日本ワインは成長市場?マーケティング論から日本ワインの現状を考えてみた
2019年1月10日
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日本ワインは成長市場?マーケティング論から日本ワインの現状を考えてみた
先日モンガク谷ワイナリーの試飲会で 、ある酒販店の方と相席になり、日本ワイン販売の現状を伺うことが出来ました。
2017年までは年5-10%で日本ワインの販売が増加していましたが、2018年で増加がストップし、頭打ちとなってしまったようです。
その方曰く、仮説として、熱心なワイン好きには大体浸透してしまい、そこから先のワインをあまり知らない層に届いていのではないか?ということでした。
日本ワインの市場をイノベーター理論とキャズムから考えてみる
キャズムを越えようとして頭打ちになっているのだろうか?
マーケティングの理論でイノベーター理論と「キャズムを越える」というものがありますが、初期の新し物好きからメインストリームの顧客層に到達するには大きな溝(キャズム)があり、多くの製品がその溝を越えられずにライフサイクルを終えてしまうというものです。
このイノベーター理論は統計的な人間の気質の分布で、だいたいこんな傾向がみられるよというものです。商品の開発から販売終了までの間にどういった気質の顧客に対して、買ってもらう仕組みを作っていく、という人間の行動からマーケティング戦略を導き出す枠組みです。
キャズムを越えるために必要なことは、マスメディアを通じた認知や、高品質・低価格が当たり前という状態が大前提です。
日本におけるワインの方向性は未だ模索の段階で色々な生産者がそれぞれバラバラに動いているといわれています。
そもそも右肩上がりとはいえ輸入ワイン、国内製造ワインを含めたワイン全体の消費量自体がアルコール消費量の5%程度しかない状況ですから、ワイン自体がキャズムを越えていないと考えられます。
キャズムはまだ先とすればどんなことが考えられるだろう?
日本ではワイン全体の消費量は減少していますが、消費金額は増加しています。これの意味するところは高価格のプレミアムワインが人気であるということです。
所得格差によって富める者はいいワインをたくさん飲み、低所得者は別のお酒を飲むのではないか?
国内製造ワインの消費量は、減少傾向
日本ワインは年5%以上の成長
輸入ワインは横ばい~微増
日本ワインの消費量は伸びていて、急に頭打ちになるにはまだ早いと考えられる。では、なぜ酒販店で日本ワインの販売量増加が頭打ちになっているのでしょうか?
直販にシフトしている?
今増えているのは、小規模なワイナリーで、経営を軌道に乗せるために必死に頑張っているところが多いと思います。1万本くらいの生産規模のワイナリーの経営が一番難しいといわれていて(なぜかはまた別の記事で。)、酒販店に卸すよりも直接売ったほうが当然利益は大きく、経営の安定化には重要になってきます。
ただ、酒造免許を取るために、販路の確保というのを先にしておかなければならない関係上、酒販店さんとの関係を構築しておかなければならないという事情もあります。
最近はクラウドファンディングなどで先に売り先を見つけて、資金調達をするという方法も増えており、酒販店から購入する機会が減っているのかもしれません。
様々な要因が絡んでいるので正解はわかりませんが、ワイナリー側も経営の安定化・生き残りの為にあの手この手を考えていると思います。
日本ワインとワイナリーの今後の展開
ということで、日本ワインブームはまだまだこれからというのが一応の結論ですが、ワイナリーの事業計画書を積み上げて書いてみると、ワイナリーのみで収益を上げていくのは結構厳しいという現状があります。
副業をしたり、多角化をして収益の柱を増やしたり、様々な取り組みが必要となってきます。
大規模に投資をして攻めに行くのか? 生産者同士がもっと連携を強めて助け合う方向に進むのか?
はたまた、顧客の囲い込み・コミュニティ化で対応するのか?
今後こういった経営課題を別記事で数字も使って考えていきたいと思います。
まとめ
既に長野県はNAGANO Wineというブランド構築を始めており、海外にも発信を行っています。こうした産地形成の活動で長野県にはワイナリーが急激に増えています。
北海道はぶどうに最適な冷涼な気候で大きなアドバンテージがありますが、生産者の組織化というのはあまり表に見える形では出てきていないように思います。
山梨は甲州が代表品種となり、攻めのフェーズとなっていますがいかんせん甲州ぶどう自体が不足気味ということで、急な拡大も難しいようです。加えて気候変動により山梨がだんだんぶどう栽培の適地から外れていくというようなことも言われ始めています。
ということで、盛り上がっている日本ワイン業界ですが、今後の展開を注意深く観察していきたいと思います。