもバッチリ合います、おいしいー!酸も柔らかい感じで、ほんのりした果実由来の甘みがホタテや新鮮な魚介類に合いそうです。
フルーツソースを使った新鮮なお魚のカルパッチョにも合いそう。
柑橘系のソースを使ったサラダとかも合いますね。軽快で爽やかなので、シチュエーション的には、屋外でお天気の日に川原なんかでこれだけで飲みたい。BBQなどみんなでワイワイ集まる時など、夏向きなワインです。
価格は2,000円ですか!これはちょっとした集まりに気軽に持っていける価格帯ですね、ありがたいー。
少し置いておくと香ばしさが出てきて、コーンポタージュみたいな美味しい香りになってきました!
ワインの温度変化で香りが変化してきてるんですね。温度変化による香りの変化もワインの楽しみ方の一つです。
※4 MLF(マロラクティック発酵)…アルコール発酵に続いて、もしくは同時に行われる乳酸発酵のこと。リンゴ酸を乳酸に変える発酵で酸を柔らかくし、微生物的に安定させる効果がある。生成されるダイアセチルが乳製品の香りを生む。
※5 Pét-Nat…ペティアン・ナチュレルの略。メトード・アンセストラル方式で造られた自然派微発泡ワインのこと。
4.てぐみロゼ2019(丹波ワイン)/ブドウ:京都マスカットベーリーA【1,500円】
このロゼスパークリングは、「打倒!とりあえずビール」を目指して、最初の乾杯から楽しめる泡を造りたいって造ったそうです。
このロゼ色が本当にきれい!品種はなんですか?
マスカット・ベーリーA100%です。
ビールのようなキレのある泡ではなく、優しい泡でクリーミーに感じます。
香りが赤いフルーツ、ベリー中心の華やかでチャーミングでありつつ、味わいにコクを感じます。
優しい泡ですね。ふむ、口に入れた途端にシュワーッとするクリーミーな泡がなるほど、「打倒!とりあえずビール」なのですね。最初の一杯にちょうど良い!
クラフトビールって、こんな感じじゃない?クラフトビールは、味わいも幅広く様々で、普通のビールに比べると泡が細かくて優しいところがクラフトビール的です。普通のビールは飲み続けられないけれど、クラフトビールなら、なぜか飲み続けられます。笑
甘くないですね。でも香りが華やか!
鼻から抜ける香り、最後の余韻がベリーです。スティルワイン※6のマスカット・ベーリーAを、さらに飲みやすくてチャーミングにしたものが、このスパークリングワインだわ。
日本ワインの泡って美味しいものが多い印象あります!糖度が上がりにくいテロワールが逆に味方をしてくれているのかしら。ワインを普段飲まない方にでも、僕は日本の泡はおすすめしやすいですね!
日本ワインの泡の進化も素晴らしくて、感動してます。値段もお手頃なものも多くて見つけたら購入してますが、普通のスーパーではほぼ見かけないです…。広いユーザーにリーチできる場所に置いてほしいですよね。
賛成!コンビニとかにハーフや250mℓの容量で置いて欲しいです~。暑い夏にグイッと隅田川のほとりなんかで飲みたいですね。
今、ナチュラルワイン・ブームだから、この2つのスパークリングは、人気があると思います。両方のワインとも亜硫酸塩(酸化防止剤)を使ってないので、健康志向の人にもウケそうですしね。
スーパーのお店回りしていても、てぐみロゼは置いているスーパーがありますね。
わたしは、タケダ ワイナリーを訪問してサン・スフルに出逢ってファンになったのだけど、このレベルの日本ワインがスーパーに置いてあったら、すごくうれしい!そういえば、丹波ワインでも1,000円~2,000円台のワインも多くって、気軽に手に取りやすい価格帯ですよね。
それに、丹波ワインは、「日本と京都の食文化に合うワインを創る」を創業からの理念にし、和食に合うワインを造っているから、ご家庭の食卓を預かるスーパーの品揃えにも合っているんじゃないかな。
勉強になります!なるほど、そういう思想で造っておられると日本のご家庭の食卓でもビールと一緒に楽しんでいただけそうですね。ビールだとお腹が膨れてしまいがちですが、ワインは食中酒として食事を邪魔しないで楽しめるのも魅力ですねー。
醸造家の方が「とりあえずビール!」の替わりを目指して造ってるって言ってるだけあって、ほんとにビールのようにグイグイ飲めます。
醸造家の内貴麻里さんは、ワイン界のお笑い芸人って言われる面白い女性ですからね。
お笑い芸人!
鹿児島大学で酵素化学を専攻し、葡萄酒技術研究会認定のワイン醸造技術管理士(エノログ)を取得している方だから、ワイン造りのプロですよ。
さすが女性が造っただけあって、綺麗なピンク色がテンションあがります。トマトとモッツァレラのカプレーゼに合いそうです。
トリュフ塩のフライドポテトとか合いそうですね。アンカフェさんのメニューにあったら頼もうかしら(笑)
※6 スティルワイン…発泡していないワインのこと。
(左)吉田順子(右)泉 洋介
(つづく)
この記事の著者 / 編集者
内田一樹
『テイスティング』コーナー進行役。ソムリエとワイン・エキスパート両方のエクセレンス資格を持つワインのプロ。さらに、栽培・醸造の学校卒業の経歴から、その視点で日本ワインの魅力と可能性を語ります。